Dell EMCが「PowerEdge MX」で示す
次の10年の変化に順応するアーキテクチャとは?


Dell EMC インフラストラクチャ・ソリューションズ事業統括 製品本部 岡野家和氏

Dell EMCは9月12日、モジュラー型インフラストラクチャ「Dell EMC PowerEdge MX」の提供を開始した。本製品では、これまで不可能だった従来型ワークロードと次世代型ワークロードの両方を収容することができ、しかもチップセット3世代分の製品ライフをコミットしており、「まったく新しい発想で次の10年の変化に順応する、新世代モジュラー型ITインフラ」だと胸をはる。同社が本製品を通じて目指すところは何か、そしてPowerEdge MXではどのようにそれを具現化しているのか、同社の岡野家和氏に聞いた。

Dell EMC インフラストラクチャ・ソリューションズ事業統括 製品本部 岡野家和氏

なぜ今なのか、そしてDell EMCはどこで差別化できるのか

 より高い柔軟性や効率性を求めるユーザーニーズと、それに応えようとするメーカー側の技術革新により、ITインフラの姿は次第に変わってきた。近年では、ソフトウェア定義(SDx)技術を活用したハイパーコンバージドインフラ(HCI)が主流となってきており、日本でも2022年まで年平均20%超の成長が予測されている(※1)。デジタルトランスフォーメーションが企業の課題となる今、ビッグデータやAIなども含めたこういった新興ワークロードは、これからのITに欠かせない。ただIT部門にとっては業務システムやDBなどの従来型アプリケーションがなくなるわけでもない。つまり今後は、ハードウェア要件の特性が異なるこの2つの世界を、単一インフラで運用できることが理想と言える。

 もう一つ重要な要素が効率だ。効率には物理アーキテクチャの話とリソース利用効率の側面がある。

 前者のカギとなるのがモジュラー型インフラだ。一般的なラック型サーバに比べ、単なるケーブリングのコストや工数削減だけでなく、トータルな管理面でも柔軟性でも、モジュラー型インフラの方が優れるのは実際のユーザーへの調査結果から明白となっている(※2)。運用管理の効率改善がITの変革に欠かせないのはいうまでもない。リソースの利用効率については、コンピューティング、ストレージ、ネットワークなど各リソースのコンポーネントを個別に組み合わせて(コンポーズして)リソースプールを形成し、それらを動的に(キネティックに)割り振ってワークロードに提供するような形態を可能にすべく、業界各社が取り組んでいる。これらのポイントに今回、Dell EMC PowerEdge MXという最新の解を示した。

※1 出典:IDC Japan プレスリリース「国内コンバージドシステム市場予測を発表」(2018年8月20日)
※2 出展:Enterprise Strategy Group社ホワイトペーパー「Insights from Modernized IT: Modular Compute Can Have a Big Impact」

ミッドプレーンを持たぬユニークな構造で
「チップセット3世代分」使えることをコミット

 PowerEdge MXは、7Uサイズのエンクロージャー(シャーシ)に、コンピュート(サーバ)、ストレージ、ネットワーキング(スイッチ)の各コンポーネントを組み込み、インテリジェントな自動化テクノロジーを提供する専用ソフトウェア「OpenManage Enterprise Modularエディション」などにより全体を管理するという構成になっている。この構成により、「フレキシブル」(柔軟な拡張性)、「アジャイル」(俊敏な管理性)、「レスポンシブ」(技術変化に対応する設計)という3つの特徴をもたらしている。

 「PowerEdge MXでは、クラウドやHCIで稼働しているようなソフトウェアデファインド型ワークロードも、独立した物理サーバで稼働しているような従来型ワークロードも、どちらも稼働させることができます。2ソケットのPowerEdge MX740cはVMware vSAN ReadyNode認証を8構成で取得済みですが、そこにNVMe PCIe SSD 6本の構成が含まれています。従来型ブレードサーバは内蔵ドライブ2本が主流でしたが、HCIを念頭に設計されたMXでは、物理スペースを犠牲にしてでもローカルに6ドライブ欲しかった訳です。ストレージ ブレードがあるとは言っても、PCIe接続はできませんので。

図:PowerEdge MXの構成
PowerEdge MX740cはVMware vSAN ReadyNode 認証を8構成で取得済みという。
図:PowerEdge MXの構成
PowerEdge MX740cはVMware vSAN ReadyNode 認証を8構成で取得済みという。

また、モジュラー型ならではの利点として、例えばサーバスロットに対してプロファイルを設定し、そこに装着したサーバモジュールに自動的にそのプロファイルが適用されるようにする、といった形のデプロイ時間の短縮が可能です」と岡野氏は説明する。

 コンピュートおよびストレージのスレッドは、エンクロージャー前面から横に並べて装着し、ネットワーキングモジュールは背面から縦に並ぶ形で装着、エンクロージャーの内側で相互に接続する。PowerEdge MXがユニークなのは、その装着・接続方法だ。エンクロージャーに各モジュールを組み込む際、配線作業などが不要であることは言うまでもないが、本製品ではスレッドがスイッチに直接つながる仕組みになっている。

 「ブレードサーバでは、シャーシ内に固定されたミッドプレーン(あるいはバックプレーン)にサーバブレードを接続していましたが、ミッドプレーンは基本的に交換しない前提のため、将来的な技術アップグレードが困難でした。それに対しPowerEdge MXはミッドプレーンがなく、スイッチとNIC、すなわちネットワーキングモジュールと、そこに接続するスレッド側の入出力モジュールを交換することで、容易にアップグレードできます」(岡野氏)

 スレッドとスイッチが縦と横に直交する配置となっているのは、相互に接続し合うための工夫というわけだ。これにより、Dell EMCでは、チップセット3世代に渡る製品ライフをコミットするとしている。現時点での内部イーサネット接続は25GbEだが、将来的にはエンクロージャの設計変更なく50GbEや100GbEへ対応できるとのことだ。

 「冷却も、エアフローをゾーンごとに分け、効率的に行える設計です。スレッドには背面中央の段に横並びのファン、スイッチには前面中央に縦一列のファンが、それぞれ個別にエアフローを提供、電源ユニットも独立したゾーンとして冷却しています。将来的にはGPUなどのリソースを組み込むことを念頭に、余裕のある設計としました」(岡野氏)

図:PowerEdge MXの冷却エアフローの概要。独立した3つのゾーンに分け、それぞれを別の冷却ファングループが効率的に冷却する。
図:PowerEdge MXの冷却エアフローの概要。独立した3つのゾーンに分け、それぞれを別の冷却ファングループが効率的に冷却する。

リソースは比率もスケールも柔軟に設定可能
運用を自動化する高度なツールも搭載

 さらに、PowerEdge MXは複数エンクロージャーを一体として運用することが可能で、最大10エンクロージャーまで対応するという。エンクロージャーあたり最大8つのスレッドが搭載でき、サーバスレッドは1つあたり2ソケット構成なので、全体では80スレッド・160ソケットまで拡張できることになる。複数エンクロージャーで構成する場合、トップ・オブ・ラック(ToR)スイッチはマスターとなるエンクロージャーに設置、追加エンクロージャーではスイッチングもOS稼働もしないファブリックエクスパンダーモジュールを活用することで、コスト面も含めたシャーシ単位の拡張の容易さと、シャーシ間通信のレイテンシを低く抑える工夫が施されている。

 また、コンピュートとストレージのリソース比率も、柔軟に変えることが可能だ。サーバスレッドにも最大6本のディスクを搭載するが、より多くの容量が必要な場合は最大16本のディスクを搭載するストレージスレッドによりストレージのみを拡張できる。ストレージスレッドは、共有ストレージとして使えるだけでなく、特定ワークロードにディスク1本単位で割り当てることもでき、柔軟な使い方が可能だ。サーバスレッドも、2スレッド分のサイズで4ソケットのものが用意されており、EPRなど多くのコアが必要なワークロードにベアメタルで割り当てるような使い方に対応する。こうして、HCIで使われるような仮想マシンやコンテナアプリケーションから、ERPのような大規模ワークロードまで、幅広い対応を実現したというわけだ。

 そして、これらのリソースを多種多様なワークロードに対し柔軟に割り振り、瞬敏な管理を可能にするのが、本製品専用に開発されたOpenManage Enterprise Modularエディションだ。

 「これは今年新たにリリースした統合管理ソフトウェア『OpenManage Enterprise』の、PowerEdge MX専用エディションです。OpenManage Enterpriseは、名前こそ長年提供してきた『OpenManage Essentials』に似ていますが、次世代のITシステム管理のためにゼロベースで開発した全くの別物です。PowerEdge MX単体のみならず、そのマルチシャーシ構成、さらにはマルチサイト環境まで、追加のライセンスやハードウェアなしで管理できます。またOpenManage Enterpriseを中核として、PowerEdge MX以外のラック型・タワー型のPowerEdgeサーバまで含めて全てを一元的に単一ツールで統合管理できます。RESTful APIを介してのスクリプトによる管理や、全てをポリシーベースでの管理も可能なので、本当の意味での統合管理、データセンターの自動化を実現できます」と岡野氏は語る。

新たなビジョンの浸透に向け日本でも数々の施策を実施

 Dell EMCがPowerEdge MXで示したキネティック インフラストラクチャのビジョン、いわゆるコンポーザビリティの概念は、まだ実際のソリューションが登場して間がなく、あまり一般ユーザーまで認知が広まっているとは言えない。そこでDell EMCでは、日本でもそのビジョンを浸透させるべく、PowerEdge MXの発表に伴い5つの施策を準備した。最後に、それらを一通り紹介しておこう。

「キネティック インフラストラクチャ検証センター」の設立
9月12日にDell EMCソリューションセンター内に設置。ここには検証用の実機を用意し、様々なミドルウェアと組み合わせた機能検証やパフォーマンス測定、PoCなどに使うことが可能となる。
社内エキスパート育成プログラム
自社内にモジュラー型インフラの専門技能者を育成すべく、2018年2月からサーバのテクニカル営業担当者を対象として開始しており、米国本社での集中研修、「マスター称号制」による特別報奨などを行っている。
包括的導入支援サービス「ProDeploy Plus」
Dell EMCのエキスパートが導入を支援し、顧客側の工数を大幅に削減するサービス。サイトアセスメントから設置・導入作業、テスト・検証、引き渡し解説など、プロジェクト全体をDellがリードする。
「ゼロ金利ファイナンス」プログラム
Dell EMC独自の「デルファイナンシャルサービス」に、PowerEdge MX限定プログラムとして近日提供開始予定。ゼロ金利で3年間リースを提供し、ユーザーは月々の定額料金でPowerEdge MXを調達できるようになる。
マーケティング施策とパートナーエコシステムの強化
マーケティングに関しては、PowerEdge MXを含むPowerEdgeブランド全体で、製品の差別化ポイントを訴求する「Did You Know? (ご存知でしたか?)」キャンペーンを展開。エコシステムにおいては、テクノロジーパートナー各社との検証体制を構築するなど連携を強化させる。

関連動画

関連資料

企業のシステムを支えてきた サーバOS、Windows Server 2008 の延長サポートが
2020年1月14日に終了します。サーバの移行作業には時間がかかります。早期の準備が大切です。

提供:Dell EMC
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部  掲載内容有効期限:2018年11月30日
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