近年、システム環境構築の迅速化を目的にアプリケーション開発者の間で普及が進む軽量コンテナ技術「Docker」。その商用版として「Docker Enterprise Edition」が登場したことで、企業が安心して利用できる素地が整ったと言える。残る問題は、Dockerの活用に適したITインフラをいかにして整えるかだ。2017年10月に朝日インタラクティブが開催したセミナー「ZDNet Japan 攻めのITセミナー─“Docker”は攻めの一手になり得るか?」において、日本ヒューレット・パッカードの2人のエバンジェリストが企業ITインフラ改善のためのDocker活用法を提示した。
必要なものだけを動かすから極めて軽量──サーバ仮想化技術に対するDockerの優位性
1台のサーバ・マシン上で複数のOSを実行する用途において、これまではサーバ仮想化技術が広く使われてきた。物理サーバ上でVM(Virtual Machine)と呼ばれる仮想的なハードウェアを複数起動できるサーバ仮想化技術は、1台の物理サーバを複数の用途で利用することを可能にする。これにより、ハードウェア・リソースの有効活用を図れることから、さまざまな領域で使われてきた。
日本ヒューレット・パッカード オープンソース・Linuxテクノロジーエバンジェリストの古賀政純氏
現在、このサーバ仮想化技術に代わる新たな仮想化技術として普及が進んでいるのがコンテナ技術であり、その代表的なプロダクトとしてオープンソースで提供されているのが「Docker」だ。日本ヒューレット・パッカード HPE認定オープンソース・Linuxテクノロジーエバンジェリストの古賀政純氏は、Dockerの特徴を次のように説明する。
「従来のサーバ仮想化技術は少なからぬオーバーヘッドがあり、ゲームや3Dレンダリング、ビッグデータ処理などには適していませんでした。それに対して、Dockerはオーバーヘッドが少なく、性能劣化を気にすることなく複数OS環境を実現できます。集約率の高さも大きな特徴であり、1つ1つのVM上でOSが起動するサーバ仮想化とは異なり、Dockerでは目的のアプリケーションだけを動かせます。だから軽量なのです」