たった1年でここまで進化!
Azure VMware Solution のどこがスゴくなったのか

オンプレミスの遺産を生かしつつ、モダンなクラウド環境を積極的に活用したいが、運用負荷の肥大化は避けたい ── 二律背反的なニーズに応えるべく2020年に登場したのが「Azure VMware Solution(AVS)」である。既存のVMware環境をそのままAzureへ載せて、パブリッククラウドのメリットを享受できるサービスだ。サービスインからわずか1年で想像以上に進化したAVSの注目アップデートについて解説しよう。

ハイブリッドクラウド時代の企業IT
すばやく進化させるためのAVS

 企業ITが本格的なハイブリッドクラウドの時代を迎えている。既存のオンプレミスシステムを生かしつつ、新しいモダンなITをパブリッククラウドによって実現する。これまで培ってきたデータやアプリケーションを捨てることなく、デジタル変革(DX)にふさわしい柔軟性・拡張性を備えたシステムへ進化させたい。

 IT担当者の真価が問われるところであるが、オンプレミス環境とクラウド環境の双方をもれなく運用し、安定的に稼働さfせるには高度なスキルと大きな労力を必要とする。すでに2つの環境を運用していくのに四苦八苦している管理者も少なくないだろう。

 「Azure VMware Solution」(AVS)は、この大きな問題のソリューションとして国内では2020年12月に登場した。多くの企業で利用されているVMware環境を、Microsoft Azureのマネージドサービスとして提供するサービスである。オンプレミスのVMware仮想化基盤を、ほとんど改修することなくAzureへ移行できる。

 すでに多くのユーザーがAVSを活用し、既存資産を捨てることなく、最新のクラウド技術の恩恵を受けている。Azureの各種サービスとAVSとを連携する機能も提供されており、DXの実現を強力にサポートする面を高く評価する声も多い。

 一方で、ハードウェアの保守切れやソフトウェアのサポート満了、データセンターの縮小など、期限が迫る中で短期間にパブリッククラウドへの移行を果たし、将来的なクラウドネイティブな環境への準備を整えているユーザーもいる。さまざまな企業にとって、理想的な“ハイブリッド”環境を実現できるサービスと言える。

 AVSは新しいサービスであるにも関わらず、私たちの想像以上の進化を遂げている。その多くは、ユーザー企業の声を反映したものだ。もし機能やサービスな不満があって利用を躊躇していたとしても、この1年の進化によって考えが変わるかもしれない。機能強化や品質改善は数え切れないほどだが、大きな10+1のアップデートについては、「VMware Japan Blog|Azure VMware Solution 10大アップデート【前編】【後編】」にまとめられている。本稿では、そのうち特に重要な4つの項目について詳しく紹介しよう。

西日本リージョン開設!
世界展開も急ピッチで進行

 これまで日本のAVSは東日本リージョンのみで提供されていたが、2021年11月、西日本リージョンでも利用できるようになった。マイクロソフトによれば、日本ユーザーの最も強い要望の1つだったという。

 AVSは2020年10月、世界4リージョンでサービスをスタートした。西日本リージョンが加わったことで、世界19のリージョンで利用できるようになった。VMwareを活用したプライベートクラウド環境を、世界で最も広範に展開しているサービスである。直近ではフランスでサービス提供を開始していて、今後も香港やスイスなどでのローンチが計画されており、ますますグローバルに利用できるサービスとなりそうだ。

 「ニーズが高いのは、やはりDRですね。東日本や九州などに設置したオンプレミスシステムや東日本リージョンに設置したAVS環境のバックアップサイトとしての期待が大きいようです。金融機関をはじめとしたITの重要度が高い業種では、“BCPの一環としてシステムの災害対策 (DR) サイトは不可欠”という考えが浸透しています。AVSの2リージョン展開を心待ちにしていたユーザーも少なくありません」と、マイクロソフト コーポレーション Global Black Belt - Asia, Adv. Migration Specialistの前島鷹賢氏は述べる。もちろん、すでにAzure西日本リージョンを利用しているユーザーにとっても、“同一リージョン内のためトラフィック料金が発生しない”、“既存のExpressRouteを流用できる”などメリットは大きい。

 今後、企業のDX──デジタルビジネスへの転換が進めば、“物理的なマルチクラウド化”もあたりまえになっていくかもしれない。AVSであれば国内だけでも2リージョンあり、さらに世界へ広がっていく計画である。より安定的な環境を安心して利用することができ、また企業のグローバル展開を支援するサービスとしても有用だ。

DXで爆発的にデータ増大
ストレージだけ拡張したい

 AVSは、仮想ストレージ基盤の「VMware vSAN」を標準で利用でき、暗号化・圧縮・ストレージポリシーなどの機能を利用できる。AVSのハードウェア環境には、ノードあたり15.36TBのオールフラッシュストレージと3.2TBのNVMeキャッシュが搭載されており、高いパフォーマンスと信頼性を発揮する。ノードを追加するだけで、シンプルにストレージ容量を拡張できるというメリットもある。

 しかし、ワークロードによっては、必要とするデータ容量が非常に大きいケースがある。vSANの場合、CPUやメモリなどのコンピューティングリソースに余裕があったとしても、ストレージを拡張するにはノードを増設しなければならず、高コストになってしまうことが課題だった。

 この問題を解決するため、ブロックストレージ「Azure Disk Storage」の新機能として「Disk Pool」が開発された。AzureネイティブストレージのiSCSIターゲットを公開し、AVSのデータストア領域として利用できるようにする仕組みである。端的に言えば、AVSのノードを拡張することなく、Azure Disk Storageの容量を追加できるということだ。

 ほかにもマイクロソフトでは、Azure NetApp FilesをAVSにNFSでマウントする連携機能も開発中だ。本格的なDXが進めば、これまで以上に大量のデータが生まれ、それらをすばやく活用していくことが求められるようになる。これらの新しいストレージ拡張機能は、将来に備えるためにも期待したい。

VPNを利用して低コストに移行
HCX over VPNに対応

 AVSをはじめて利用するユーザーが最も懸念するのは、既存の環境をどのようにして移行すればよいかという点である。そこでAVSでは、アプリケーション移行ツールとして「VMware HCX」が用意されている。HCXを用いれば、オンプレミスの本番環境を停止させることなく、必要であればIPアドレスすら変えずに、AVSへ移行することが可能である。

 これまではHCXでAVSへ移行する場合、「ExpressRoute」のみが正式にサポートされており、VPNはサポート対象外であった。小さな環境でも高度なネットワーク回線が必要となり、スモールスタートのハードルとなっていたことは否めない。最新のHCX 4.2においてこの要件が緩和され、「HCX over VPN」が正式にサポート対象となった。

 「例えば、メインサイトはExpressRouteを利用しつつ、小規模な海外拠点はVPNで移行コストを抑えたいというニーズに応えられるようになりました。本番環境はExpressRouteで接続し、検証環境はVPNで接続するという使い分けで、段階的な移行を効率化する手法も考えられます。2021年10月にはHCX Enterprise Editionの提供も始まり、Replication Assisted vMotionやMobility Optimized Networkingなどの高度なサービスも利用できるようになりました。AVSへの移行が、いっそうシンプルかつ最適化されたものになります」(前島氏)

マルチクラウド環境も
Azureポータルから統合管理へ

 企業ITは、ハイブリッドクラウドそしてマルチクラウドへの時代にさしかかっている。すでに複数のクラウドサービスを使いこなそうとしている組織も少なくないだろう。しかし冒頭で述べたように、多数の異なる環境を運用することは困難で、一元的に効率よく管理するためのソリューションが必要となる。

 マイクロソフトもマルチクラウドを前提としたサービスの開発・強化に努めており、その1つが「Azure Arc」である。AzureおよびAzure以外のリソースを統合的に管理できるようにするツールで、環境を問わず一貫した操作性が実現される。この機能拡張として、AVS やオンプレミスの VMware vSphere プライベートクラウドを対象とする「Azure Arc for VMware vSphere」が開発中である。

 「対象となるVMware環境に仮想アプライアンスを導入するだけで、AVS もオンプレミスのプライベートクラウドも、Azureのポータルから一元的に管理できるようになります。本機能はまだ開発段階ですが、Azure IaaS と同様に、たとえば Azure Monitor による監視や、Azure Policy の適用によるセキュリティやコンプライアンスの強化、Azure Backup でのワンクリックでの仮想マシンのバックアップ等、Azure の広範囲なクラウドサービスの連携がシームレスに実現できるようになります。今後の更なるサービス強化にご期待いただければ幸いです。」(前島氏)

 このほかにもさまざまなアップデートが実施されている。例えば、2021年11月には、シトリックスの仮想アプリケーション/仮想デスクトップをAVS上でネイティブに実行できる機能のサポートが開始された。VMware vSphereベースのCitrix環境であれば、既存のアーキテクチャや運用を大きく変えずにクラウド化できるというわけだ。

 また冒頭で述べたように、システムのサポート終了を間近に控えたレガシーなシステムを延命するために、AVSを活用したいというニーズは多い。マイクロソフトでもこの要望が多いことを重視しており、「拡張セキュリティ更新プログラム(ESU)」をAzureユーザー向けに無償で提供しており、その一部は期間が延長されることになった。

 具体的には、SQL Server 2012|R2のサポート終了が2022年7月12日、Windows Server 2012|R2のESU終了が2023年1月10日に迫っているが、それぞれ2025年7月12日および2027年1月10日までESUを無償提供することが決定された。さらに、SQL Server 2008|R2およびWindows Server 2008|R2のESUも終了時期が迫っているが、これもそれぞれ1年間延長されることになった。

 Azure VMware Solutionは、企業ITを各社のニーズに合わせつつ、モダンなシステムへと進化させるための解決策となる。近年の非常に動的なビジネス環境において、AVSそのものも活発に強化されていき、いっそう多様なニーズへ応えるサービスへと進化していくことだろう。次の1年のアップデートが待ち遠しい。

※2021年12月8日時点の情報になります。

提供:日本マイクロソフト株式会社
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部  掲載内容有効期限:2022年6月30日
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