満足度99%--インターンで徹底したリアルさを追求したNTT東のユニークさ

田中好伸 (編集部) 阿久津良和

2021-10-25 08:00

 「優秀な人材をいかに集めるか」は企業にとって重要な課題だ。まして、企業が生き残るためにはデジタルトランスフォーメーション(DX)が必須と言われる現在ではデジタル人材が不可欠であり、デジタル人材の獲得、育成は無視できない課題となっている。

 そうした状況でユニークな取り組みを進めているのが東日本電信電話(NTT東)だ。同社は8月にシステムエンジニア(SE)を想定したインターンシップを実施。参加した51人の学生の99%が「大変満足」(5段階評価)と回答した。背景にあるのは“徹底したリアルさ”を追求したことだ。

自治体のネットワークを設計

 総務省が7月30日に総務省が発表した「令和3年版情報通信白書」によれば、50%以上の企業がデジタル人材不足を課題の1つに挙げ、9年後の2030年には79万人ものデジタル人材不足を予想している。こうした課題を解決する意味も込めて、NTT東は一風変わったインターンシップを実施した。

 同社 総務人事部 人事第二部門 海外研修 伊藤信吾氏は「学生たちは5日間、仮想の企業を立ち上げ、責任者としてSI(システムインテグレーター)業務を体験する。現場経験を持つ先輩社員16人が2人ずつ第三者視点で助言し、没入感を得るプログラム」と説明する。

(左上より時計回りで) 総務人事部 人事第二部門 海外研修 伊藤信吾氏、ビジネス開発本部 第三部門 IoTサービス推進担当 清水つばさ氏、総務人事部 人事第二部門 採用人事担当課長 片野雅幸氏、総務人事部 人事第二部門 採用人事担当 五十嵐貴大氏
(左上より時計回りで) 総務人事部 人事第二部門 海外研修 伊藤信吾氏、ビジネス開発本部 第三部門 IoTサービス推進担当 清水つばさ氏、総務人事部 人事第二部門 採用人事担当課長 片野雅幸氏、総務人事部 人事第二部門 採用人事担当 五十嵐貴大氏

 学生たちは自治体が提示した仕様書をベースに選択範囲を狭めるために同社が用意した仮想のネットワーク機器を配置し、顧客との打ち合わせ準備を行う。サンプル資料やネットワーク技術の養成プログラムも準備することで「99%リアル」(伊藤氏)なインターンを実践した。

 今回参加した学生の専攻も知能情報工学、数物・電子情報、理学、数物科学、総合化学、経営システム工学と多様だ。同社ビジネス開発本部 第三部門 IoTサービス推進担当 清水つばさ氏は現在、人材採用に関わる部署ではないが、今回のインターンシップに向けて、ネットワーク構築に欠かせない、TCP-IPを基礎から学べる資料を作成した。作成した資料は100枚以上という。

 「自分は農学部出身で(ネットワークに関する)知識もゼロだったが、(入社)5年半で一定の能力を身につけることができた」と清水氏は今回のインターンシップの有用性を強調した。

 ネットワーク技術の知識が乏しい学生たちの集中力を高めるため、実際に手を動かすワークショップを挿入し、前述した先輩社員の手助けを加えている。参加した学生51人の99%、つまり50人が「大変満足」だと回答したことになるが、「重視しているのは『1対51』ではなく、協力者26人、私と五十嵐の18人が51人のモチベーションを高めていく姿勢。伝達効率が高く、インターンシップに参加した学生たちのモチベーション向上につながっている」(伊藤氏)

 多くのインターンシップは企業や組織の内部で閉じてしまうものの、「詳細は明かせないが、裏設定を用意して(学生たちに)リアルな内容を提供」(伊藤氏)することが、高い満足度を達成できた理由だと述べた。

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