企業の情報戦略を担うCIOや経営層にとって、社内外のデータを効率的に管理し、経営や業務の革新に活用することは常に最優先のミッションと言える。特に、SNSやIoTなどの普及によって、データが多様化し肥大化している現在、データ活用に膨大な投資を行っているにもかかわらず、それに見合った成果を得られていないと感じるCIOも少なくない。IBMでは、そうしたCIOに対して、適切なデータを安全に、使いやすい状態で提供できる、ガバナンスが効いたデータレイクを構築することによって、だれでも簡単に、必要なデータを的確に分析・活用できる新たなデータ活用のアプローチを提唱している。こうしたAnalytics基盤をPaaS型クラウドサービスのBluemix上で実現する「Watson Data Platform」が国内でも今期中に提供開始される予定だ。
4月27~28日に開催された「IBM Watson Summit 2017」では、日本IBMの執行役員でアナリティクス事業部長を務める三浦美穂氏が、「コグニティブなデータレイクでビジネスが変わる」と題して講演。日本のCIOに対して、「IBM Analytics」で実現するデータ活用のビジョンとデータレイクの新たなアプローチを提示するとともに、それを実現するテクノロジーやサービスを紹介した。
CIOが抱えるデータ活用の課題を解決する
IBM Analyticsが目指すビジョンとは
現在、国内の多くの企業が抱えるデータ活用の課題とは何か。これまで企業のCIOの多くは、業務プロセスの改革に向けて大規模データベースやデータ・ウェアハウスを構築したり、非構造化データを含めてすべてのデータを集約化するためにHadoop環境を構築したり、収集したデータを分析するために、BI(Business Intelligence)システムを構築したりするなど、データを整備して活用するために数多くの人材と膨大なコストを投入してきた。
しかし、スマートフォンやSNSの利用が進み、IoTの普及が本格化するなか、企業で扱うデータは多様化すると同時に肥大化を続けビッグデータ化しつつあり、国内のCIOからは、これまで構築してきたシステムでは、こうしたデータを有効に管理し活用することはできないという声が聞こえてくる。また、システムを改修してデータを経営や事業に活用したいと考えても、ITコストのさらなる増加を心配して積極的な投資ができないという事情もある。
三浦氏は、データ活用にかかわる課題について、「企業は多様なデータを蓄えたいと考えるが、かつてのようにすべてのデータを物理的にデータ・ウェアハウスにまとめるというやり方では、ストレージの容量が不足し、運用も大変で処理も遅くなってしまう。また、データの重複や欠損が多く、完全なデータとして活用できない。そもそもどんなデータがどこにあるのかわらないという問題も出ている」と指摘する。
データ分析の領域においても、国内のCIOは常に頭の痛い問題を抱えている。それは、データサイエンスや統計学に精通した専門家が特に国内で不足していることだ。たとえ活用できるデータを整備したとしても、それを適切に解析できる人材がいなければ、現場の業務部門が知りたい分析結果得ることはできない。Watsonなどが提供する機械学習などのAI技術を使ったサービスの活用はまさに不可欠な取り組みと言えるだろう。
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