コミュニティの入り口としての役割と高レベルな競技の両立を
Q:2020年の取り組みを踏まえ、今後、SECCONをどんなCTFにしていきたいと考えていますか?
前田:何が求められるかは時代によって変わっていくでしょうが、やっぱりいい問題、解いていて楽しい問題を作っていきたいです。簡単だからつまらないというのではなく、簡単だけれども解いていて楽しい問題を作っていきたいですね。楽しく解ける問題を作った結果、難しい問題にチャレンジできるよう誘導していくことが大事だと思っています。
野村:個人的な思いになりますが、ほかのデベロッパーコミュニティに比べると、セキュリティ分野のコミュニティってまだまだ未成熟なところがあると思っています。かつてBlack Hatのキーノートで、セキュリティという分野が注目を集めるようになったからこそ、「もっと大人になろう」という呼びかけがありましたが、まさにそんな感じですね。
たとえばSECCONの運営一つとっても、知り合い同士、友達どうしで成り立っているのが現状です。けれど、もっともっと、僕たちがまったく知らないけれども面白いアイデアを持っていたり、こんなことをやってみたいという思いを持っている人たちにリーチして、うまくコミュニティを形成していかなければいけないと思っています。そういう新しい人達に発表者として来てもらって、その人の周囲にある新しいコミュニティごとSECCONに来てもらうといった形で巻き込んでいけないかな、といったアイデアを考えています。やはり、局所に閉じたコミュニティは長く続かないと思っているので……。なので、SECCONというコミュニティがよりオープンになることで、少しずつ変わっていければなというのが個人的な思いです。
前田:確かに、セキュリティ業界は個人と個人のつながりで成り立っていることが多くて、閉鎖的だと言われますね。何となくセキュリティに興味を持っていても、外から入ってくるのがめちゃめちゃ難しくて……。そういう人たちがコミュニティに参加できる空気を作ることを、SECCONの方針として考えています。
Twitterなどを見ると、具体的に何がどうというわけではないけれど、セキュリティに興味があります、といっている学生さんたちがけっこういます。そんな人達がSECCONに来て、セキュリティってどういうことをやっているのかとか、細分化するとどんなテーマがあるのかを知ってさらに興味を持ってもらう、そういう入り口やハブとしての機能を目指せたらいいなって思っています。
Q:やはり、興味を持つ人にどんどん入ってきてもらうのも重要ですよね。
前田:昔のSECCONには、そういうコミュニティへの引き込み的な役割がありましたよね。「CTFっていうのがあるから、知り合いでチームを組んでやってみない?」というきっかけになっていました。ただ、先ほどからお話ししているとおり、世界のCTFのレベルがどんどん先に行っている今、それでは戦えなくなっているのも事実です。CTFをCTFとして成立させると同時に、コミュニティの入り口としての機能も失わず、カバーしていかないといけないなと思います。
野村:RubyやPerl、Node.jsといった開発系のコミュニティって母数がとても大きいですよね。一方、この数年間の変化もあって、CTFをやる人が少なくなっているのかな、というのもあります。CTFを知ってもらい、気に入ったらどんどん続けてもらいたいんですが、それにはやっぱり一緒に取り組むことのできる友達や人との関わりも大事だと思います。
別にCTFじゃなくても、セキュリティや、もっと大きなくくりで技術といった、共通のテーマを持てる知り合いを作れたらいいですよね。AVTOKYOに行くとグループを作って飲みながらいろいろ話している人たちがいますが、SECCONでは始めて来た人がスッとそういったグループを作れる、そういう感じの場になれるといいなと思います。
前田:まだ具体的なことは何も決まっていませんが、若手の間では、SECCON自体をオープンにしていきたいねって話をしています。長年やってきただけに、SECCONにはいろんなイメージがこびりついていますが、それを少しずつでも払拭し、変えていけないかなって。ただ、稲作と同じで一年に一回しかできないイベントなので、いかにうまく改善しながらやっていくかは課題だと思っています。
Q:セキュリティをよく知らない人にとっての入り口と世界最高峰の技術の力比べ、両立するのは難しそうですが……。
前田:でもたとえばDEFCONってそういう場になっていますよね。いろんなお祭りをわいわいやりつつ、そのすぐ横で、世界トップレベルの人達がずーっと戦っています。そういう姿を見て、「こういう世界もあるんだ」って驚きながら、自分が興味を持ったブースに行く……そういうノリでいいと思うんですよね。
野村:個人的には、DEFCONよりももっと先を目指さないと、と思っています。興味を持ってやってきた人に「じゃ、ここで一緒にやっていこうよ」と声をかけられるような、そんな場になるとうれしいですね。