次の段階に進む--世界同時イベントで見えたオープンデータの可能性

後藤真理絵 2015年03月29日 07時00分

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 2月21日に世界各地で同時に開催されたイベント「International Open Data Day 2015」に参加してきました。横浜市民である私は、大さん橋の横浜会場で1日を過ごしました。オープンデータに関する国内外の流れとともに、横浜での模様をご紹介します。

オープンデータを取り巻く世界と日本の流れ

 オープンデータについての定義は、さまざまなところで紹介されていますが、日本政府としての取り組みについてはこちらなどにまとまっています。

 定義としては、以下でまとめられます。

  • 誰でも自由にアクセス、入手ができるデータ(アクセスに対して制約がないデータ)
  • 再利用と再配布が可能であるデータ
  • 機械が判別可能であるデータ(マシンリーダブル)

 オープンデータはヨーロッパや米国で先行して進んでいる流れであり、2013年のG8サミットで、各国首脳が「オープンデータ憲章」に合意し積極的に進めていく流れとなりました。日本政府もその時に合意し、推進してきているのが大きな背景です。米国では、「透明な政府(オープンガバメント)」を公約の1つに掲げたObama政権が2009年に誕生し、「透明性」「市民参画」「コラボレーション」が進められてきました。

 特に2008年に起こったリーマンショックから立ち直るために予算をどう活用しているかを可視化したウェブサイト「Recovery.gov」を2009年2月に、政府が持つデータを誰でも使える状態にしたポータルサイト「Data.gov」を2009年5月に立ち上げ、それがその後の米国におけるオープンデータとオープンガバメントの潮流をけん引したことが知られています。

 Obama政権が掲げた「透明な政府」という概念は、同年に誕生した「Code for America」というNPO法人の動きとともに進んでいきます。

 Code for Americaとは、米国のエンジニアやデザイナーたちを地域行政府に送り込み、その地の地域課題をテクノロジを使って解決する団体です。

 どこの国においても、行政システムの手続きの煩雑さなど市民の不満は存在するものの、それを行政の予算や人手で全て解決できない状況にあります。その隙間に落ちてしまった課題を技術力のある人たちがツールやシステムを開発することにより市民生活の利便性を上げていく取り組みが活発化しています。

 事例としては、自治体のウェブサイトのユーザビリティを改良するというものから、福祉サービスを受けられる窓口を整理したもの、町の治安を維持するための犯罪者の更生プログラムの構築など、レベルはさまざまです。

 ツールやシステムを作るには、必要に応じてさまざまな地域や市民に関するデータをプログラムで処理していく必要がありますが、それにはまずデータ自体が公開されており、マシンリーダブルになっている必要があります。

 このように、オープンデータはオープンガバメントの中では不可欠な要素で、政府や自治体、市民が同じ量と質の情報を共有し、課題を発見し、解決するための協働作業を行っていく土台となっているのです。

 Code for Americaに代表される市民がテクノロジを使い自分たちの手で生活を便利にしていく潮流は“Civic Hack(シビックハック)”とも呼ばれています。日本においてシビック ハックが進んだのは東日本大震災の後と言われています。

 大地震の発生は体感したものの、安否確認もままならず、各地の被害はどうなっているのかなど全容が分からない状態が続いた記憶はまだ薄れていないことでしょう。

 当時、グーグルやヤフーなどウェブ関連の企業がさまざまな情報提供を行いましたが、Twitterなどで知り合ったエンジニアたちが、自発的に震災関連の情報をまとめて提供する「sinsai.info」を立ち上げるなど、技術やスキルのある人たちがテクノロジを使って社会の課題を解決を試みる動きがありました。

 その後、当時自発的に動いたエンジニアたちを中心に「Code for Japan」も立ち上がっています。

 ここまでの世界と日本の環境変化を見ると、国民自身の価値観を揺るがすような大きな事件や災害が発生した後、自然発生的に市民自身がテクノロジを駆使して動く状況が生まれたと言えるかもしれません。

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