IBMが提唱する次世代ITインフラのコンセプト「Enterprise Hybrid IT」。ビジネスの継続的な成長を支えるというそのコンセプトの下で企業のシステムやネットワーク、セキュリティーはどう変わるのか。日本IBM グローバル・テクノロジー・サービス事業本部の技術理事 山下克司氏にお話をうかがった。
エンタープライズ IT を構成する"3 つ" のシステムと、その連携
――Enterprise Hybrid ITは、System of Record(SoR)、System of Engagement(SoE)、System of Insight(SoI)の3つのシステムで構成されますが、この3つはどのように連携するのでしょう。
日本IBM
グローバル・テクノロジー・サービス事業本部
ITSデリバリー
技術理事
ディスティングイッシュド・エンジニア
山下克司氏
山下氏:SoRは従来型の業務システム、SoEは新しい顧客接点システム、そして、それぞれのシステムから得られたデータを元に新しい洞察を生み出すのがSoIです。このうち、SoEについて一般企業の方にお話すると、「うちは消費者との接点はないから関係ない」と言う方がおられます。しかし、SoEは、BtoCビジネスのためだけのものではありません。まずはこの誤解を解くところからお話しましょう。
前提となるのは、従来型の業務システムであるSoRの硬直化という問題です。ウォーターフォール型で開発される業務システムは、ユーザー個別の要求を満たすために、多数の項目が複雑に絡み合う巨大でモノリシックなシステムになりがちです。開発の各段階でユーザー・テストは行われるものの、本番稼働後ユーザーからのフィードバックを継続的に取り入れる仕組みはありません。運用を始めてしまうと、多少使い勝手が悪くても「大きすぎていじれない」システムになってしまうのです。
一方、SoEの領域で先進のWeb企業は、サービスが正しく使われているかどうかを計測して改善につなげる仕組みを持っています。アプリケーションに組み込まれたJavaScriptなどの技術を用いてユーザーが画面のどこに触れたのかを収集し、迷わず操作できているか、どこに関心を持っているかを調べているのです。
こうしたユーザーの動きからフィードバックを得る仕組みは、業務システムでも有効です。例えば、システムがどのタイミングで使われているかを調べてみる。日々の活動に合わせて入力するはずのものが、週末や月末にまとめて入力されているようであれば、社員はいやいや使わされている可能性がある。業務効率の改善という本来の目的から外れて、単なる管理強化に陥っている可能性があります。このように、SoEの手法を取り入れることで、SoRが正しく動いているかどうかを、プロセスマネジメントの視点から検証することが可能になります。
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――SoEはどのようなかたちで企業活動に採用されるのでしょう。
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