クラウドシフトを成功に導くための選択肢AVSの活用で巨大システムの運用負荷を大幅減

VMware製品群によって仮想化統合されたITインフラのクラウド化を支援するソリューションとして注目を集めているAzure VMware Solution(以下、AVS)。BIPROGY(旧社名、日本ユニシス)では、自社システムのクラウド移行を、AVSを活用して成功させた。そこで、マイクロソフトの柳本 和亮氏とヴイエムウェア槙田 政司氏が移行プロジェクトについて、BIPROGYの梅田 正行氏に話を聞いた。梅田氏はサポートサービス本部 クラウドサービス部 基盤技術室に所属し、自身の仕事なかでもクラウド基盤の開発・保守、VMware製品、AVSの提案・構築を手がけている。今回のプロジェクトにおける現場目線でのリアルな苦労、そこから見いだされる効果、さらには、なぜAVSを選んだのか、どのように活用をしているのかについても詳しく聞いた。
日本マイクロソフト株式会社 コーポレートソリューション事業本部 第一インテリジェントクラウド営業本部 本部長 柳本 和亮氏 日本マイクロソフト株式会社
コーポレートソリューション事業本部
第一インテリジェントクラウド営業本部
本部長
柳本 和亮氏
BIPROGY株式会社 サポートサービス本部 クラウドサービス部 基盤技術室 室長
 梅田 正行 氏 BIPROGY株式会社
サポートサービス本部
クラウドサービス部
基盤技術室 室長
梅田 正行 氏
ヴイエムウェア株式会社 コマーシャル営業統括本部 統括本部長 槙田 政司氏 ヴイエムウェア株式会社
コマーシャル営業統括本部
統括本部長
槙田 政司氏

プロジェクトの概要

 Azure VMware Solution (以下、AVS)は、MicrosoftがAzure上で提供するVMwareのプライベートクラウド環境のことで、ユーザー専用の物理マシン上でVMware製品による仮想化基盤を提供しているため、オンプレミスのVMware vSphere環境と高い互換性があり、ほとんど変更を加えることなく拡張や移行が可能となる。また物理サーバーおよびESXiについてはMicrosoft提供のフルマネージドサービスを活用できるので運用負荷の軽減にも貢献する。

 BIPROGYのAVSへのシステム移行は2種類で、1つは部門サーバー(HITS)を対象にしたもの、もう1つは基幹システムを対象にしたものだ。HITSは社内部門向けの仮想マシン貸しのサービスを担うインフラで、実構成はESXiサーバー約20台、仮想マシン約170台、共有ストレージ約30TBで構成されていた。また基幹システムは、Oracle基盤(物理サーバー)が10台、VMware基盤がESXiで30台以上という形で構成されていた。

 HITSについてはAVSサーバー5台に集約。一方、基幹システムは、Oracle基盤(物理サーバー)をライセンス費用の関係からIaaS環境へ移行。そのほかにAzureへ移行できない仮想マシンが20台ほど見つかり、これらをオンプレミスのvSAN基盤へ移行し、残りのVMware製品基盤はAVSへ移行してハイブリッド環境で運用することにした。

 なおHITSのAVS移行プロジェクトは、2021年度の後半から開始され、すでに本稼働を開始している。また基幹システムについては、2023年6月時点でOracle基盤、開発環境の移行が完了しており、現在本番環境の移行が進められている。

※基幹システムの移行プラン
※基幹システムの移行プラン

AVS導入検討時にコストメリットをとことん検証

柳本氏

 まずAVSを採用した理由にはさまざまなものがあると思いますが、そのなかでコスト面のメリットはどう見ていましたか?

梅田氏

 HITSについていえば、Azure MigrateとVMware Aria Operations Manager (旧名称 vRealize Operations Manager)というツールを使って、移行前のHITS基盤の使用状況採取、分析しました。これにより、ESXiサーバー20台だったものがAVSサーバー5台で済むことが分かりました。実際の移行ではさら台数を減らすことができ、現在は4台で問題なく稼働しています。

柳本氏

 それだけ見ても、AVSへの移行がコスト面で大きなメリットを生むと分かりますね。

梅田氏

 大きく減った理由としては、AVSの物理サーバー自体が元々オンプレミスのサーバーよりも高スペックだったことというのもありますし、移行前のCPU利用率は25%程度でしたので、効率的にサイジングした結果、5台に集約できることが分かったのです。AVSはサーバー1台に仮想マシン1台でも10台詰め込んでも同じ金額になります。できるだけ詰め込んでいくことでコスト的にもIaaSよりも抑えられます。CPU利用率を見てサイジングできたのは大きかったですね。

槙田氏

 従来のオンプレミスで継続した場合と、AVSに移行して利用した場合の長期的なコスト比較などはされましたか?

※オンプレミスとAVSのコスト比較(HITSサーバー)
※オンプレミスとAVSのコスト比較(HITSサーバー)

梅田氏

 はい、もちろん実施しました。オンプレミスでは定期的な更改のタイミングで費用がやはりかさみますし、AVSはMicrosoftの方でバージョンアップを実施していただけて作業は発生しないということなので、長期間の比較ではAVSの方が安いといった結果になりました。

槙田氏

 基幹系ではハイブリッド構成にすることになったわけですが、ここでのサイジングやコスト試算はどうだったのでしょうか。

梅田氏

 サイジングはVMware Aria Operations (旧名称VMware vRealize Operations Cloud)を活用して実施しました。移行前の基幹システムの使用状況だけでなく、HITS基盤用AVS環境の使用状況も確認でき、基幹システム用のAVS環境の運用管理の使い勝手を検証できました。このツールは、コスト計算、集約率向上、障害対応等などに利用でき、大変便利です。コストの比較ではオンプレミスとAVSを比較した場合に、5年後には元が取れるといった結果がでました。

AVSへの移行を検討した理由

柳本氏

 そもそもAVSへの移行を検討された背景にはどんなものがあったのでしょうか。

梅田氏

 VMware製品環境の運用負荷をできるだけ減らし、情シス部門がこれまで忙しくてできなかったことに着手するなど新しいことにチャレンジする時間を作りたかったのです。クラウドシフトで得られるもの、それは時間だと思います。例えば、当社の場合だと、AKS(Azure Kubernetes Service)で構成管理システムを構築するといった作業もこれまで以上に進むはずです。この自動化のシステムを構築することによってさらに時間的余裕を生み出し、さまざまなサービスを構築することが可能になります。例えば、ユーザー部門へシステム単位での最適な構成の提案をするといったことです。こうした目標の実現を検討した段階で、AVSの活用がアイデアとして浮上してきたのです。

柳本氏

 具体的な検討段階では、AVSの活用メリットをどのようにお考えでしたか。

梅田氏

 VMware製品基盤を新たに設計、運用をせずに済みますし、Azure基盤へ移行することでESU(拡張セキュリティ更新プログラム)が適用されて古いWindows Serverを、まだサポートがある状態で利用できることも大きなメリットでした。またハードウェア納期遅延もなく仮想マシンのままAzureへ移行できることもAVS導入の大きなポイントになりました。

利用部門との調整に時間を割き、
移行そのものをスムーズに

槙田氏

 実際の導入では、どのような点を工夫されましたか?

梅田氏

 AVSへの移行で検討したことが3点あります。まずネットワーク構成については、当社の方針としてオンプレミスとクラウドのネットワークは分けたいということがありました。そこでVMware HCXではL2延伸の機能でIP変更なしでも可能ですが、今回IPは変更する設計としました。

 仮想マシンの移行については、HCXを使ってバルクマイグレーション機能を使用しました。バルクマイグレーションでは移行元の仮想マシンを保持したまま移行を行えるため、万が一のリスク対策としてこの方式を採用しています。また、このバルクマイグレーション機能で仮想マシンを同時にオンラインで移行し、切り替える際には再起動してIP変更するという形で進めました。

 またHITSサーバーの移行ではAVSのストレージではなく、Azureのバックアップサービスを使用し、仮想マシン単位でのバックアップを取得することとしました。AVSのストレージはHCIのvSANということで、ストレージのバックアップ機能が使えないからです。

柳本氏

 移行のスケジュールはどのように立てられましたか? また計画通りに進んだのでしょうか。ExpressRouteをご活用とのことですが、いかがでしたか?

梅田氏

 HITSサーバーは部署単位で貸し出しており、今回IPアドレスを変更する関係で再起動が必要になるため、仮想マシンの移行自体よりも利用する部署との調整に時間を長めにとりました。実際にAVSに移行してみたところ、AVSの構築は非常に簡単で、Azureのポータルからすぐに展開できました。

 仮想マシンの移行についても、当社は100Mbps(後200Mbpsに拡張)でExpressRoute(帯域保証型のネットワークサービス)を使っておりHCXでの帯域制御を100Mbpsにしたうえでの転送速度が1時間当たり大体20から40GB程度でした。この速度が安定して利用できたので、こちらを基準に各仮想マシンの移行にかかる時間を算出して各部署と調整しました。また、AVSの性能についても、vSANのオールフラッシュのSSDが利用されていますので、I/Oも問題なく、スケジュール通りに移行を完遂できました。

柳本氏

 HITSサーバーのような業務で利用するインフラでは、利用部門との調整がたいへんですよね。

梅田氏

 AVSを利用する上でアプリケーションライセンスを各部門でどう取り扱うかの調整や各種のスケジュール調整は実際にやってみると、やはり大変な作業でした。

柳本氏

 想定外の出来事などはありましたか?

梅田氏

 当初はAVSを3台で移行を開始しましたが、その後仮想マシンが増えてきたので1台追加して増強しました。増強作業はとても操作が簡単で、ボタンを押すだけでできました。オンプレミスの場合だと、サーバー1台の追加はラッキングしたり、ケーブリングしたりと作業が発生しますが、AVSではボタン1つで追加できて非常に簡単でした。一方サーバーが3台から4台になることでvSANがRAID1からRAID5に変わり、仮想マシンのストレージポリシーの変更をコマンドで実施する必要がありました。

最適なAVS導入手法を
顧客の事情にあわせて提案したい

槙田氏

 AVS導入後に一番印象深く感じられたことはどのようなことですか。

梅田氏

 やはり、障害対応も含めたVMware製品環境の運用において、パッチ適用なども全てMicrosoftが実施してくれ、運用負荷が激減しました。AVSを導入するまでは、VMや基盤の運用にかなりの時間を取られていましたが、その作業がなくなったことは大変大きな効果です。物理的なものを持たないことで構成管理やバージョンアップ対応、障害対応などに割いていた時間を別のことに振り向けられるようになりました。

 ただ今回の導入では、基幹システムにおいては、AVSを含めたハイブリッド構成によってマイグレーションしていく方法をとりました。この方法のほうがはるかにコスト面でメリットがあったからです。

 既存システムの構成によって、最適なクラウトシフトの方法は変化していくと思います。自社での導入経験も踏まえて、お客さまには、最適なAVS導入をお勧めしたいと考えています。

提供:日本マイクロソフト株式会社
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