ServiceNowは、SAPの元最高経営責任者(CEO)であるBill McDermott氏を新たなCEOとして迎え入れる。2019会計年度に32億ドル(約3500億円)以上の売上高が見込まれており、SaaS市場で急成長を続けているServiceNowにおいて、同氏がどのような舵取りを見せるのかは興味深いところだ。
近年のServiceNowは幹部の入れ替わりが続いている。2017年4月にCEOに就任したJohn Donahoe氏は米国時間10月22日、ServiceNowのCEOを退任し、NikeのCEOに就任すると発表した。なお同氏の後はMcDermott氏が引き継ぐことになっている。また、かつてServiceNowのCEOを務め、現在ではSnowflakeのCEOを務めているFrank Slootman氏は、ServiceNowの幹部や営業関係の人材をリクルーティングしている。例を挙げると、ServiceNowの最高財務責任者(CFO)を務めていたMike Scarpelli氏は8月に同社を退社し、SnowflakeのCFOに就任している。なお、McDermott氏がSAPの退社を発表したのはわずか数日前のことだった。
ServiceNowにとって幸運なのは、法人市場で強力な立ち位置を築き上げているとともに、健全な顧客内シェアを有しているという点だ。同社は当初、ITサービスクラウドプラットフォームを主に手がけていたが、人的資源や財務、顧客サービスといった分野に手を広げていった。同社は現在、さまざまな職務機能をまたがるワークフローの簡素化と自動化を目指している。
同社の2019会計年度第3四半期の売上高は、前年同期比32%増の8億8580万ドル(約963億円)だった。そして同社は、2019年のサブスクリプション売上高が32億4000万〜32億4500万ドル(約3520億〜3526億円)になると予測している。
ServiceNowは、GartnerのITサービス管理分野のマジック・クアドラントでビジョンと実行能力を合わせ持った「リーダー」に分類されている。また、顧客関係管理(CRM)における顧客エンゲージメントのマジック・クアドラントでは「概念先行型」に分類されている。
提供:Gartner(2019年8月)
ServiceNowの株価は、Donahoe氏の舵取りのもとで好調だったと言える。ただ、McDermott氏の就任によって同社の雰囲気は変わっていきそうだ。このため、変化が見られそうな点を以下に記す。
製品のロードマップがより堅実になっていく:McDermott氏は、顧客のニーズに焦点を合わせ、その製品化に向けて注力していきそうだ。JMP SecuritiesのアナリストであるPatrick Walravens氏は次のように述べている。
ServiceNowの中核製品群は「盤石」だが、業界関係者のなかには、プラットフォームの「コンシューマライズ」を急ぐあまり、顧客の混乱や、一部の中核パートナーの動揺を招いたり、成長の源たるもののペースが乱れていると指摘する向きもある。