本記事では、英国政府初の最高データ責任者(CDO)に任命されたMike Bracken氏にインタビューした内容をお届けする。同氏は、標準となる規約を確立し、各政府機関内にサイロ化されてしまっている有益なデータを流通させることで、ガバナンスの向上に向けた道を模索していくと述べている。
GOV.UKというオンラインプラットフォームによって、英国国民は合理化されたかたちで政府のサービスを利用できるようになっていると言える一方、その責任者Mike Bracken氏の肩書きはどんどん増えている。現地時間3月24日に英国政府初のCDOに任命された同氏は、2011年5月から英国内閣府のデジタル部門のエグゼクティブディレクターと、Government Digital Service(GDS:政府デジタルサービス)の責任者を務めている。なお同氏は2014年10月に英国の最高デジタル責任者として初めて、Chief Digital Officer of the Year 2014に選出されている。
ロンドンにあるGDSのオフィスにて。Mike Bracken氏の横にはGOV.UKのポスターが貼られている。
提供:Alex Howard
同氏は、あらかじめ用意した英国内閣府からの声明文のなかで「英国政府は今までCDOという役職を置いていなかった」と述べたうえで「では、なぜ今になって必要としたのだろうか?政府のデータ利用効率を向上させるさまざまな取り組みはこれまでもあったが、データにまつわる検討課題を解決に向けて後押しするための中枢機関がなかったためだ。今までの取り組みの多くは独立したプロジェクトとして実施されてきていた。このため取り組みに整合性を持たせ、市民や企業のために公共データを可能な限り効率的に利用する必要がある」と続けた。
英国内閣府によると、Bracken氏は以下の3つの目標に向けて特に力を注ぐという。
- Government Data Standard(英国政府のデータ標準規約)の制定と実施を統括する。
- オープンデータを支持するとともに、既存の政府データはどこにあろうと公開できるようにする。
- 政府における意思決定ツールとしてデータ利用を推進する。
筆者は、21世紀の政府についてのBracken氏の考えを語ってもらう機会を、数年前のGOV.UKの立ち上げ時から何度か得ている。機能しない調達システムを何とかする方法についての同氏の考えは、そのうちのほんの1つでしかない。また、英国のGDS設立の成果に触発されて、米国でUS Digital Service(米政府デジタルサービス)と、米連邦政府のソフトウェア開発機関である18Fが設立されたと言ってもよいだろう。そして、Bracken氏が提唱するデジタルコアの確保、すなわち政府内にデジタルリソースを確保しておくことによって、世界中の官僚機構を悩ませている大きな難問の1つに取り組めるようになる。その難問とは、データに対するアクセスと相互運用を可能にし、政府の各部門の人々に有益性をもたらすというものだ。
Bracken氏は声明で「われわれは今や初めからデジタル化された公的サービスの実現に向けて足を踏み出し、Government as a Platform(プラットフォームとしての政府)に向けて進んでいる。クリアで例外なく適用できるデータ標準規約の必要性は以前にも増して明らかになってきている」と述べるとともに「われわれが『公共サービスとしてのソフトウェア』について語るのと同様に、『公共資産としてのデータ』についても語るべきだ」と述べた。
以下は、英国のCDOであるBracken氏とのインタビューのなかで、同氏の新たなポートフォリオに関してやり取りした内容だ。なお、趣旨を簡潔かつ明確にするために若干の編集を加えている。