銀行のQRコード導入でキャッシュカードが少数派に--進む中国でのFinTech

山谷剛史 2016年09月13日 07時00分

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 中国でQRコードといえば、阿里巴巴(アリババ)系の支付宝(アリペイ)や騰訊(テンセント)系の微信支付(ウィーチャットペイ)のほか、最近では路線バスなどの公共交通も採用の動きを見せている。現地時間7月15日には、中国の大手銀行である中国工商銀行がQRコードの支払いに対応した。これまでは一旦各銀行から支付宝か微信支付に金額を一旦チャージしてから商品代金を支払っていたが、今後は銀行のアプリから直接QRコードを使って支払いができるようになる。大手銀行として初めての採用であるが、他の中国の銀行も追随し、同様のサービスを出してくるものと予想される。

 PaymentsSourceの調査によると、中国工商銀行が発行する国際クレジットカード枚数は1億1500万枚と世界で最多。また中国工商銀行発表のデータでは、同社のオンラインバンキングサイト「融e行」のユーザー数は2億1500万、モバイルバンキングアプリ「融e聯」のユーザー数は3000万、ECサイト「融e購」のユーザー数は4400万、支付宝へのお金を振り込みなどに使われる「e支付」のユーザー数は1億超だという。中国工商銀行のサービス自体は実はあまり評価は良くないが、それでもこれだけのユーザーが各サービスを利用している。

 中国工商銀行によるQRコードでの支払いのやり方は、それまでのQRコードでの支払いとほぼ同じやり方で、中国のユーザーには受け入れやすいものとなっている。アップデートによりQRコードでの支払いという新たな機能が追加された工商銀行のモバイルバンキングアプリ「工銀融e聯」を使い、客側のスマホで店舗用スマホアプリや専用機器端末から出たQRコードを読み取る、または業者用スマホアプリが入ったスマホで客側のスマホアプリで表示させたQRコードを読み取ると支払いが完了する。中国工商銀行のアプリのメニューには、支払いだけでなく、支払いが利用できるサービスが並ぶ。生活関連では、映画チケットの購入、鉄道切符の購入、スポーツ、医療、電話代のチャージ、ゲームマネーのチャージ、航空券やホテル予約、交通罰金、チケット類といったメニューがある。

 中国では生活系サービスのスタートアップは、お得感を出すキャンペーンを行い、ユーザーにアプリをインストールしてもらうのが一般的だ。中国工商銀行も例外ではなく、QRコードでの支払いを促すため、10元(1元は約15.5円)以上の支払いで5元、20元以上の支払いで10元還元するキャンペーンを開催した。

 さらに中国工商銀行のほか、中国建設銀行や招商銀行などの複数の銀行がQRコードを利用した現金引き出しに対応し、キャッシュカードを持たずにお金を引き出すことができるATMが登場した。利用者は、あらかじめ各銀行のアプリに引き出し額を入力し、ATMに出向く。5分以内に銀行のATMに着くようにし、QRコード経由での現金引き出しを選択してATMが表示するQRコードを読み取ると、(すでに引き出し額を入力しているので)「○○元を引き出しますか?」という確認画面が表示される。最後にパスワードを入力すれば、ATMから現金が出てくる。キャッシュカードレスで現金がおろせる仕組みだ。

 中国では、新サービスで新たなカードを発行せず、物理的なカードを利用する機会を減らそうとする傾向にある。支付宝ではバスの利用にもQRコードを活用する動きを見せている。今は新サービス登場時期ということで、銀行でのQRコードを利用したサービスの限度額も低めに設定されている。しかし、ここは変化の激しい中国。身の周りが頻繁に変化し、それが受け入れられてしまう環境ができている。都市によっては続々とユーザー自身が積極的に新サービスを試し、やがてキャッシュカードの挿入口を備えたATMが少数派になっていっても不思議ではない。困ったことに、この国では外国人に対するサービスが二の次になる傾向があり、中国を訪問する外国人はその普及に反比例して何かと苦労することになる。

山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター
2002年より中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、アセアンのITや消費トレンドをIT系メディア・経済系メディア・トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014 」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち 」など。

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