アジアインターネット日本連盟(AICJ)などが主催する「データドリブンイノベーションの実現へ向けて」と題したシンポジウムが11月18日に開催された。ここで言うデータドリブンイノベーションとは「データで新しい価値を創出する」ことを指している。
AICJ代表山口琢也氏は「(センサ価格の下落などにより)データの取得が容易になり、それらがクラウド上で蓄積可能な状態だが、データ活用の有効性が見えてこないという指摘がある。ネット産業ではない企業の取り組みや環境整備の現状を紹介したい」とシンポジウム開催の意義を紹介した。
経済産業省の取り組み
経済産業省 商務情報政策局情報経済課長 佐野究一郎氏
経済産業省の商務情報政策局情報経済課長 佐野究一郎氏は、企業間でスマートフォンや自動車、家電、センサ、位置情報などの多様なデータを共有し、高度な情報活用を目指す取り組みとして6月に設立した「データ駆動型(ドリブン)イノベーション創出戦略協議会」の現状について報告した。「日本ではデータの利用方法が社内業務の効率化などやや内向きとなっている。海外では(企業の外側に向けて)サービスの効率化などビジネスの競争のためのIT投資となっている」と指摘、データの価値を見出すことや利用することに取り組んでいない企業が多いとした。民間団体と連携し、必要な制度整備などに注力するという。
データドリブンイノベーションの経済的価値
英調査会社Analysys MasonのNico Flores氏はこの7~9月に日本の企業100社への電話の聞き取りなどによる「データドリブンイノベーションの経済的価値」に関する調査結果を紹介した。
Analysys Mason マネージャー Nico Flores氏
調査では経済的、社会的な価値をデータから創造できるようにする技術的、商業的な取り組みを「データドリブンイノベーションサービス」(DDIサービス)と位置付け、5つに分類した。
- 特定の個人向けのサービスをその人向けの料金で提供するなどの「新しいバザール」(例:走行距離により保険料を割り引くサービス)
- 時刻と位置データをリアルタイムに認識する「“いまここ”でのサービス」 (例:コロプラなど位置情報ゲーム)
- 行動の特定または予測のためにパターンとリアルタイムデータを利用する「気配りサービス」 (例:クレーンの車両管理、故障発見サービス)
- 事業効率を改善するための属性と相関関係などを示す「共通属性を持つ人向けのサービス」 (例:ネット広告の最適化)
- 複雑なシステムを改善するための「賢明な立案作業」 (例:需要予測、農業などの生産管理)
Flores氏は日本のDDIサービスが持つ経済的価値(コスト削減と売り上げ増加の価値)を製造業や金融サービスなど主要な産業が持つ価値を算出した。これによると、2014年は約7兆2910億円、2020年には15兆990億円と予測した。
この内訳として共通属性を持つ人向けのサービスは現在3450億円から7370億円に伸び、3の気配りサービスは8300億円が1兆2320億円に、1の新しいバザールは1024億円が2254億円に、“いまここ″は2兆5230億円が5兆970億円に、5の賢明な立案作業は2兆7890億円から5兆7800億円にそれぞれ伸長するという。