日本マイクロソフトは11月13日、日本市場でのクラウド事業強化策を発表した。SaaSの「Office 365」と「Dynamics CRM online」を日本データセンターから提供することを明らかにした。
同社は2月に日本データセンターを開設し、IaaS/PaaS「Microsoft Azure」を提供している。これに続き、法人向けOffice 365を年内に、Dynamics CRM onlineを2015年第1四半期(1~3月)中に日本データセンターから提供する。
日本データセンターからのサービスは新規ユーザーから行い、既存ユーザーに対しては個々にアナウンスし、海外のデータセンターとの選択もできるようにする。料金は従来と変更はない。
日本マイクロソフト 代表執行役社長 樋口泰行氏
日本マイクロソフト代表執行役社長の樋口泰行氏は、「日本のクラウドビジネスは海外実績を上回る伸びを見せている。最近ではクラウド提案がない商談は成り立たないくらい顧客の関心が高い」と説明。今回のサービス拡充で「マイクロソフトは本気でクラウドビジネスに取り組んでいることを示す」とアピールした。
海外を上回る日本のクラウドビジネス
樋口氏は日本でのクラウドビジネスの実績として、この1年でAzureの契約数が2.7倍、Office 365が2.3倍、Dynamics CRM onlineが2倍となり、コマーシャルクラウド全てを含めると2.5倍となっていることを挙げた。「ワールドワイドでの伸びが31.2%であるのに対し、これをはるかに上回る成果を挙げている」と日本でのクラウドビジネス伸長に自信を見せた。
法人向けクラウド事業では、Azure、Office 365、Dynamics CRM onlineを事業の3本柱として「クラウド三兄弟」と呼称している。この3つを日本データセンターから提供する体制を整えることで、金融など海外のデータを置くことを好まない顧客にもアピールできるようになる。
具体的な日本データセンターでのサービス開始時期は、Office 365が2014年内、Dynamics CRM onlineは2015年1~3月を予定。具体的なサービス開始日程は今後改めてアナウンスする計画だ。
日本データセンターは、具体的な場所は明らかにしていないものの、西日本、東日本と複数拠点を持ち、さらに地震対策として免震構造の建物を採用。樋口氏は「2011年の東日本大震災以降にできたデータセンターであることのメリットを生かし、免震構造の建物としている。日本にデータセンターがない、あっても海沿いなど自然災害に弱い立地の競合メーカーに比べ、データを守る構造となっている」とアピールした。
Microsoft コーポレートバイスプレジデント John Case氏
MicrosoftのコーポレートバイスプレジデントであるJohn Case氏は「マイクロソフトのクラウド事業は、パブリックだけでなく、ハイブリッド、プライベートと顧客が選択できる柔軟性をもち、さらに世界規模でサービスを提供している。これができる会社は世界でも数社しかない」と優位性を強調した。
Case氏は「企業の関心も高く、数件の例を挙げると、ヤマハ発動機はLotus NotesからOffice 365へ移行、シャープはソーシャルツール『Yammer』を採用し、社内コミュニケーション改革を進めている。こうした結果、法人向けサービスは49億ドルに達し、Dynamics CRM onlineは4万社、Office 365は425万ユーザーが利用している」とワールドワイドでもクラウド事業が伸長していると説明した。
Case氏は日本市場について「日本では30年ビジネスを続けてきた実績がある。日本は重要な市場で、日本でのビジネスの成果がグローバルビジネスにも大きく影響する。日本には固有のパソコンメーカー、リテーラーが存在し、日本独自のビジネスモデルを持ち、われわれは今後も日本市場を重視し続けていく」と日本市場にコミットする姿勢を強調した。
米国で発表になった「Visual Studio」のオープンソース化などについては「これもクラウドビジネスと密接な関係がある。われわれがデベロッパーを重視しているからこそ実施した戦略だと考えてほしい」と話した。詳細は、改めて日本でも説明する予定だという。
Microsoftが提供する法人向けクラウドの現況