Fintechの正体

「APIはポスト現金社会のATM」--銀行法改正の先にある世界観

瀧 俊雄

2017-03-27 07:00

 金融審議会の金融制度ワーキング・グループ(WG)で進んでいた、銀行APIを活用する中間的事業者に向けた制度整備は、銀行法案という形で反映され、3月3日に公開されました。法律の詳細は金融庁のページで見られます。

 これまで、参照系APIを可能にしていたのは日本では6行でしたが、銀行法が改正されることで契約しやすくなったといえます。これを機に、参照系、更新系ともにAPI化がスピードを上げて進行していくでしょう。

 法案は4〜5月頃に通る見通しですが、通過後には詳細を定める法令を、さまざまな意見を取り入れながら作成するプロセスが待っています。法案には「電子決済等代行業者」という業態として定義されているのですが、PISP(決済指図伝達サービス業者)とAISP(口座情報サービス提供者)という、本来は論点が異なるものを同じ枠で規制していくべきかという問題もあります

 制度の枠組みにおいて、PISPとAISPにどれくらいの違いをつけるのかは、API化によるベンチャーの新規参入を促すうえでは、極めて重要なテーマです。当社は登録基準が高くても条件は満たしていると思いますが、現実的には例えば「1~2年目のマネーフォワード(程度の規模の企業)が登録できるのか」という観点が重要です。

 また、新たに制度ができるという状況のため、最初から入っていた事業者が有利になる側面は存在してしまいます。社会的に公平な制度であるためには、「初期のマネーフォワード」が、「これに批准すれば銀行APIにアクセスできるのだ」と思える状況であり、新規創業を促すものでなければなりません。


FinTech協会 (ウェブサイトから引用

 この銀行法改正案を受けて、FinTech協会は3月3日に「認定電子決済等代行事業者協会」の設立に向けて動き出すことを発表しました。マネーフォワードとfreee、Moneytree、Zaimなどが連名で入る協会です。

 設立の背景は2つあります。1つは銀行のAPI化に関しては制度や業界のあり方について継続的なアップデートが必要なため、それを丁寧に進めていく母体が存在しなければならないということ。

 もう1つは、新たな業態ができた中で、そのイニシアチブを取る場所が必要ということです。これから、APIを活用しようとする企業がオープンに入っていける仕組みを整えることも大切です。また、業界としてまとまった組織がないと、意見を聞く先に困るという制度的な要請もあるほか、データ活用の側面における苦情受付などの窓口となる役割も担うことが求められています。

 銀行法改正の影響で早まっており、今後は相当程度のAPI開放行が増えていくのではないでしょうか。われわれマネーフォワードも事業環境として、APIが開いていくことは大変重要なため、この動きは極めて前向きに捉えています。

 また、3月末に全銀協(全国銀行協会)によるAPIの検討会合の取りまとめが出される予定ですが、その仕様については明確なルールというよりは、そのあり方をまとめていくものとなるでしょう。海外で進められている金融APIのWGでも、さまざまな金融情報のデータ構造の一元化は難しいという話があります。あるべき方法とベストプラクティスを更新し続ける作業が続いていくと考えています。

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