ITアーキテクチャは集中と分散を繰り返してきた。今まさに進んでいるのはコンピューティングリソースの分散化だ。CDNやエッジサービスを展開してきたアカマイ・テクノロジーズでは、IaaS企業のLinodeの買収を通して、クラウドサービスを柔軟に組み合わせ、比類のないスケールで分散されたコンピューティングプラットフォームを提供しようとしている。低コストと使いやすさで世界中の開発者に支持されてきたLinodeの買収により、クラウドコンピューティングサービスにどのような変化が生まれるのか迫った。
長年のニーズに応えるべくクラウドコンピューティングの領域にアプローチ
アカマイ・テクノロジーズ(以下、アカマイ)は、これまでCDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)やエッジサービス、DDoS防御やWebアプリケーションファイアウォール(WAF)といったセキュリティに至るまで、幅広くサービスを展開してきた。
だが、唯一カバーできていない部分があった。それが「オリジンサーバ」だ。
グローバルなネットワークインフラとキャッシュサーバで構成される基盤を活用し、オリジンサーバへ集中する負荷を分散してコンテンツをスムーズに見られるようにするのが同社CDNの最大の強みだ。しかし、元々のオリジナルコンテンツをホストするWebサーバは、サービスの提供者が別途用意する必要があり、クラウドサーバーをCDNと一緒に提供できないか、という問いは長年受けてきたという。
また近年アカマイでは、開発者独自のコードをアカマイのエッジに置いてワークロードを分散駆動できる、「EdgeWorkers」を提供していて、すでにオリジンサーバの処理負荷軽減や、地理的特性を活かしたアプリケーションに利用されている。その一方で、オリジンとなるクラウド上のサーバでの集中型コンピューティングとの併用や使い分けのニーズも高まっていた。
これらの背景を受け、アカマイは 2022年2月にIaaSプラットフォームプロバイダーである「Linode」を買収し、クラウドリソースをカバーする体制を整えた。アカマイ・テクノロジーズ合同会社 プロダクト・マーケティング・マネージャーの中西一博氏は、次のように語る。
「マイクロサービス化の流れもあり、クラウドからエッジに至るまで、コンピューティングリソースを分散させる必要が高まっています。こうした流れの中でアカマイでは、Linodeの買収を機に、エッジだけでなくクラウドのコンピューティングもカバーするAkamai Cloud Computingの提供に踏み出しました。これまでの、ハイパースケーラーと呼ばれる巨大クラウド事業者にない特徴を活かしたサービスを提供すべく投資を進めています」(中西氏)
では、アカマイが提供するクラウドの特徴と、目指している姿はどのようなものだろうか。
- アカマイが提供するクラウドサービス、3つの特徴
- 透明性が高い料金体系により想定外のコスト超過を回避
- クラウド+エッジによるシナジーでエンタープライズグレードのサービスに