Azureなら、より少ない投資で、より多くの成果。ESUは無償
コロナ禍や国際紛争、為替変動などにより不安定な経済情勢が続く中、「オンプレミスやクラウドで運用しているシステムのコストを見直したい」「クラウドも含め、抑えられるコストはできるだけ削減したい」という企業が増えている。
また、それと関連して多くの企業を悩ませているのが、2023年10月に迫るWindows Server 2012 Release 2(R2を含む)のサポート終了(EOS)問題だ。同OSで運用してきたシステムを今後も使い続けるのなら、他のOSに移行する必要がある。だが、「単にOSを変えるためだけに手間とコストをかけたくない」「もう少し塩漬けにして、その間にクラウドネイティブなシステムに刷新したい」と考える企業は多いだろう。
このような声を受け、マイクロソフトは現在「Do more with less(より少ない投資で、より大きな成果を)」のスローガンの下、企業がより少ない投資で、より大きな成果をクラウドから得られるように、さまざまな取り組みを進めていると日本マイクロソフトでシニア クラウドソリューションアーキテクト(Hybrid)を務める高添修氏は話す。
「例えば、多くのお客様は、Windows Server 2012のサポート終了後も、拡張セキュリティ更新プログラム(ESU)を利用して最大3年間安全に利用しながら、アプリケーションの更新やモダナイズを考えています。その場合はAzureに移行していただけば、オンプレミスや他のクラウドでは有償となるESUを無償で利用できます」(高添氏)
仮想化基盤の運用管理を効率化し、コストを削減できる可能性もある。Azureには、1つ1つの仮想マシンに対して、稼働監視やバックアップ、セキュリティ、ディザスタリカバリ(DR)、更新管理やインベントリ管理、ポリシーによるアクセス制御など、あらゆる管理機能が用意されている。オンプレミスや他社クラウドの仮想化基盤をAzureに移すだけで、運用のための多くのツールやそれを動かすためのサーバーを削減でき、運用管理の効率性を高めながら運用コストを下げられる可能性があるのだ。
Azure ArcとAzure Stack HCIでクラウドの利点をオンプレミスに拡張
とはいえ、企業が持つシステムの中には、セキュリティや性能などの理由からクラウドに置けないものもある。そのようなシステムをオンプレミスに残しつつ、クラウド上の環境とともに効率的に運用管理することができるシステム基盤がAzure Stack HCIであり、クラウド/オンプレミスの一元管理の実現で鍵となるサービスがハイブリッドクラウド/マルチクラウド管理ツールの「Azure Arc」だ。
Azure Arcを使うことで、オンプレミスで稼働する仮想マシンやコンテナもAzure上で稼働するさまざまなリソース同様に、Azure管理下でモニタリングやポリシー管理、インベントリ管理、更新管理、セキュリティ監視などが行える。
すでにAzure Arcの活用を進める企業もある。その1社が「見える化エンジン」「カスタマーリング」「タレントパレット」などのサービスを展開するプラスアルファ・コンサルティングだ。同社はシステムのクラウド化のためにAzureの活用を進めているが、一部のシステムはコストや手間、費用対効果の面からAzureへの移行は現実的ではないと判断。そこで、Azure Arcを利用して、Azure上のシステムと自社インフラ上のシステムの一元管理を実現しながら、システム環境全体のセキュリティを強化することに成功した。
Azure Stack HCIで仮想化/コンテナ基盤も一元管理
日本マイクロソフト シニア クラウドソリューションアーキテクト(Hybrid) 高添修氏
Azure Stack HCIを使えば、仮想化基盤やKubernetesのコンテナ基盤をAzureのサービスの一部としてオンプレミスで利用することも可能となる。
「オンプレミスの仮想化基盤やコンテナ基盤をAzure Stack HCI の上に移行し、従量課金でご利用いただけます。仮想マシンとして動かすWindows ServerもClient Access License(CAL)込みの従量課金で利用でき、使わなくなったらいつでも契約を停止できます。そして、オンプレミスで動かしつつESUは無償です」(高添氏)
さらにSoftware Assurance(SA)付きWindows Server Datacenterのライセンスがある場合、Azureハイブリッド特典としてAzure Stack HCIやWindows ServerのCAL込みのサブスクリプションライセンスやKubernetes基盤などが無料で提供される。こうした特典をうまく組み合わせれば、極めてコスト効率の高いハイブリッドクラウド基盤を構築できるわけである。
Azure Stack HCI活用支援の各種サービスを提供する日立システムズ
日立システムズ 産業・流通デジタライゼーション事業部 第一デジタライゼーション本部 第二システム部 後藤覚氏
そのAzure Stack HCIの導入で豊富な実績を誇る1社が日立システムズだ。同社は現在、パブリッククラウドとオンプレミスを適材適所で使い分けながらシステム環境とコストを最適化したいと考える企業に向けてAzure Stack HCIの導入を支援していると産業・流通デジタライゼーション事業部の後藤覚氏(第一デジタライゼーション本部 第二システム部)は説明する。
「Azure Stack HCIにより、オンプレミスのHCI環境と、その上で動く仮想マシンなどを、Azureの管理ツールやセキュリティサービスなどを用いてクラウド側から一元管理し、運用管理を効率化して負担を減らすことができます」(後藤氏)
運用管理の負担を極力減らしたいという場合は、日立システムズにリモートオペレーションを委託して障害検知/対応などを任せられるほか、同社のBPOやサービスデスクに対して、システムを利用する顧客からの問い合わせやトラブルへの対応などをアウソトースすることも可能だ。
Azure Stack HCIなら、Windows/Kubernetes環境も割安に実現
後藤氏は、Azure Stack HCIは多くの企業にとって「直近では既存システムの延命、将来的にはアプリケーションのモダナイズ基盤」として最適だと話す。
「Azure Stack HCIではESUが無償で利用できるので、Windows Server 2012で動くオンプレミスのシステムを移行してしばらく延命しながら、Kubernetesなどのコンテナ技術を使ってモダナイズしていくための基盤として最適です。今後はWindows 10/11のマルチセッションに対応した仮想デスクトップサービスであるAzure Virtual Desktopも利用可能になるなど、活用の幅が広範なシステム基盤でもあります」(後藤氏)
実際にある製造業の企業は、利用中のアプリケーションが新しいWindows OSに対応しておらず、Windows Server 2012を継続利用したいと考えていた。パブリッククラウドには置けないアプリケーションだったため、Azure Stack HCIに移行してESUを利用しながらOSの延命を図っているという。
WindowsとKubernetesの環境を割安に利用できることも大きなメリットだ。物理ホストは一括買取のほか、ハードウェアメーカー各社が提供しているサブスクリプションサービスで導入することができる。その上で稼働するAzure Stack HCIは月額課金で使えるほか、SA権付きWindows Server Datacenter Editionのライセンスがあれば無償で利用できる。マイクロソフトならではの特典により、他社のHCIでは必要となるさまざまなライセンス料金が割引きされるため、結果として大幅にコストを削減できるのである。
Azure Stack HCIへの移行支援、運用支援サービスも提供
日立システムズでは、オンプレミスの物理サーバやVMware環境、Hyper-V環境のAzure Stack HCIへの移行支援も行っている。移行後は、Azure Stack HCIのKubernetes基盤や各種のPaaSを利用したアプリケーションのモダナイゼーションも支援している。
また、ハードウェアの運用負担を最小限に抑えたい企業向けに、Azure Stack HCIを自社データセンターで預かって運用する「Azure Stack HCIお助けソリューション」も用意している。同ソリューションでは、主に2つの評価軸でAzure Stack HCIの設置場所を選ぶことができる。1つはクラウドとオンプレミス間のレイテンシーを小さくしたい場合、もう1つはAzure Stack HCIと現場間のレイテンシーを小さくしたい場合だ。
このうちクラウドとオンプレミス間のレイテンシーを小さくしたい場合、日立システムズのクラウドゲートウェイソリューション「Gateway for Business Cloud(GWBC)」を利用できる。「GWBCではパブリッククラウドと結ばれた専用線近くのデータセンターを提供しており、そこにAzure Stack HCI を設置すればクラウドとのレイテンシーを最小限に抑えられます」と後藤氏は話す。
また、Azure Stack HCIと現場間のレイテンシーを小さくしたい場合は、日本各地にある日立システムズのデータセンターを利用可能だという。
クラウドコンシェルジュで企業のクラウド活用を包括的に支援
日立システムズ ビジネスサービス事業部 ビジネスサービス推進本部 クラウドコーディネートセンタ 廣瀬一信氏
このように日立システムズはAzure Stack HCIの活用を支援する多様なサービスを展開しているが、企業によっては同HCIも含めたクラウド活用全般の支援を受けたいという声もあるだろう。そのようなニーズに向けた支援サービスとして、同社は「クラウドコンシェルジュ」を提供している。これは企業のビジネス戦略や既存IT資産に適したクラウド活用を包括的に支援するサービスであり、3つの特徴があるとビジネスサービス推進本部 クラウドコンシェルジュセンターの廣瀬一信氏は話す。
「1つ目は、お客様にとっての活用価値を最大化する道筋に沿い、最初の企画段階からご支援すること。2つ目は、当社が手掛けてきた膨大な事例の中からお客様に最適なケースをご紹介し、長期にわたり取り組みをご支援すること。3つ目が、導入後も次のゴールに向けたさらなる施策で併走させていただく点です」(廣瀬氏)
日立システムズ 研究開発本部 研究開発センタ 貞兼諒介氏
このクラウドコンシェルジュへの相談でも、最近はWindows Server 2012 R2のサポート終了への対応に関するものが増えている。多くの企業はESUを利用し、同OSで動くシステムをしばらく延命させることを望むが、その対応方法として大きく3パターンがあると研究開発本部 研究開発センターの貞兼諒介氏は説明する。
「ESUを購入するパターンのほかに、ESUが無償で利用できるAzure Stack HCI(ハイブリッドクラウド)やAzure(クラウド)に移行するパターンがありますが、当社としてはコストや将来性の面で多くのメリットがある後者の2パターンをお勧めしています」(貞兼氏)
この2パターンのいずれを採る場合も、クラウドコンシェルジュでは目的確認/現状把握から構想策定、施策検討、ロードマップ策定までを行ったうえで具体的な移行作業を実施する。通常はリホスト(リフト)した後、Azureの各種サービスを活用してアプリケーションのリファクタリングやクラウドシフトを進めることになる。実際にさまざまな業界の企業が、クラウドコンシェルジュを利用してオンプレミスのVMware環境などをAzure Stack HCIやAzureに移行しているという。
以上、マイクロソフトと日立システムズが開催したセミナーの内容を基に、ハイブリッド化によってクラウドの利点を最大限に享受しながらコストを最適化できるAzure Stack HCIの魅力と、同HCIに関して日立システムズが提供するサービスを紹介した。「クラウドを積極的に使いたいが、コストも気になる」という企業は、同社の支援によるAzure Stack HCIの活用を検討してみてはいかがだろうか。