FinTechの実際

2017年はFinTech体験の機会が増大--利用者のニーズが明らかに - (page 2)

小川久範

2017-01-05 07:00

利用者に変化の兆しが見える決済・送金サービス

 最初に取り上げたいのは、個人間の決済や送金を可能にするサービスである。注目する理由は、フリマアプリ「メルカリ」の普及により、利用者が個人間の決済に電子的な決済手段を利用することに慣れ、その利便性をメルカリの外でも求めるようになる可能性があるためである。日本は諸外国と比べて個人の決済における現金比率が高いが、フリマアプリから変化の兆しが見え始めている。

 メルカリは、日米で6000万ダウンロードを突破したアプリである。個人が不要になったモノをネット上のフリーマーケットで販売することができる。決済手段としては、クレジットカード払い、キャリア決済、コンビニ払いなどがある。特徴として、モノを販売して得られる売上金をポイントとして貯めておき、自分が購入者になった際、それを支払いに利用できる点が挙げられる。現金を引き出すには手数料が必要なこと、販売者が購入者にもなるC2Cのマーケットプレイスであることから、利用者は売上金を現金で引き出さず、ポイントのままメルカリ内の決済手段として利用している。

 このメルカリから決済機能を取り出し、より広く個人や中小事業者の決済手段として利用できるようにする取り組みを行っていると見られるのが「AnyPay(エニーペイ)」である。将来は個人間の送金サービスも検討しているとされる。同社はシリアル・アントレプレナー(連続起業家)として有名な木村新司氏が設立したFinTechベンチャーとして注目されている。販売者が購入者にもなるC2Cマーケットプレイスの仕組みが、そこから切り出されても上手く機能するのか、非常に興味深いところである。機能するのであれば、メルカリが決済手段を外部に提供する形で参入してくる可能性が考えられ、今後の動きから目が離せない分野である。

 変化の兆しを捉え、いち早く個人間の送金サービスを開始したのが「Kyash(キャッシュ)」である。Kyashでは、「Suica」の残高を個人間でやり取りできるようにしたようなサービスである。受け取った残高は、現金で引き出すことはできないが、Visaの加盟店で支払いに利用できる。前払式支払手段を用いることで、利用者が本人確認の手間をかけずにサービスを使えるメリットがある。同社代表の鷹取真一氏は、シニアが多いFinTech起業家の中では若手であるにも関わらず、FinTech協会の理事を務めており、「FinTech界のプリンス」として知られている。

 クラウドファンディングの仕組みを使い、個人間の送金に近い価値を提供しているのが、SMILABLE(スマイラブル)の「アイムイン」である。パーティーの会費集めや皆でお金を集めてプレゼントをする際などに便利なサービスで、集金する人がアイムインで企画ページを作り、お金を払う人はそこにアクセスしてクレジットカード情報を入力するだけで、実質的に送金することができる。企画を告知する相手を限定すれば、友人との飲み会の会費集めにも使えるなど、とにかく手軽に利用できる点が一番の特徴である。2016年12月現在、手数料0%のキャンペーンを行っているため、忘年会や新年会の会費集めで試してみるのも良い。同サービスは、国内最大級のFinTechイベント「FIBC2016」において、ISID特別賞を受賞している。


アイムイン

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