ニフティ×クララオンライン 中国ビジネスセミナーレポート - (page 2)
日中間のファイル転送を3~10倍に高速化
続いて、クララオンラインの吉村真輝氏が「通信インフラの不満はソフトウエアで解決!日中間のファイル転送でビジネスをスローダウンさせない方法」と題する講演を行った。当然のことながら、中国ビジネスの課題は中国国内だけにとどまるものではない。進出した企業やこれから進出する企業がまず頭を悩ませるのは、日中間の転送速度の遅さと不安定さだ。
一般的なWebサイトの閲覧で支障がでるケースも多く、数メガバイトの大きさのファイルを転送するだけでも苦労することが多い。日常的に画像や動画を利用するような業種の企業にとっては死活問題と言っていい。こうした課題に対し、クララオンラインが提案しているのが、Skeed社が展開するファイル転送ソフト「SilverBullet」だ。
SilverBulletは、高速な伝送効率と、コスト効果の高い契約モデル、場所を選ばない柔軟な利用形態が特徴だ。2011年にリリースされてから、国内で、映像制作、製造業、ゲーム、放送局、自治体など多くの業界に導入実績を持つ。クララオンラインでは、SilverBulletを鴻図雲で利用できるサービスとして提供する。
クララオンライン
吉村 真輝氏
「転送速度については、一般的な回線の3~10倍の伝送効率を実現しています。また、コストについては、初期費用6万5000円、月額7万7000円(2ユーザーの場合)の固定料金から利用できます。さらに、クラウド基盤として鴻図雲を利用するため、データセンターやサーバを用意する必要もなく、すぐに利用することができるのが特徴です」(吉村氏)
SilverBulletが日中間で高速転送を実現できる理由は、TCP通信において、確実にデータが受け渡ったことを通知するACKによる遅延が発生しないためだという。通常、TCPでは一つのデータを送り終わるまで次のデータを送らないが、SilverBulletでは、転送完了を待つことなくデータを送り続けることができるため、性能の低下がなくなる。また、回線の品質が悪くパケットロスが発生した場合、通常の通信では後続パケットの受信を抑制するために、転送レートが下がる。一方、SilverBulletでは、パケットロスが発生しても確実に再送を行い、データを正しく高速に送達する仕組みを持つ。これにより、安定した高速伝送が可能になるのだ。
実際、会場のPCと北京のPCをSilverBulletで接続しファイル転送を行った。一般的な転送ソフト(ここではSCPを利用)を使った場合は一時的に最高5Mbps程度に達することがあった程度だったのに対し、SilverBulletでは、常に上限の15Mbpsで安定して転送することができていた。
吉村氏は、中国(大連)でのオフショア開発への導入事例の効果として、中国と東京の転送時間が10分の1に短縮したこと、納期順守に向けた障害がなくなり大量案件の積極受注が可能になったこと、コミュニケーションが円滑になり従業員のモチベーションが向上したことなどを挙げた。
3つの講演の終了後は、質疑応答の場も設けられた。会場に集った参加者の多くが中国ビジネス経験者ということで、突っ込んだ内容の質問が多く見られ、3人の講師がていねいに回答していた。環境の変化が激しく、臨機応変な対応が求められる中国。クラウドへの関心が一層高まっていることが実感できるセミナーとなった。
本セミナーのメインとして紹介された鴻図雲の詳細はここからも確認できる。中国ビジネスの次の一手として、この機会にぜひクラウド活用を検討してみてはいかがだろうか。