互いの強み生かした協業で日本企業のクラウド本格移行を加速“マイクロソフト×IBM”の強力タッグが導くエンタープライズクラウドの世界

いまや多くの企業が当たり前に利用しているパブリッククラウドだが、その本格的な活用にはまだまだ課題が多い。そうした中、日本マイクロソフトと日本IBMは、クラウド移行において企業が現在抱える課題を解決するため、また企業がクラウドを使いこなすためのガイドラインの提供やクラウド上におけるアプリケーション開発のガイダンスの提供など、さまざまな支援を展開している。本記事ではクラウド活用本格化の前に横たわる企業ITインフラの課題の整理、そして解決へのアプローチを両社の対談より探っていく。

クラウド活用本格化に向けた最大の課題は「残り8割をどう移行させるか」

日本マイクロソフト株式会社 パートナー事業本部 パートナー技術統括本部 第一アーキテクト本部 本部長 内藤稔氏
日本マイクロソフト株式会社
パートナー事業本部 パートナー技術統括本部 第一アーキテクト本部 本部長
内藤稔氏

 企業コンピューティング環境として成熟し、今や全く使っていない企業はないと思われるほど広く普及したパブリッククラウド。ただし、多くの企業では現場主導で導入が進んだことなどもあり、少なからず問題も生じている。

 長年にわたり企業のクラウド活用を支援してきた日本マイクロソフトの内藤稔氏は、「部門ごとに環境がバラバラであったり、ガバナンスや利用ルールが徹底されていなかったりなど、さまざまな課題が顕在化しているのが現在の状況です」と説明する。

 日本IBMで企業のハイブリッドクラウド活用を支援している前田幸一郎氏は、日本企業が今後クラウド活用を本格化させていくうえでは、オンプレミスにあるシステムの移行が大きな課題になると話す。

 「現在は新規システムや移行が容易なシステムなど全体の2割程度がクラウド上にあると言われています。問題はオンプレミスにある残り8割のシステムであり、これらをどう移行させるかが、今後多くの組織にとって最大の課題になるでしょう」(前田氏)

 「クラウドに移行しない」という選択肢も取りうるが、現実的ではないと内藤氏は断言する。

 「例えば、AzureのサービスにはChatGPTなどのAIが組み込まれており、データ活用プラットフォーム『Microsoft Power Platform』や業務アプリケーション『Microsoft Dynamics 』などで利用できます。クラウドならば、最先端の技術をより早く、リーズナブルに活用してビジネス優位性を高められます。今日のビジネス競争に打ち勝っていくためにはクラウドが必須だということです」(内藤氏)

 また、変化が激しい今日のビジネス環境に適応していくためには、システムにも高い柔軟性が必要となる。状況に応じて機能やサービスを素早く組み替えながらシステムを構成する必要があり、それにはマイクロサービスやコンテナなどクラウドネイティブな技術が最適である。

 さらに、デジタル変革(DX)のための新規サービスなどの可能性を試行錯誤を繰り返して探っていくためには、システムを素早く、安く立ち上げられることが望ましい。その点でも、クラウドは理想的なコンピューティング環境だと言えよう。

なぜクラウド移行が難しいのか? 多くの企業が直面する課題

 このように現代のビジネスにはクラウドが不可欠であり、オンプレミスに残るシステムについても、必要なものは速やかに移行させることが望ましい。しかし、さまざまな課題や制約により移行が難しいシステムも存在する。

 「例えば、『重要な業務を支えるシステムであることから、移行のために業務を停止させられない』『移行に要するコストにメリットが見合わない』といった悩みをよくお聞きします。ライセンス面の事情から移行できない場合もあるでしょう」(内藤氏)

日本アイ・ビー・エム株式会社 IBMコンサルティング事業本部 ハイブリッド・クラウド・トランスフォーメーション エンタープライズ・モダナイゼーション パートナー 藤井伸行氏
日本アイ・ビー・エム株式会社
IBMコンサルティング事業本部 ハイブリッド・クラウド・トランスフォーメーション エンタープライズ・モダナイゼーション パートナー
藤井伸行氏

 日本IBMでクラウドを活用したシステム・モダナイゼーションなどを推奨している藤井伸行氏は、「これまで長い間塩漬けにしてきたシステムをクラウドに移行したいが、その最適な方法がわからないという悩みもよくお聞きします」と話す。

 経済産業省が公開した「DXレポート」の中で「2025年の崖」として指摘されているように、長年にわたる改修と拡張により老朽化や複雑化、ブラックボックス化が進んで保守が困難になり、塩漬けにされてきたシステムを今後どうするかが多くの企業で問題となっている。

 「ハードウェアやソフトウェアの保守切れ、技術者の退職などが迫る中、残された時間はわずかです。何らかのかたちでマイグレーションやモダナイゼーションが必要であり、その手段としてクラウドを使いたいが、具体的にどう移行すればよいかわからないということが大きな課題になっています」(藤井氏)

 現状のシステムをそのまま移行できたとしても、いずれバージョンアップが必要となる。「それなら、これまでのように数年ごとにコストをかけてバージョンアップするのではなく、クラウドネイティブ技術を活用してバージョンアップしやすいアーキテクチャーへの刷新を検討すべきでしょう」と藤井氏は指摘する。

クラウド移行の手法を具体的に解説したガイダンスを用意

 これらの課題に悩む企業の円滑なクラウド移行を実現するべく、マイクロソフトとIBMは現在、さまざまな支援を展開している。

 クラウド・プラットフォームとしてAzureを提供するマイクロソフトが力を入れていることの1つが、企業がクラウドを使いこなすためのガイドラインの提供だ。

 「クラウドの活用を成功させるうえで必要となる戦略策定から計画立案、準備、クラウド移行、運用管理までを網羅したベストプラクティス集『Azure向けのMicrosoft Cloud導入フレームワーク(Microsoft Cloud Adoption Framework。CAF)』を提供しています。CAFではオンプレミスからクラウドへの移行に関して多くのボリュームを割いて解説しており、クラウドへリフト&シフトした後にどうモダナイゼーションしていけばよいか、セキュリティやガバナンスをどう確保しながら運用していくかといった内容を網羅しています」(内藤氏)

 また、クラウド上におけるアプリケーション開発のガイダンスとして「Microsoft Well-Architected Framework(WAF)」を提供している。WAFでは、信頼性、セキュリティ、コスト最適化、運用、オペレーショナルエクセレンス、パフォーマンス効率の観点から優れたアプリケーションを作るための基本原則をまとめている。「WAFに従うことで、誰でも高品質で安定し、効率的なクラウドアプリケーションを作ることが可能となります」と内藤氏は説明する。

クラウド移行支援のコンサルティングとツール/アセットを提供

 IBMが力を入れているのは、クラウド移行を具体的に実施する各種のコンサルティング・サービスやツール/アセットの提供だ。例えば、クラウドを活用したモダナイゼーション・サービスでは、次の4つのメニューを用意している。

  • デジタル変革パートナーシップ:企業の共創パートナーとして、DX実現のためのモダナイゼーションやIT変革のスキーム確立のほか、それらの実行フェーズを推進
  • メインフレーム・モダナイゼーション:メインフレーム・アプリケーションの現行調査/分析に基づいてモダナイゼーションの方針や手法、アーキテクチャー、計画などの策定と移行作業を実施
  • クラウド・マイグレーション:クラウド移行のための現行環境の調査/分析、移行計画の策定、最適なリフト手法の選定、移行に伴うクラウド環境の設計/構築、移行作業などを実施
  • クラウド・モダナイゼーション:オープン系アプリケーションの現行調査と分析に基づくモダナイゼーションの方針や手法、アーキテクチャー、計画などを策定し、実作業をリード
IBMコンサルティング モダナイゼーション・サービス
IBMコンサルティング モダナイゼーション・サービス

 ツール/アセットとしては「IBMコンサルティング・クラウド・アクセラレーター」を提供している。これはクラウド活用を支援するさまざまなツールの集大成であり、上流から移行、保守時まで、さまざまなツールが含まれている。

 「Azureに関するツール群としてNeudesic(ニューデシック)社が開発したクラウド・マイグレーション用のツール、Azure上のデータ・プラットフォームを作るためのツールをご用意しています」(藤井氏)

 Neudesic社は、もともとマイクロソフトから独立したメンバーが立ち上げたAzureに強みを持つコンサルティング企業であり、2022年にIBMが買収した。提供されるツールは次のとおりだ。

【クラウド・マイグレーション用ツール】

  • Total Economic Impact Estimator:クラウド・マイグレーションの計画化、見積り作業の効率化、抜け漏れ防止、精度向上を支援するツール
  • Calidris(カリドリス):オンプレミスまたはパブリッククラウド上にあるサーバーやストレージなどのコンピューティング・リソースをAzureへ自動的に移行するツール
  • Ploceus(プロセウス):Azure上のコンピューティング・リソース自動作成とベスト・プラクティスに則ったスクリプト利用による効率化、標準化を支援するツール

【データ・プラットフォーム用ツール】

  • Kinisi(キニシ):Azureへのデータ移行に関する作業計画の作成や移行時間の予測などのアセスメントと、データ移行作業の省力化を支援するツール
  • One Data Platform Accelerator:あらかじめ準備された標準的な基盤テンプレートを利用することで、データ・プラットフォーム基盤構築作業の高速化を支援するツール

 さらに、IBMは今年3月、「デジタルサービス・プラットフォーム(DSP) on Azure」を発表した。これは各産業界向けの業務アプリケーションを、クラウドネイティブ技術を用いてクラウド上で開発/保守していくためのプラットフォームだ。

 「DSP on Azureの登場により、金融や保険、ヘルスケア、流通、製造など各業界向けの品質の高いアプリケーションをAzure上で開発/運用していくことが可能となります。専門性の高い業務アプリケーションでAzureの先進テクノロジーをより活用しやすくなるでしょう」(藤井氏)

IBMデジタルサービス・プラットフォーム(DSP)のイメージ
IBMデジタルサービス・プラットフォーム(DSP)のイメージ

Azureならではの技術/サービスをIBMならではの業務ノウハウと融合して提供

 さらに、マイクロソフトとIBMは個別にソリューションを提供するだけでなく、協業を深化させることによってクラウド移行の課題に直面する企業への支援を強化している。この協業が日本の顧客にもたらす価値を、マイクロソフトの内藤氏は次のように力説する。

 「今後より多くのお客様にクラウドを本格的に使いこなしていただくためには、業務を理解し、より深く入り込んでご支援する必要があります。これはマイクロソフト単独で取り組むよりも、上流領域のコンサルティングに強みを持つIBM様と連携することで、日本のお客様がクラウドを存分に活用し、ビジネスをより強くするお手伝いができます」(内藤氏)

日本アイ・ビー・エム株式会社 IBMコンサルティング事業本部 ハイブリッド・クラウド・トランスフォーメーション 技術理事 前田幸一郎氏
日本アイ・ビー・エム株式会社
IBMコンサルティング事業本部 ハイブリッド・クラウド・トランスフォーメーション 技術理事
前田幸一郎氏

 IBMの前田氏は、「Azureには多様なサービスがあるだけでなく、他のクラウドにはない特徴や強みがあります。例えば、オンプレミスでたくさんのWindows ServerやSQL Serverを利用しているなど、Azureと親和性の高いインフラをすでにご利用のお客様にとっては最有力のプラットフォームになるでしょう」 とAzureならではの魅力を強調する。ユーザー認証基盤としてActive Directory(AD)を使っている企業は、Azureへの移行により、ハイブリッド/マルチクラウドの認証基盤として「Azure AD」を使うことができる。

 また、マイクロソフトが昨年に買収したオープンな開発プラットフォーム「GitHub」やChatGPTのような先進的な技術を求める企業にとっても、Azureは最適な選択肢だと前田氏は付け加える。

 「当社のお客様の中にはGitHubを活用されているケースも多く、マイクロソフトによる買収は大きなニュースとして受け止められています。また、ChatGPTをはじめとしたAI技術を活用してビジネス価値をどう高めるのかといったご相談もこれから確実に増えてくることが予想されるので、これらに関してもマイクロソフト様との協業を加速していきたいと思います」(前田氏)

 Power Platformの展開でも、両社の連携が進んでいる。「Power Platformは現在、『自分たちの手で、さまざまな業務を効率化/自動化して生産性を高めたい』という現場主導のDXに最適なツールとして導入社数を増やしています」と前田氏。IBMでは、マイクロソフトと連携しながら各業界への導入支援を行う中で、業界特有のPower Platform活用ノウハウなどの蓄積を進めている。

世界中の多様な業界でクラウド移行が加速

 IBMの藤井氏は、マイクロソフトとの協業により、先進技術をいち早く顧客に提供できることの利点を強調する。同社は上流のコンサルティングからシステム・インテグレーション、アプリケーション保守までフルラインアップのサービスを提供している。強いリレーションを築きながら顧客に深く入り込んでサービスを提供する場合が多く、さまざまな業界の業務とシステムに精通していることが特色だ。

 「それに対して、マイクロソフト様の強みの一つは、クラウドやセキュリティ、AIなどの最新技術を、グローバルな知見とともにいち早く提供している点です。IBMが持つお客様との強固なリレーションとマイクロソフト様の最新技術を掛け合わせることで、お客様のDXをより強力に推進していくことができるのです」(藤井氏)

 今日、クラウドに関するマイクロソフトとIBMの協業は世界中で加速しており、両社が力を合わせなければ成しえなかった大規模なマイグレーション・プロジェクトが各国で多数実現している。

 「日本でも現在、多様な業種のお客様が長年オンプレミスで運用されてきた基幹業務システムをAzureにリフトするプロジェクトが進行中です。今後もマイクロソフトとIBMが力を合わせて、日本のお客様の厳しい要求に応えるクラウドソリューションをさまざまな業界にお届けして参ります」(内藤氏)

提供:日本マイクロソフト株式会社
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