Coltが見るサステナビリティの今と未来

 Colt Technology Services Group (日本法人名:Coltテクノロジーサービス株式会社)は、世界35カ国でICTインフラを法人向けに提供し、広帯域ネットワークサービスによって、顧客のデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を支援する。環境への貢献に関心の高い欧州に本社を持つColtのようなグローバル企業は、世界的な気候変動を始めとするビジネスのサステナビリティという課題にどのように取り組んでいるのか。今回は、2019年にグローバルの最高マーケティング責任者(CMO)に就任した水谷安孝氏に聞いた。
Coltテクノロジーサービス株式会社
グローバルCMO
水谷 安孝 氏
Coltテクノロジーサービス株式会社
グローバルCMO
水谷 安孝 氏

サステナビリティの実現はまず組織作りから

--まずカーボンニュートラルを中心としたサステナビリティについての取り組みについて教えてください。

水谷:企業戦略としてサステナビリティに取り組んでいくことを役割として決め、組織もそれに合わせています。サステナビリティを推進していくにあたり、ビジネス目標との連携を考えています。CEOが自ら推進委員会の議長となり、従業員5,000人が四半期ごとの目標でサステナビリティの項目を設定することで、ビジネス目標との関連を一人一人が考える仕組みができています。

 また、サステナビリティの目標の達成に向け、8つのグループを立ち上げています。例えば、二酸化炭素排出量を記録する方法を確立し、ネットワーク通信から生じる二酸化炭素排出量の削減、社用車の電動化、通勤や出張に関する従業員規定の更新、埋立廃棄物ゼロと循環型経済の実践に取り組んでいます。

可視化でさらなる二酸化炭素排出の削減へ

 2021年には、主要なNGOや気候研究者によって設立され、排出量目標基準について最も信頼性の高い組織であるSBTi(科学的根拠に基づく目標イニシアチブ)より承認を受けています。SCOPE1は、その事業者自らの直接的な二酸化炭素の排出量、SCOPE2は、例えば電気などのエネルギー使用に伴う間接的な排出量、SCOPE3がその他の間接的な排出量です。

 二酸化炭素排出の削減に向け、まずは排出量を年毎に記録し、基準値を2019年に定めました。当社やお客さまが使用されるデータセンター間のネットワーク通信で消費される電力を測定します。社用車の燃料と使用量、従業員による自動車や飛行機の使用頻度、世界のオフィスでの電力量、さらには備品等の排出量も確認しています。可視化できていない項目、例えば社員の通勤経路などは、全社でアンケートを実施し、それぞれの国に応じて自転車通勤の可能性を考慮するなど、現状を把握したうえで改善策を決定しています。

 また、カテゴリー毎の排出量の重要性に応じて効果的な排出量削減の取り組みやロードマップを実行してきました。私たちはサプライヤーがSBTを設定しているかどうかを調査し、2021年10-11月のCOP26で議論された地球の気温上昇を1.5度以下に抑える、という目標に対して世界のTop50社のうち、SBTiに参加している企業はわずか16%であり、改善の必要性があることを確認しました。

 また、当社が保有する車両の16%をプラグインハイブリッド車(PHEV)や電気自動車に置き換えており、2022年までに38%にまで増やす計画です。このように改善を図り、第三者機関を通じて現状やターゲットに問題がないかを科学的な根拠に基づいたレビューを行っています。

図1.SBT(科学的な根拠に基づく気候変動対策)の認証を受けた3つのスコープ
図1.SBT(科学的な根拠に基づく気候変動対策)の認証を受けた3つのスコープ

 実際の取り組みとして、一例では再生可能エネルギーの購入が挙げられます。英国や欧州全体に展開するデータセンター拠点では、使用する電力の100%を再生可能エネルギーでまかなうことができるようになりました。現在、日本、シンガポール、香港、インドを含む世界全体でこの取り組みの拡大に努めています。

 古いネットワーク機器のリニューアルにも取り組み、電力消費量が高いネットワーク機器を2年間かけて刷新しています。これにより、5,500世帯が1年間に使用する電力に相当する電力量を削減可能です。購買における検証にも注力しており、ポリシーを刷新してサプライヤーにもサステナビリティの取り組みを要請しています。こうした機器による電力消費量や二酸化炭素排出量についても第三者機関のレビューに基づき、科学的な目標に沿っているかを確認しています。

 サステナビリティに関する表彰制度も設けています。例えば、従来はCEOからの表彰は業績のみが対象でしたが、2021年には初めてサステナビリティのカテゴリーで優れた成果を上げた従業員に表彰が行われるようになりました。受賞者2名は、南極環境保護の専門家ロバート・スワン氏の南極保護活動へ同行し、実際に現地で氷河の融解状況の確認や流れ着いたゴミの処理などの活動に参加し、その実態を当社の従業員全体やパートナーにレポートすることで、気候変動をより身近な問題として認識する狙いです。

 業務で使用したPCについても、そのまま廃棄するのではなく、まだ活用できる機器を教育機関に寄贈しており、約2,000台ほどをご提供しています。

 当社には寄付の文化も強く根付いています。最近ではコロナ禍の影響で一斉にマラソンやサイクリング等を行うことが出来ないことから、数百名を超える従業員が35か国でColtのネットワーク距離と同等の10万キロを走り、それに対してファンドレイジングで寄付を募ることで総額2,500万円ほどの寄付を行っています。このように、世界中の従業員が社会へ与える影響を強く意識して行動することで、自分の勤める会社や同僚を誇りに思えるようなブランドの確立に繋がっています。

図2. Coltテクノロジーサービス社のサステナビリティに対する取り組み
図2. Coltテクノロジーサービス社のサステナビリティに対する取り組み

ビジネスとサステナビリティのバランス

--ビジネスとサステナビリティの取り組みではバランスを取る必要も出てくると思いますが、その際の目標などをどのように工夫していますか。

水谷:そもそもビジネス戦略としてサステナビリティに取り組まないことは、大きなリスクになると考えています。実際に当社がお客さまから2020年度に受け取った提案要請書(RFP)の70%において、サステナビリティの取り組みを開示してほしいという要求がありました。まだ日本では少ないですが、一部の大手のお客さまからは同様の要請をいただいています。日本でも、多くの企業の経営層がサステナビリティへの対応の遅れが顧客満足度、従業員満足度、及び株主満足度に致命的なダメージを与えかねないことを認識しています。逆に言えば、経営戦略としてサステナビリティを意識することでリスクを軽減し、ビジネスを成長させることができると考えられるようになってきたと言えるでしょう。

 このことを裏付ける数字として、ESG(環境、社会、ガバナンス)への投資額が2040年までに累計で7,900兆円になるとの予測があります。全世界で運用されている機関投資家の資産総額、株式・債権・融資の全てを含めた規模の3分の1以上に相当するという報道もあります。その意味でサステナビリティは、ビジネス戦略そのものであり、サステナビリティへの取り組みを通じて、ビジネスの成長にも効果がもたらされると考えています。

ダイバーシティーへの取り組み

--地球環境の保護といった観点でサステナビリティへの取り組みは、ビジネスとの関連をイメージしづらいですが、環境面のみならず企業としての社会的責任やガバナンスも含め本質的にはビジネスの継続性に直結するということですね。

水谷:日本では、どうしても二酸化炭素の排出ばかりが取り上げられる傾向にありますが、ESG全体として見た場合、特に「社会」の観点では「Black Lives Matter(BLM)」などの人権への取り組みが課題に挙がります。マイノリティーと言われる人種の方や女性の給与が不当に低かったり、重要な役職に就けないようなことがあるかどうかといった課題です。

 企業として具体的な人権対策や、経営層の女性の割合なども問われています。私は英国本社で働いていますが、社長を含め当社の経営層の5割は女性です。私の上司も過去3人が全て女性でした。従業員やパートナー、顧客、さらには投資家を含めたステークホルダーから開示要望があります。

 「ガバナンス」についても法令順守やリスク管理、データに関するガバナンスなど指摘されるようになってきています。お客さまにネットワークサービスを提供する上で、データ保護ポリシーの提出を求められることが多い状況です。

 当社は、通信事業会社としては世界で初めて第三者機関の認証を受け、「バインディングコーポレートルール(拘束的企業準則)」を導入し、GDPRに準拠することを決めたケースになりました。これによりお客さまがデータ保護への取り組みについて尋ねられた際に、Coltをご利用されていることで、GDPRへの準拠を証明することができます。

通信ネットワークは、今や社会生活を支える「ソーシャル・コントラクト」

--日本でもこの1~2年でESGが注目されるようになってきました。Coltとしては、早い時期からこうした取り組みの成果を積み重ねてきていますね。

水谷:はい、かなり早いタイミングに取り組みを始めています。特に「社会」の部分については、通信ネットワークが「ソーシャル・コントラクト」(社会契約)として必要不可欠な存在になったと認識しています。

 例えば、パンデミックの対策として都市がロックダウンされた際、学校ではネットワーク経由でバーチャル授業を実施するように、通信のネットワークがなければ社会生活を継続することが難しくなっています。

 ソーシャルコントラクトとしてColtが果たす責任の大きさを従業員も意識しており、会社として、また、個人としてできることを深く考える機会が増えています。私自身もColtの社会的な存在意義やここまでご紹介した取り組みの影響を子どもたちに自信を持って話せるように考えて仕事をするようになりました。これは、ここ数年で大きく変化したところですね。

--最後に読者へのメッセージをお願いします。

水谷:「ぜひ、一緒にやりましょう。」の一言に尽きます。企業が単独で取り組んでもその影響力は限られます。ですから、さまざまな企業がビジョンを共有することで、その可能性は大きく広がります。世界中で既に起きている気候変動による大規模災害などの問題は、もはや無視できるようなレベルではないことからも分かります。

 Coltだけではなく、世界中の通信事業者、クラウド事業者、システムインテグレーターをはじめとするエコシステム全体をより「グリーン」にする取り組みを継続することで、3年後、5年後に私達が置かれる状況が大きく変わります。国境や企業の枠を超え、IT業界全体で同じ目標に向かって一緒に歩んでいきたいと考えています。

提供:Coltテクノロジーサービス株式会社
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部  掲載内容有効期限:2022年4月30日
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