話題に上ることの多くなってきたオープンデータ。一方、公開されたデータがきちんと使われているのだろうか。横浜市でオープンデータの活用推進に取り組んでいる政策局政策部政策課担当係長の関口昌幸氏に横浜市の取り組みを聞いた。
横浜市でオープンデータ推進が盛んな理由
横浜市は3月に策定した「横浜市オープンデータの推進に関する指針」に基づき、統計情報などのオープンデータ化を進めている。7月14日には、市が保有するオープンデータを一覧できるカタログサイト「よこはまオープンデータカタログ(試行版)」を開設した。統計のほか、『横浜市中期4か年計画2014~2017(原案)』(中期計画)や政策情報誌「調査季報」をオープンデータ化するなど、取り組みが盛んな市町村のうちの1つだ。
政策局政策部政策課担当係長 関口昌幸氏
横浜市のオープンデータの取り組みは“民間主導″でスタートしたといっても過言ではないという。その中心となる非営利活動法人(NPO)「横浜オープンデータソリューション発展委員会」は、もともとデータに造詣が深い研究者やエンジニアなどが集まり「オープンデータの発展モデルをつくっていこう」と2012年に立ち上がった。当時は先駆的な取り組みであったハッカソンやアイデアソンを取り入れたという。
この民間の取り組みに触発され、市でも2013年ごろから、「民間でニーズがあるのならデータを活用可能な形でどんどん出していこう」という機運が高まり、オープンデータの取り組みが加速した。
同じくオープンデータ利用で話題に上ること多い、千葉市や福岡市は自治体の市長が主導でオープンデータ運用を推進しているのに対し、横浜市の場合ボトムアップに近い形で進められてきた。
オープンデータが実際に活用されている点も特徴だという。前述のとおり、オープンデータ市民活動の地盤が厚く、防災や観光をテーマに多くのハッカソンやアイデアソンが継続して開催されている。
例えば大都市郊外住宅団地の抱える課題解決をテーマに旭区左近山団地の危険個所、避難場所などをあらかじめ地図データに組み込ませる「防災マップ」や、旧東海道の位置や地図を表示できるアプリがイベントから生まれるなど、実際の使用用途やニーズからデータをオープンに展開できるところが強みという。
地域活性化のエコシステムをつくる
一方で、イベントだけでは継続性を維持するのが難しいという。イベントでは人は集まるものの、継続的な取り組みになりにくい傾向にあるからだ。特にビジネス的要素が少ない、ネットを活用して行政を国民に開かれたものにしていく取り組みである“オープンガバメント”の領域ではなおさらだ。
関口氏は、民間主導で継続的に地域の課題を解決するには「雇用や金銭的な報酬が生まれるエコシステムを創る必要がある」と指摘する。
このエコシステムのプラットフォームとなりうるのが、この6月に公開した「LOCAL GOOD YOKOHAMA」だという。LOCAL GOOD YOKOHAMAはサービスやモノ、 カネ、 ヒト、 情報の循環をつくり地域課題解決を継続して解決することを目指したウェブサイトだ。
10月からは、課題を解決するために出資者を募るクラウドファンディングや、各分野の専門家が知識・スキルや経験を活かして社会貢献する「プロボノ活動」を効果的に展開するためにスキルを登録するマッチングサイトとしての機能も追加された。横浜コミュニティデザイン・ラボとアクセンチュアのCSRチームなどが構築し、横浜市がオープンデータを提供している。
「市が立案した中期計画を実現するために市民とともに考える。具体的にアイデアが出れば人もお金も(クラウドファンディングなどで)集めて地域が働いてもらえるような協力体制ができつつある。アイデアや問題を解決する素材(データ)は市が準備する」
LOCAL GOOD YOKOHAMAは、横浜市という地域の課題を解決するためのハブとしての役目を果たしており、これまでに、年配者への雇用を創り出すためのものとしてあみもの教室「いのちの木」、障がい者の働く場としてパン製造販売やイタリアンレストランを事業として展開する「ファールニエンテ」、高校生が給料をもらいながら職場を体験、研修するプログラム「バイターン」などのクラウドファンディングのプロジェクトが立ち上がっている。
関口氏は、LOCAL GOOD YOKOHAMAの発展や活動に期待を寄せている。横浜市が立案する中期計画とLOCAL GOOD YOKOHAMAは、いわば車の両輪の関係であり、LOCAL GOOD YOKOHAMAの拡大が横浜市の発展に欠かせないからだ。
LOCAL GOOD YOKOHAMA