コスト効率の高いBCP/DRを「Azure Site Recovery」で
PowerEdge VRTXとAzure Packでプライベート・クラウドを構築したら、次はBCP/DR対策だ。ここで活躍するのが、Microsoft Azure上で提供されているBCP/DR対策ソリューション「Azure Site Recovery」である。簡単に言うと、クラウド上にBCP/DRサーバーを構築するサービスだが、その特長は料金体系にある。Azure Site Recoveryでは、Microsoft Azure上の仮想サーバーが待機状態のとき(平常時)は、仮想サーバーや仮想ネットワークの利用料金は発生しない。これらの料金が発生するのは、本番環境に障害が発生して、フェイルオーバーが発生したときだけだ。これにより、仮想サーバー1台あたり月額数千円という低料金で、BCP/DR対策を講じることが可能になっているのだ。
デル株式会社
デル ソリューション・センター
シニア・ソリュ-ション・アーキテクト
ワーナー・ジョナス氏
「Azure Site Recoveryでは、ポータル上にフェイルオーバー実行ボタンが用意されていて、トラブル発生時にきちんとサービスを引き継げるかを簡単にテストすることができます」(ジョナス氏)
もっとも、BCP/DR対策としては十分なAzure Site Recoveryでも、データのバックアップには不十分だと言う。
「Azure Site Recoveryでは、5分ごとや15分ごとといったタイミングでスナップショットが作成されますが、保持されるスナップショットの世代数に制限があるため、数日前、数週間前といった時点のデータは復元できません。データ保全の観点からすると、別途バックアップ手段が必要です」(石垣氏)
今回のモデルケースで、中小規模ビジネス用のバックアップツールとして提案されたのがデルの「AppAssure」だ。ダウンタイムを最小化するための画期的な機能を備えた製品である。
その特長の1つは、AppAssureという名前が示すように、アプリケーション・データを意識したバックアップが可能なこと。SQL ServerやExchange、ファイルサーバーのデータの整合性をチェックした上でバックアップする。これにより、壊れたファイルをバックアップして正常なデータを失うといったトラブルを防ぐことができる。もう1つの特長としては、リカバリ時の業務停止時間を最小化するアクセス機能がある。
「通常のバックアップツールでは、リカバリが完了するまでファイルにはアクセスできませんが、AppAssureではリカバリの途中でもファイルアクセスが可能です。AppAssureは、リカバリ時にメタデータをまず復元してファイルの存在をユーザーに見えるようにし、ファイルへのアクセスを受けると、そのファイルを優先的に復元します。ある程度の大きさのファイルであれば数秒で復元が完了するため、ユーザーにとっては何も意識することなく復元済みのファイルを使用することができます。この柔軟なキュー管理により、業務への影響を最小化できるのです」(石垣氏)
なお、モデルケースではバックアップ先をMicrosoft Azureの仮想サーバーとしているが、AppAssure自体は物理サーバーや仮想サーバーに関係なくバックアップすることが可能だ。
以上、本稿では、柔軟かつ現代的なIT基盤を構築する方法について解説した。本稿ではPowerEdge VRTXやAzure Pack、Azure Site Recovery、AppAssureで構成されるモデルケースを紹介したが、東京・三田にあるデル・ソリューション・センターでは、こうしたシステムの実機によるデモを体験することが可能だ。また、用意されたデモを見るだけでなく、利用者自身で検証作業を行うこともできる。デル・ソリューション・センター(DSC)およびデモの詳細については、以下ダウンロード資料でご確認いただきたい。