企業と消費者に恩恵をもたらすクラウド・ベースのサービスが急増し、企業においては複数のクラウドで業務を行うマルチクラウド環境が当たり前になっています。IBMがグローバルで実施した調査では、85%の企業が既にマルチクラウド環境を利用していることが明らかになりました。しかし複数のクラウドが調和した理想的な環境が実現できているとはいえず、多くの課題を抱えていることも浮き彫りになっています。クラウドを調和させる必要性、あるべきマルチクラウドを実現するためのロードマップを解説します。
マルチクラウドの現状と課題
マルチクラウドのアーキテクチャーは、オーケストラの演奏者と楽器が一体となるシンフォニーのように、調和の取れた状態が理想的です。パブリック、プライベート、ハイブリッドといったクラウドの適切なポートフォリオを作成し、クラウド以外のIT インフラと統合しなければなりません。
2018年、IBMは20カ国19 業種に及ぶ1,106名の企業幹部を対象に、マルチクラウド管理の現状と将来の計画についての調査を行いました。その結果、85%の企業が既にマルチクラウド環境を利用しており、2021年までに利用していると予測する企業は98%に上ることが判明しました。
ところが、圧倒的多数の企業がマルチクラウド・アーキテクチャーで業務を行っているにもかかわらず、オーケストレーションされた環境の管理方法を理解している企業はごく一部にとどまっており、現時点で戦略的にマルチクラウド管理が整備できている企業は41%に限られているのが現状です。
また、マルチクラウド環境を運用するための手順やツールを整備している企業は38%となっています。例えばワークロードの割り振りが行えるマルチクラウド・オーケストレーターやその他マルチクラウド管理プラットフォームを保有している企業は30%に過ぎません。
マルチクラウドを調和させるメリット
調査では59%の企業が、クラウド導入によって既に事実上のマルチクラウド環境が生じていると回答しています。そして多くの企業幹部たちはビジネス上重要な「戦略上」、「事業運営」、「インフラストラクチャー」、それぞれを推進する局面において、特にコスト削減が重要だと考えていることが明らかになっています。
もちろんコストだけがメリットではありません。カスタマー・エクスペリエンスの向上、ガバナンス、ベンダー囲い込みの回避なども見逃せないメリットです。
ここでマルチクラウドのオーケストレーションを実現した2社の事例をご紹介しましょう。
Swiss Re社:1カ月あたり250 日分の労働時間を節減
保険と保険関連商品のグローバルホールセール・プロバイダーであるスイスのSwiss Re 社は、サイロの排除と手動プロセスの自動化を目的にクラウド・オーケストレーション・ソリューションを導入しました。このプラットフォームは1カ月に45,000件のプロセスを実行し、IT 運用チームの作業日数は250日相当が節減されました。
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