リスクも多様になりデータ保護の要件が複雑化
データは、AIに代表されるデータ活用のテクノロジーが普及するにつれて重要性が増大し、最近では企業の資産の一つとして認識されるようになってきた。したがって、これまで以上に、高度なデータ保護が求められている。
そういった状況の中で、近年ではクラウドの活用が進む一方でオンプレミスにも再び注目が集まり、両方の良さを取り入れることができるハイブリッドクラウド環境を志向している企業も多い。オンプレミスに限られていた頃に比べると、きわめて複雑なシステム環境だ。
またデータ保護の観点で言えば、備えるべきリスク要因が多様化し、データ保護の要件も複雑化してきた。現在では、自然災害に留まらず、パンデミックやサイバー攻撃などのリスクについても認識が拡大、そうしたリスク要因ごとに、データ保護や事業継続のシナリオを描いていくことが求められるようになっている。
こうしてデータ保護の要件が多様化・複雑化する中で、さまざまなデータ保護テクノロジーが次々に登場し及してきた。EMCジャパン DPS事業本部 事業推進担当部長の西頼大樹氏は、それらのテクノロジーの現状を1枚の図にまとめている(図1)。

各種データ保護テクノロジーの現状。横軸は発展・普及状況、縦軸は期待度を示す
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「図に示したように、数々のデータ保護テクノロジーが勃興し、市場に広まり、定着していこうとしています。例えばクラウドに関連するものだけ見ても、バックアップ先としてのクラウドストレージ活用はすでに市場で広く認知されるようになっており、今後は当然のように使われていくでしょう。また、パブリッククラウド上のデータ保護は、まさに「キャズム超え」の戸口にある段階です。一方で、これから期待度が高まってくる段階にあるのが、サイバー攻撃を受けた際のデータ復旧や、コンテナ環境の保護テクノロジーです」
企業は、自社のシステム環境やデータ保護要件に基づき、こうしたテクノロジーの数々を選択して活用していかねばならない。しかしデータ保護は、どうしてもシステム本体に比べると投資の優先度が低く見られがちだ。多くの企業では、予算もさることながら、人的リソースについても潤沢とは言い難いだろう。次々に必要となるテクノロジーを限られた人員で検討し、限られた予算で導入・運用していくには、どうすればよいのか。
実績豊富なデータ保護ベンダーの戦略
こうした各種データ保護テクノロジーは単独の製品やサービスとして提供されるだけでなく、既存データ保護ベンダーの製品やサービスに組み込まれたり、派生品として利用できることも多い。旧EMC時代からの実績豊富なデータ保護ソリューション「Data Domain」を持つDell Technologiesも、時代に応じたテクノロジーを取り入れラインアップを拡充・発展させ続けてきた。特にクラウドに関しては、同社では現在、「2-×-2アプローチ」と呼ぶアプローチで、オンプレミスとパブリッククラウドの両方のデータを保護するソリューションを展開している(図2)。