ICTインフラのDXでクラウド移行ニーズが高まる
パーソルP&Tのビジネス概況と、ご自身が担当されている事業領域についてお話しください。
反町氏 当社は総合人材サービス・パーソルグループで、ITやシステムインテグレーション(SI)領域でビジネスを提供するIT企業です。DXソリューション統括部では、従来のITサービスやSIのほか、ニーズが高まっているデジタルトランスフォーメーション(DX)においても、セキュリティ対策やAI活用支援、ICTインフラ周り至るまで、サービスを提供しています。
いま多くの企業で働き方に変化が生じていて、実際にユーザーからもDX対応へのニーズが高いということですが、具体的にはどのような相談が来ているのでしょうか。
反町氏 緊急事態宣言下でのテレワークへの移行により、多くのビジネスパーソンが新しい働き方を体験しました。当初は暫定的な措置と捉える風潮もありましたが、今ではリモートワークが前提という考え方が主流になっています。元々当社では、働き方改革が叫ばれていた数年前からリモートワーク環境におけるサービスを提供しており、環境を整備したいというお客様からのご依頼が増えている状況でした。新型コロナウイルス感染症を契機に、先を見据えて「しっかりとした業務環境を構築したい」という明確な意思を持った企業が増え、多くのお問合せをいいただいております。
パーソルP&T
DXソリューション統括部
DXプラットフォーム部
反町悠希氏
その中で最近特に多くいただくご相談は、従来のオンプレミス環境からクラウド環境へ業務IT環境の移行を検討しているというものです。情報処理推進機構(IPA)が毎年公開している「情報セキュリティ10大セキュリティ脅威」でも、2021年度に初めて「テレワーク等のニューノーマルな働き方を狙った攻撃」が登場し、最新の2022年度版でも引き続き上位にランクインしています。
その内容を見ると、仮想専用線(Virtual Private Network :VPN)でリモートワークをした際、家庭のネットワークが企業のネットワークほど守られていないため、脆弱なネットワーク環境から社内のシステムに侵入し、会社の機密情報が抜き取られるようなインシデントが起きていることがわかります。企業の経営層や担当者様がそのような情報を目にしたり、セミナーなどに参加をすることで、セキュリティ対策の重要性を感じ、「いつでも」「どこでも」「安全に」業務ができる環境を求め、クラウド上への業務システム移行を検討されているという状況です。
ユーザーの業務環境に最適なAVDを提案
そこでパーソルP&Tではどのような提案をしているのでしょうか。
反町氏 まずお客様の業務分析やアセスメントを実施した上でクラウド移行の提案をおこなっていますが、最近ではVDI環境への移行を提案する機会が多くなっています。コロナ以前から当社ではオンプレミス環境へのVDI導入支援サービスに注力していました。東京都が働き方改革の一環としてリモートワークの推進を始めた当初から、連携してリモートワークを推進する取り組みをおこないオンプレミス環境にVDIを構築するサービスを展開しています。
クラウドベンダーが提供するVDIサービスのバージョンアップと当社の技術・サービスのポートフォリオが合致することから、2019年よりマイクロソフトの「Azure Virtual Desktop(AVD)」を提案していますが、コロナなどの環境の変化によってお客様からの引き合いもどんどん増えています。
仮想デスクトップも様々なサービスがありますが、何故マイクロソフトが提供するDaaS(Desktop as a Service)であるAVDを推奨されているのでしょうか。
反町氏 大きく2つの理由があります。1つめが先ほど触れた、当社の技術力との親和性です。我々には、マイクロソフトとの長年のパートナーシップに基づく豊富なシステム構築実績があり、10年以上に渡る「Microsoft Gold Partner」としての国内トップクラスの実績・ノウハウと、企業規模・業種を問わない多様なマイクロソフトソリューションの導入実績を持ちます。「Microsoft Azure」に関してもサービスが開始された当初から移行支援をおこなっていて、現在AVD領域とサーバーマイグレーション領域で、「Azure Advanced Specialization」認定を受けています。
もう1つが、お客様の業務IT環境との親和性です。デファクトの業務アプリケーションであるマイクロソフト製品の進化に併せ、「Microsoft 365」や「Microsoft Teams」を活用されているお客様や、既にAzureを利用されているお客様が増えているため、VDIを使用するライセンスコストの面と、従来システム環境との親和性という部分で、AVDが最も適しているのです。
多くの業務環境で活用されているマイクロソフトユーザーがステップアップしていく上で、AVDは自然なソリューションであると。実際にはどういったユースケースがあるのでしょうか。
反町氏 まずは、Azureがマルチリージョンで対応が可能なサービスという特性を生かして、国内だけでなく海外拠点からも社内システムを利用するためにAVDを利用するケースが挙げられます。他には、高スペックのマシン性能が要求されるCADでGPUを搭載したサーバーを利用するにあたり、オンプレで環境を用意するのが難しいため、Azureのリソースを活用して、AVD上に環境を構築しているケースもあります。
特徴的な利用方法としては、RPA環境として利用するケースもありました。社内端末でのRPA業務は無人の環境でおこなわれるため、セキュリティのリスクがあるのですが、クラウド上のVDIで動かすことで、無人で動かすという特有の物理セキュリティ問題に対応している形です。
ただいずれにせよ、単に業務環境をクラウドのVDIに移行するだけではコスト面も含めて今までと変わらないケースが多いのも事実です。そこで当社ではVDIを導入する際に、クラウド上に環境を移行しておくことでお客様が抱えている課題解決や、移行後の運用段階までを考慮して提案をおこなうようにしています。
総合人材系の強みを生かした仕事可視化ツールを提案
具体的にはどのようなアプローチをおこなうのでしょうか。
それがパーソルP&Tとしての強みや、特長的な部分という所にも繋がるということでしょうか?
反町氏 当社では総合人材サービス・パーソルグループのIT企業という強みを生かし、働く人の仕事状況を可視化する仕事可視化ツール「MITERAS(ミテラス)」というクラウドサービスを提供していて、AVD上で活用もできるようになっています。MITERASを併用することで、AVDをリモートワーク環境として使っていただくだけでなく、仕事の状況を可視化して新たな課題を見出し、解決に向けて支援することができるのです。そして明らかになった課題や従業員の働き方に関する課題に対しては、パーソルグループと連携して対応することができます。
ITコストの面では、せっかくVDI環境を作って働き方改革に対応したインフラを用意しても、最大限に利活用できていないケースが往々にして見受けられます。そのためVDIの利用実績を確認し、リソースを調整することでパフォーマンスを適切にし、不要な利用料金が発生しないようにする運用も必要になってくるのです。
具体的にお客さんからそのような声があったということでしょうか。
反町氏 実際に現場のエンジニアが、AVDを導入したお客様の情報システム担当者から「AVDを導入してリモートワーク環境が整ったが、実際にどれくらい活用されているかを上司に説明したいので、数字として出してほしい。何か有効なログはないか」と相談されたこともあります。AVDはデファクトの機能で、どの時間帯に人がアクセスしていてどれくらいマシンが稼働していたかというデータは取ることができますが、その中で実際に従業員がどう働いていたかまでを可視化する機能はないので、MITERASを提案しました。
MITERASを入れ、AVDを導入し、リモートワーク環境を整えたことで、業務がどう改善されたのか、数字として抽出することができます。AVDは従量課金型のクラウドサービスなので、さらに活用できそうであれば簡単に増設もできますし、あまり使われていないのであれば台数を削減してコスト削減に繋げることもできます。つまり導入後を見据えるという意味で、MITERASはAVDユーザーにとって有効なソリューションなのです。
顧客のメリットを考えて最適なクラウド移行を提案
今後ワークプレイスおよび働き方変革において課題をもつ企業に対して、パーソルP&Tではどのようなサポートを提供していこうと考えているのか、メッセージをお願いします。
反町氏 我々は働き方改革を検討されるお客様に対し、Azure環境へのマイグレーションサービスにおける、アセスメントによって、コストやメリットなどを一緒に考えながら最適な提案をさせていただきます。AVDは、その際の1つの有効なソリューションです。
既存のオンプレ環境からクラウドへの移行を検討するにあたり、目先の費用だけで見るとクラウドが意外と高く映ってしまうこともあります。ただ見えないコストを考えると、運用負荷が下がり、また物理的に機器を置く場所も電源も要らないなど多くのメリットがあります。それを踏まえてぜひクラウド導入を検討していただきたいですね。
またITベンダーとして、我々が得意とするAzureやAVD、Microsoft 365といったマイクロソフトのクラウド製品・サービスのデリバリー力も、今まで以上に洗練させていきます。今後マイクロソフトのイベントに参加したり、共同でセミナーを開催したりすることで、どんどん当社のサービスをアピールしていく予定です。