Fintechの正体

激動のFintech--英国EU離脱の影響

瀧 俊雄 小船井健一郎 山田竜司 (編集部) 2016年08月08日 07時00分

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シングルパスポートのゆくえ

 英国の欧州連合(EU)離脱が6月23日に国民投票で可決されました。英国のEU離脱により、注目しているのは3つの側面です。

 ひとつめは経済が不確実性を抱えて混乱する観点です。英国という制度自体が今後どうなるかわからないうちは、従来とは同じ軸では投資はできません。

 そのため、この観点では英国のFinTech向けの投資資金は間違いなく冷え込みます。ただ、この不確実性は、実際にBrexit(英国のEU離脱)の過程において何が変わるかが明確になれば、その後の世界は変わっていきます。

 ふたつめに、FinTechという観点からすると、離脱交渉のなかで一番守りたいものは金融機関としてのライセンスです。「シングルパスポート」という表現がありますが、英国で銀行免許や送金業のライセンスをとれば、ドイツやエストニアでも同じビジネスの運営ができるため、この恩恵を受けて英国のFinTechは拡大してきたのです。例えば、海外送金サービスのTransferWiseが英国に本拠を置いていたのは、ここをベースに制度的な対応をすれば、欧州中でお金を送り合うサービスを気兼ねなく展開できたからです。

 しかし決済サービス指令(PSD)は欧州圏内のペイメントの法体系なので、そこから離れなければなりませんが、もしシングルパスポートのチケットだけは残せれば一番恐れられているリスクは回避できます。これは「欧州圏内で同じように口座が使える」とか「昨日まで使えたものが使えなくなる」という話なので、予断を許さない状況です。


 3つ目は、労働力の問題です。日本も海外もそうですが、ベンチャーはとにかく若くて体力がある人が必要です。今までは英国のベンチャーは、多くの移民の人たちが支えてきました。その人たちが国へ帰らなければならなくなるとすると、「イギリスじゃなくてドイツでやったほうがいい」という話になるかもしれません。

 実際、いま「Brexit」と「FinTech」で検索すると、フランクフルトという言葉が多数出てくるようになりました。なぜなら「本当にシングルパスポートが使えなくなるとしたらフランクフルトに本拠を移して、そこでライセンスをとって欧州のビジネスをやります」という、TransferWiseの社長コメントがさまざまなところで取り上げられているからです。

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