エンジニアでなくても参加できるオープンデータの作成「LinkData」
最後にご紹介するのが、オープンデータの基本であるマシンリーダブルデータを実現するウェブサイト「LinkData」です。
オープンデータの原則「再利用や再配布を円滑に行う」ためにはデジタルデータでありさまざまなプログラミング言語で読みこみ可能なデータ形式であることが求められます。
オープンデータ活用の現状として、これまで公開されているデータにはPDFや画像データも多く含まれていることもあり、まずはCSVやXMLなどの形式に変換する情報整備に時間がかかっていることも現実です。またそのようなマシンリーダブルなデータセットを作り、アプリケーションで扱うにはある程度の技術関連の知識も必要でした。
課題を可視化したり、情報を円滑に提供したりするためのデータセットを技術に詳 しくなくても作って公開できるのがLinkDataです。
LinkDataはExcelなど表計算ソフト形式のデータを自分で作り、サイト上にアップロードするだけで、Linked Data(オープンデータをアプリケーションに活用するときに推奨されているデータモデルの一つ)に準拠した形式を含む複数の形式に変換し、そのデータを再配布させることができるツールです。
データ整備のハードルを下げ、ニーズの高まった課題解決策に迅速にデータを活用できる仕組みとなっています。
LinkDataは姉妹サイトもあり、
- テーブルデータの変換と公開をサポートする 「LinkData」
- アプリケーションの作成と公開をサポートする 「App.LinkData」
- アイデアを公開してつなげることをサポートする 「Idea.LinkData」
- 地域資源の情報の共有とコミュニティ育成をサポートする 「CityData」
の4つの機能を提供しています。
CityDataでは、LinkDataでデータを公開している市区町村ランキングを公開しており、オープンデータの取り組みに積極的な市区町村で競争が生まれています。
その結果、自治体による公式利用と市民による利用の両方を含めると、LinkDataでデータを公開している市区町村は863にのぼり、日本全国の1920自治体(行政区含む)のうち約半数の市区町村がオープンデータを進めているとのことです。自治体が公開したオープンデータを市民や観光協会がアプリ化するなどの事例も生まれ始めています。
実際にサイトを見ると、「活火山情報マップ」「避難所マップ」「予算情報」などが地域ごとに公開されています。位置情報を持つデータはGoogleマップに自動的に読み込まれるようになっており、データを公開した後の共有も便利になっています。
技術に詳しくない人でも、自分が整備したい情報をLinkDataを使って形式を整え、誰もが見られるマップの形式で表現することができるのです。
ワークショップの中では、民間企業が公開している事例として、ホッピーの広報担当者が自ら作成したマップ(ホッピーの飲める店マップ)が注目を集めました。
広報・マーケティングの立場として、自社製品を消費者に体験してもらうことは重要なことです。ホッピーの広報担当者の方は、それにはまずどこで体験できるのかを情報提供しなければならないと考え、これまで市場に流通できる形で公開していなかったホッピー取り扱い店の情報を自ら整備し、神奈川県や埼玉県のマップを公開しました。
これは民間企業が広報・マーケティング上の認知向上を目的に取り組んだ事例を言えそうです。
以上のように、横浜会場ではオープンデータを土台として、地域のNPO、市民、大学、民間企業がコラボレーションを行う事例が増えたと感じるイベントでした。
Local good YOKOHAMAなどオープンガバメントとシビックハックをつなぐ仕組み、LinkDataのように一市民、一企業が自分の目的を達成するためのサポートをしてくれるツールが登場し、個人であってもオープンデータと関われる環境が整ったことも強く感じる1日となりました。
- 後藤真理絵
- 大学卒業後、広告代理店系制作会社を経て、通信キャリアでマーケティングリサーチ業務および、データを活用した新規事業企画に携わる。 現在は、ヤフー株式会社にてアドテク周辺のマーケティングコンサルとして、ビデオ広告、DSP、DMPのデータ活用支援に従事。