手軽にネットワークに接続できる無線LAN(Wi-Fi)は、会社内だけでなく家庭でも普及している。ノートパソコンをはじめ、タブレットやスマートフォンに至るまで、ほとんどのデバイスにWi-Fiが標準搭載されているし、Wi-Fiネットワークに接続することも比較的に容易だ。
また、Wi-Fiのアクセスポイントも安価で販売される製品が多いため、これらを購入して既存のネットワークに追加するケースも増えている。しかしその結果、Wi-Fiに思うようにつながらない、通信が切れることが多い、通信速度が遅いなど、多くの不満を抱えている結果になることも少なくない。
コムスコープ・コミュニケーションズ・システムズ株式会社
事業開発部
テクニカルディレクター
小宮 博美 氏
「Wi-Fiは発展途上の技術であり、また電波によって通信することによる特徴や制約もあります。これらの特性を踏まえた製品を使用することで、Wi-Fi環境は驚くほど高速、快適になります」と説明するのは、CommScope社でRUCKUS製品のプリセールスエンジニアを担当する小宮博美氏。ここでは、Wi-Fiにおける課題と解決策、そしてWi-Fiブランドである「RUCKUS」のメリットについて紹介する。
Wi-Fi環境における課題
ワイヤレスでインターネットに接続できるWi-Fiは非常に便利だ。しかも日本はブロードバンドが普及しているため、一般家庭でも1Gbpsのケーブルがつながっているケースが多い。しかし、Wi-Fiにつなげると30Mbps程度しか速度が出ないことも多く、昨今の新型コロナウイルス対応でリモートワークが進む中で大きな課題となっている。また、企業での利用においても同様の課題がある。
この原因には、大きく2つの要素が考えられると小宮氏は指摘する。ひとつは、アクセスポイントは電源をつなげばすぐに使用できるため、それ以上の設定をしていないこと。もうひとつは、Wi-Fiの規格がどんどん新しくなっているという点だ。設定については、Wi-Fiに対する認識の低さが要因となっている。現在、有線のネットワークに使用されるスイッチは「全二重」の通信が可能なので、スイッチの配下にある端末はいつでもデータの送受信が行える。
一方、Wi-Fiは「半二重」の規格なので、アクセスポイントに接続された端末のうち、通信できるのは1台に限定される。多くの端末が接続されたWi-Fiで速度が低下するのはこのためだ。最近では「マルチユーザーMIMO」というプロトコルも登場しているが、まだ特別な環境に限定されている。無線では使用可能な周波数もチャンネルも有限なので、お互いの通信が干渉して速度が低下したり、通信ができなくなったりしてしまう。Wi-Fi環境をうまくデザインする必要がある。
Wi-Fiの規格については、ここ数年でも「802.11 n」「同ac」「同ax」と進化している。呼び方を変えると「Wi-Fi 4」「同5」「同6」となる。もちろん、規格が進化するほど高速になり通信の安定性も増すのだが、ユーザーにとってその違いはわかりにくい。その結果、価格の安い古い規格の製品を購入してしまい、そもそも高速な通信ができないこともある。これはコロナ対応のリモートワークで会社がモバイルルーターを支給する際にも、品薄のために古い規格のものを用意せざるを得ないケースも多いという。
企業で導入する際には、現在はコロナ対応でリモートワークが増えたため通常より出社する人数が減り、Wi-Fiの面では快適な状況にあるが、今後、出社人数が増えると過酷な状況になる可能性が高いと小宮氏は指摘する。その要因のひとつに、アクセスポイントの選定および検証の課題がある。選定については前述と同じ事情が考えられるが、検証については甘く考えてシビアな検証が行われていないのが実情だ。
そのため、いざ設置して30~40人がアクセスすると、遅くなったり場所によって速度が落ちたりすることになる。本来は、実際の通信状況やユーザーが使用する場所なども考慮する必要がある。特に、最近では紙のマニュアルをやめてオンデマンドの動画に移行するケースも多く、データ通信量が増加している可能性が高い。また、電波は光と同じなので、植木があったりパーティションがあったりすると電波が届かなくなることがある。
Wi-Fiの課題を解決する「RUCKUS」
こうした課題を解決するためには、干渉を抑えることが第一となる。無線LANでは、データパケット、マネジメントパケット、コントロールパケットの3種類のパケットがある。このうちマネジメントパケットは、ユーザーがSSIDを取得するためのリクエストに応えるためのもので、より広範囲に届かせるために遅い通信レートを使っている。これが全体の通信を遅くする要因になり、また半二重なので他の通信に影響を与えてしまう。そこで、マネジメントパケットのレートを上げて影響を減らす対策が有効となる。また、設置場所を工夫することも重要だ。
また、アクセスポイントにRUCKUSを選ぶことも有効な対決策となる。RUCKUSはもともと無線を専門分野とする企業で、複数の買収を経て有線の技術も扱うようになっている。RUCKUSのアクセスポイントには多くの特徴があり、そのひとつが「BeamFlex(ビームフレックス)」である。これは、通信をしようとする端末の方向を検知し、その方向にのみ電波を出す技術。たとえれば、全体をくまなく照らすランタンと、一定の方向を照らす懐中電灯の違いであると小宮氏は言う。しかも、端末が移動すればそれに追随して電波を向ける。これにより干渉を抑え、安定した通信環境を提供する。
さらに、管理方法が複数用意されており、クラウドからの一元管理が可能であることもRUCKUSのメリットのひとつだ。複数拠点にある複数台のアクセスポイントの状況をモニターし、設定の変更なども一括で行える。ユーザーはアクセスポイントを設置し、管理画面からSSIDなど必要な項目のみ入力すれば、他の項目はあらかじめ最適な数値が設定されている。「ビームフレックスも自動的に動き出すので、置けば動き出すというイメージです」と小宮氏。
図:RUCKUS Cloud web UI Dashboard
RUCKUSは世界第3位のWi-Fiベンダーであり、キャリアーWi-Fiやホスピタリティ業界でのシェアは第1位を誇る。海外での導入事例も多く、日本でもすでにauが「au Wi-Fi」に採用している。有線の状態も含めてクラウドで一元管理することができ、SI会社や第三者に管理を委託することも容易にできる。また、AIや機械学習も取り入れており、将来的には障害予測をアラートで伝える機能を実装する予定だという。中小企業や多くの拠点を持つ企業に最適で、大企業向けにはオンプレミスの製品も用意している。無線環境に悩みを持つ企業にとって、RUCKUSは最適解になるのではないだろうか。