【インタビュー】企業競争力を高めるセキュリティ(第3回)
「災害対策、事業継続、節電の手法として、仮想化を検討される企業が増えています」――ヴイエムウェア
7月27日に開催される総合セキュリティカンファレンス「Direction2011」の舵取りをする、この連載で紹介する実行委員会のメンバー企業だ。第3回目となる今回は、東日本大震災以降の仮想化環境・クラウド環境における顧客動向の変化や、Direction2011で予定している内容などについてヴイエムウェア株式会社に話しを伺った。
――東日本大震災や電力の問題によって、経営者にはかつてないほど困難な舵取りが迫られていると思われます。震災を境として、ヴイエムウェアのお客様ではどのような変化が起こったのでしょうか。
森田氏
ヴイエムウェア株式会社
テクノロジー アライアンス部長
森田 徹治 氏震災以降、節電の手法や災害対策について改めて多くのお問い合わせをいただいております。日本の経営者にとって災害復旧対策や事業継続性は「いつか行う」テーマでしたが、「大至急見直す」に変わったのを感じます。もうひとつの大きなテーマは節電です。当社でもVMware製品をご利用中のお客様向けに、仮想化を活かした節電手法や、計画停電に対応するための仮想環境の適切なシャットダウン方法などを震災後からご案内しています。
以前から当社では仮想化のメリットとして、サーバ統合によるコスト削減や節電といったメッセージを発信し続けてきましたが、改めて、そうした取り組み強めています。しかし節電よりも災害復旧の方がキーワードとして注目度が高いと感じています。最近では事業継続の強化に役立つデスクトップの仮想化についての引き合いが特に増えています。
――災害復旧対策が急務となったことで、仮想化技術の使われ方にも変化はあったのでしょうか。
森田氏
現在、VMware製品をご利用中のエンドユーザーは日本で6000社を超えており、今まで部分的・限定的だった使い方を全社へ展開するといった場合も多くなってきました。VMware製品をお使いのお客様が、災害対策として利用拡大を検討されるケースもあります。
仮想化の第一歩はサーバの統合です。サーバ統合が、より進んだ災害復旧ソリューションの導入の土台となり、最終的にはプライベートクラウドの構築へ進んでいきます。こうしたステップを経て、多くのお客様が災害に強いシステムを構築できるよう、お手伝いしていきたいと思います。
当社ではお客様のクラウドコンピューティング活用を実現するために、様々なご提案をしております。お客様が、画一的なクラウドサービスに業務を合わせるのではなく、ご自身のニーズに応じて柔軟に利用できる最適なクラウドを実現するという意味の「Your Cloud」をビジョンとして掲げ、お客様に安心してクラウドコンピューティングの道を歩んでいただくために、さまざまな製品やサービスを提供しております。まだまだ日本のお客様の多くはハードウェアを自前で購入し、メンテナンスに多大な労力をかけていますが、IT部門は自社に戦略的価値を提供する「IT as a Service」を目指すことが重要だと考えます。そうしたなか、クラウドコンピューティングの実現のためには柔軟かつ堅牢なセキュリティツールが非常に重要な位置にあると考えています。
――仮想化環境・クラウド環境でのセキュリティとは、具体的にはどのようなものなのでしょうか。
森田氏
2つの面があります。仮想化製品自体のセキュリティと、仮想化環境上で稼働しているゲストの仮想マシンのセキュリティです。VMware仮想化環境ではそれぞれの仮想マシンの独立性は強固に保たれており、一方から他方の仮想マシンのメモリが見えるといったことはありません。またVMware vSphereはそのモジュールの整合性や、起動するディスクの整合性を保つ仕組みが組み込まれています。当社では第三者機関である「Common Criteria(コンピュータセキュリティのための国際規格)」の認定を受け、強固なセキュリティを維持・向上しています。
そしてゲストの仮想マシンのセキュリティについての取り組みですが、VMwareのテクノロジーパートナー企業にAPIを公開し、仮想化環境に適したアンチウイルスなどセキュリティ製品の開発をしていただいいます。パートナー企業と共同で、より強固なセキュリティソリューションを提供できるようにしています。
――Direction2011参画の理由をお聞かせください。
森田氏
Direction2011の発起人企業であるトレンドマイクロは、当社にとってグローバルテクノロジーアライアンスパートナーでもあります。当社は過去のDirectionにブース出展やセッションの講演で参加してきました。
今年はセッションやブースでVMware製品の最新情報を紹介していきますし、エンドユーザーやパートナー企業とのコミュニケーションをより積極的に高めていく場にしたいと思います。
――Direction2011での目玉の企画は何でしょうか。
森田氏
当社では多くのセッションやブースで仮想化とセキュリティに関する最新情報をご提供する予定です。マルチコア化が進んだ最新の環境では1台のサーバに100台の仮想デスクトップを稼働させることも容易に実現できるようになりました。この場合アンチウイルスを100台の仮想デスクトップに対して一斉に行うのは、効率が悪くシステム全体の負荷の急増にもつながりかねません。そうした効率の低下を防ぐ最新の技術や製品をご紹介したいと思います。他にもデスクトップ仮想化による消費電力の削減や、災害対策に有効なデータ保護などのソリューションのお話もできるかもしれません。
またクラウドコンピューティングを中心にVMwareの方向性やビジョンについて、今後どのような製品群を提供するかについてもお話したいと思います。
――最後に、来場予定者にメッセージをお願いします。
森田氏
Direction2011はオープンなイベントを目指していますので、様々な業種から、様々なエンドユーザー様が参加できるイベントになると思います。
Direction2011が目指しているもうひとつのテーマは国際化です。アジア最大のセキュリティカンファレンスになることを目標としており、技術情報や事例を共有することで、国際化につながると思います。日本がこうした国際化を積極的にリードしていくことはとても重要なことで、Direction2011はアジア全域を巻き込む「日本発・日本初」の意義あるイベントにしていきたいと考えています。ぜひご参加いただければと思います。
――ありがとうございました。
(2011/07/01公開)