横浜市と横浜信用金庫、日本ユニシスは8月11日、オープンデータを利活用した地域活性化プロジェクトを発足し、実証実験を開始すると発表した。今回の実証実験は、横浜市の抱える課題の一つである、親世代の介護と子供の育児が同時進行している“ダブルケア”にフォーカスする。
同プロジェクトは2014年8月、横浜市や横浜信用金庫、日本ユニシスの三者で発足、包括連携協定を締結したもの。これまでにも各種ワークショップを開催し、地域課題の抽出やオープンデータ活用に向けた整理を実施してきた。
同じ地域に根ざす横浜市と横浜信金にとって、横浜市の地域活性化は共通の重要テーマ。今回のプロジェクトは、行政情報の民間での活用推進により横浜経済の活性化を目指す横浜市と、地域との共存共栄を使命とし地域企業への“リレーションシップバンキング”のさらなる高度化を目指す横浜信金が、オープンデータ利活用の協働で地方創生や地域活性化などを目的に共同で研究する全国初のプロジェクトとしている。
リレーションシップバンキングとは、金融機関が顧客との間で親密な関係を長く維持することで顧客に関する情報を蓄積し、この情報を有効に活用することで地域に融資するとともに高度な金融サービスを提供するというもの。
実証実験のイメージ図(日本ユニシス提供)
今回は、同プロジェクトの2015年度の取り組みとして、ダブルケアの負担を抱える市民に対して、関連する事業を営む事業者や新規開業者をサポートし、産業の育成を検討していく。ダブルケアは、親世代の介護と子供の育児が同時進行している状態を意味し、今後の超高齢化や30~40歳代の人口減、出産年齢の晩産化に伴い、ますます増加することが予想されている。
実証実験では、介護や保育、家事代行の事業者に対し、横浜市が提供するオープンデータについて、横浜信金が情報の仲介役を担い、データの目利きや加工などをして提供。横浜信金の持つ経営相談や事業支援のノウハウを提供し、事業者を踏み込んで支えることで地域の活性化を目指していく。日本ユニシスは、実証実験でオープンデータを利用した情報活用の新しい事業モデル構築を目指す。
実証実験では、システムを利用し、行政の保有するデータを安全かつ再利用可能な形で効率的に金融機関に提供し、金融機関の持つ知見をもとにデータを加工することで、情報連携を効果的にサポートしていく。この取り組みで市内の中小企業のデジタルデバイド(情報格差)を解消し、事業者は知りうるべき情報を効果的に取り入れることが可能になるという。裾野金融を担う地域金融機関がオープンデータの再利用性を生かして情報を仲介し、適切に情報流通させることで事業者の活性化が期待できると説明している。
プロジェクトでは、実証実験を含めて市民のプライバシーに関わる秘匿情報は扱わないとしている。今回の実証実験は、総務省の調査事業「平成27年度オープンデータ・ビッグデータ利活用推進事業」の一環である「地方創生に資するデータ活用プラン」事業に採択されている。中核市での活用検証として岡山県倉敷市の協力も得る予定。