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マイクロソフトがエンジニアを大切にする理由、
「影のヒーロー」にスポットライト
日本マイクロソフト
パートナー事業部技術統括本部長
伊藤信博氏
マイクロソフトのビジネスにおいて、パートナー企業の存在はとても重要だ。ユーザーに対し、Microsoftテクノロジーの導入支援や運用支援だけでなく、パートナーが持つ専門知識を生かしたソリューションを提供している。それにより、ユーザーの課題を解決し、デジタルトランスフォーメーション(DX)やAI トランスフォーメーション(AX)の推進をサポートしている。そこで大きな役割を果たしているのが、パートナーに所属するエンジニアである。
しかし、パートナー企業のエンジニアが、卓越した技術力でユーザーに新たな価値をもたらしたとしても、個人として広く紹介される機会は少ない。このため、日本マイクロソフトは2023年、新たなアワード「Microsoft Top Partner Engineer Award」(TPEアワード)を設立した。これは、ユーザーの変革の「影のヒーロー」であるパートナーのエンジニアにスポットライトを当てる取り組みだ。
同アワードを推進する日本マイクロソフト パートナー事業部技術統括本部長の伊藤信博氏に、TPEアワードの狙いとAIを中核とした今後のマイクロソフトの取り組みの方向性を聞いた。
パートナー企業の強みを生かしたソリューションを世界の78万を超える組織に提供
マイクロソフトのビジネスにとって、パートナーが占める重要性は大きいと思います。最初に、その背景と最近の動きについて教えてください。
伊藤氏マイクロソフトのウェブサイトに掲載している多数の事例が示す通り、マイクロソフトのビジネスは、パートナー様がご提供下さるソリューションやサービスがあって成り立っているものがほとんどです。ポイントは、お客様の課題をパートナー様もマイクロソフトも正しく理解し、同じ目線でスタートすることです。それによって初めて、最適なソリューションやサービスが何かが見えてくるからです。
マイクロソフトのパートナー企業は全世界で40万社を超えています。なぜそれほど必要かと言えば、少なくとも120を超える国と地域に、マイクロソフト製品のユーザーである組織が78万以上存在しているからです。その組織をしっかりとお守りし、DXやAXのご支援をするために40万社を超えるパートナー企業と連携する必要があります。
2022年7月には、IT業界でも先駆的な取り組みとして、「Chief Partner Officer」(CPO)という役職を新設しました。日本では、私が所属しているパートナー事業本部が中心となって、パートナー様との中長期での連携を強めいていくことを表明しておりますが、CPOの役割や日本を含めた国と地域におけるパートナー様向けの専任部門の設立も含めて、マイクロソフトがいかにパートナー様を重視しているかをご理解いただけるかと思います。
クラウドソリューションはもちろん、ゲーミングなどのコンシューマー領域、金融、医療など業界特化のソリューションやサービスを扱うパートナー様も存在します。その幅の広さによって、お客様がイノベーションの壁を越える支援ができるかもしれません。その辺りも、マイクロソフトの強みであると思います。
マイクロソフトにとってのパートナーエンジニアの存在
マイクロソフトにとってのパートナーの重要性が分かりました。数字で見るとさらに迫力が伝わってきます。それぞれのパートナーにはエンジニアが在籍して、マイクロソフト事業に関わり重要な役割を担っていると思います。大前提として、マイクロソフトがパートナーのエンジニアをどのようにとらえているかを教えてください。
伊藤氏マイクロソフトにとって、エンジニアの皆様が非常に大切であることは言うまでもありません。さらに、新たな動きも出てきています。多くの企業がデータやAIの活用をビジネスの中核として考えるように変化しつつあり、本気で取り組みを始めています。
そのため、従来のエンジニアに加えて、元々は別の職種だった人も、エンジニアと同じような仕事をするようになってきています。エンジニアの方々と話をしていると、そうした環境の変化の中で、自分がどこに進むべきか、新しいスキルや知識を身に付けて時代の変化に対応するリスキリングなどのキーワードが出る中で、何を見直せばいいのか、どこを学び足したらいいのかで迷っているという印象もあります。
そこでマイクロソフトは、パートナー企業の中で活躍するエンジニアの方々を対象にした表彰制度としてTPEアワードを新設しました。「Azure」「Modern Work」「Business Applications」「Security」 の 4つのカテゴリにおいて、案件の実績や先進性、マイクロソフトテクノロジーの社内普及活動などを評価させていただき、感謝の意を込めてお贈りするものです。このアワードを企画した当初は、まだ生成AIがDXの中核とは言えない状況でした。しかし2023年に入り全てのマイクロソフト製品にAIが実装される事が発表されました。これにより、エンジニアはもちろん、お客様、パートナー様の働き方が一変すると言われるようになっています。
私自身の話ですが、マイクロソフトに20数年在籍しておりますが、途中、4年間ほど事業会社でCDO(最高デジタル責任者)を務めた経験があります。そのため、事業会社側のエンジニアの考え方も理解できます。マイクロソフトに戻り、改めて考えると、AIやDXの登場によって、パートナーのエンジニアやその先にいるユーザー企業のエンジニアに向けて話すべき領域やトーンが明らかに変わってきたと強く感じます。
実案件での活躍に注目
マイクロソフトにとってのパートナーエンジニアの重要性がよく分かりました。今回、TPEアワードを運営するにあたって、エンジニアのどのようなところに注目されたのでしょうか。
伊藤氏このアワードの特徴は、パートナー企業の中のエンジニアに受賞してもらうことにあるため、実案件においてエンジニアの皆様がもたらした先進性と実績を重視して審査しています。コミュニティ活動やイベント登壇よりも、実案件での活躍に注目しているというのがポイントです。
これまでも、事例などでユーザー企業が得たすばらしい実績を紹介することがたくさんありましたが、ユーザー企業のご担当者などがそれについて話をするのが一般的です。一方で、そのユーザー企業にソリューションやサービスをご提供されたパートナー企業の素晴らしいエンジニアの皆様が確実に存在している事も事実です。そうした事例紹介のような表側には登場していなかった素晴らしいエンジニアの皆様にスポットライトを当て、多くの方々に知っていただきたいと思っています。
エンジニアはこれからの時代をどう迎えるべきか
AIやDXがホットな話題である一方で、俯瞰すると、エンジニアが直面していることとして、基幹システムの構築などの従来型の業務では、最初から構築すべきものの完成形が初めから見えている一方で、AIやDXではそのプロセスもゴールも見えにくいという特徴があります。そうした不透明性さにエンジニアが迷うという面もあるでしょうか。
伊藤氏CIOやCDO、CTOといった経営層に近いエンジニアのリーダーの皆様は、経営会議などで、売上や利益の最大化施策、コスト削減や生産性向上施策等、経営課題を解決する為の議論に日々接しているため経営視点を持ってIT施策を考えられることが多いです。しかし、現場に近くなると、そうした経営視点から遠ざかってしまい、自分が属している会社が直面している経営状況や経営課題が何か、見えにくくなってしまうケースがあります。結果として、生成AIなど次々と登場する新たな技術を活用する際に、どんな課題解決から優先すべきかがわかりにくくなってしまっているように見える事があります。
今年9月末、エンジニアの今後の心構えとして、「生成AI時代にエンジニアには何が求められるか」をテーマに、弊社のリーダーの一人から、TPEアワードを受賞された皆様にお話させていただく機会がありました。そこで共感を得られたのが、エンジニアを3つのカテゴリに分けてそれぞれに求められる心構えは何かというものでした。1つはパートナー企業の中のエンジニア、2つ目はユーザー企業の中のエンジニア、3つ目は経営層に近いエンジニアです。
パートナー企業の中のエンジニアは、新たな技術トレンドを取り入れながら、実務を通じてお客様の課題解決に貢献できることが重要です。一方、ユーザー企業の中のエンジニアは、売り上げの最大化、利益の確保、コストを削減などの自社の経営視点を持ち、ビジネスとテクノロジーの橋渡しが求められます。そして、そうした結果を伝承できる事が重要になってきます。最後に、経営層に近いエンジニアは、より深く技術に特化していく事と同時に、経営視点を持ち、経営会議でもわかりやすく解説ができるスキルが必要になってきます。
これは一例に過ぎませんが、こうした心構えを持つだけでも、新たな技術が登場しても、身の回りの状況は思ったほど複雑にならないと考えます。生成AIなどの技術の流れを見ながら、アワードの4つのカテゴリの中で、自社ができていること、今後追加してできるようにしていくべきことなども見えてくるでしょう。
実際に、今回アワードを受賞されているエンジニアの皆様の中には、セキュリティに強みを持っていた方が現在はインフラを担当していたり、今後AIの実装も検討されていたりと、様々な展開をされていることを耳にしています。そうした方々がコミュニティ活動における情報交換を通じて、エンジニアとしての新たな方向性を創造下さるものと期待しています。
マイクロソフトはこれから何を追求する?
改めて、マイクロソフトとしてパートナーやユーザーのエンジニアと一緒に何を追求していきたいとお考えでしょうか?
伊藤氏ずばり、AIです。40万社を超えるパートナーと一緒に、1社でも多くの組織の課題解決をAIで支援したいと考えています。Azureは「AIのためのクラウド」として益々重要な位置づけになってまいりますし、多くのお客様にご活用いただいているMicrosoft 365やBusiness Application、SecurityソリューションにもAIの要素が含まれ、これまでの取り組みを一変していきます。そうしたAIを利用することで、どんな時間が短縮できて、捻出した時間を使ってどんなスキルを獲得すべきかなど、しっかりとエンジニアの皆様と対話していきたいと考えています。
Azure上で生成AIを利用する「Azure OpenAI Service」だけでも、既に100以上のパートナー様が、Azure OpenAI Serviceのリファレンスアーキテクチャに賛同下さっています。かみ砕いて言うと、Azure OpenAI Serviceを使った設計図、技術的なガイドラインや設計パターンを、どんどん公開すると賛同して下さっているわけです。それが既に100社を超えている事実だけでも、この新しいAIが持つ可能性と世の中のスピード感をご理解いただけるのではと考えています。
いずれにしても、重要なのは、新しいテクノロジーをエンジニアの皆様にワクワクしながら楽しんでもらうことです。その結果をこのコミュニティで情報発信することで、それが事業会社や様々なタイプのエンジニアの皆様にも波及し、ビジネスのさまざまな場面での課題解決につなげるようにしていきたいです。