IoT時代にクラウドが果たす役割とは
──IoTのような新しいサービス開発では、クラウドはどんな役割を果たすのでしょうか。
河野氏:IoTサービスでは、インターネットを中心としたネットワーク技術やアプリを中心としたシステム開発は不可欠の要素になります。インフラやプラットフォーム、アプリケーションをネットワーク経由で提供するクラウドとは親和性が高く、クラウドサービス抜きにIoTサービスは成立しえないといってもいいのではないかと思います。ニフティさんは以前から、ニフティクラウド上でモバイルバックエンドサービスなどを提供していましたから、その辺りのニーズもよくご理解されていたのではないですか。
ニフティ クラウド事業部
モバイル・IoTビジネス部 課長
市角栄康氏
市角氏:はい。クラウド技術はIoTサービスでも中核技術の1つだと思います。もともと、デザインセンターは、「ニフティクラウド」のR&Dチームを母体として、IoT化に必要なネットワーク技術とシステム開発に精通したエンジニアが集まっています。クラウドとの技術的な違いとしては、IoTでは、MQTT(MQ Telemetry Transport)のような軽量の通信プロトコルが重要になってくることが挙げられます。また、スマートフォンアプリが利用者との接点になるケースがほとんどで、モバイルバックエンドサービスの重要度が増しています。もちろん、単なる技術の違いだけではなく、インタフェースのデザインやビジネスのデザインなども重要になってきます。
河野氏:クラウドというと、富士通さんは、農業クラウドの取り組みにも積極的です。
市角氏:そうですね。富士通は「食・農クラウドAkisai(秋彩)」として、ICTを活用した農業経営を支援するクラウドサービスなどを展開されています。
河野氏:こうしてみると、クラウドは企業の活動だけでなく、人々の消費や生活などあらゆる分野に関わってきていることがわかりますね。ニフティクラウドやIoTデザインセンターに対するニーズもより高まっていくことになります。
IoT時代に求められる「セーフティ」と「セキュリティ」
──そんな中で、IoT時代のセキュリティはどう考えればいいのでしょうか。
河野氏:デバイス、ネットワーク、データを含めた総合的なセキュリティ対策が課題になってきます。もろちん、これは、自律走行車や制御システム、ドローン、スマートメーターなどのセキュリティにも通じる問題です。デバイスはこれからもどんどん増えていきますし、データはクラウド上にどんどん蓄積されて行きます。それらをどう管理していけばいいかは、デバイスの当初の設計にもかかわりますし、開発したあとの運用にも関わってきます。
たとえば、スマートメーターに関していえば、ファームウェアのアップデートをどう行うかが問題になってきています。ファームウェアをデバイスに組み込んでしまって、アップデートを行う際に、大量の人的リソースが必要になるというケースがではじめているのです。8000万台のスマートメーターが家庭に配布されたとき、それをどう適切にアップデートするのか。当初のデザイン設計から、運用フェーズを見越して考えていく必要があります。
市角氏:IoTデバイスをどう管理・コントロールするかは、IoTプラットフォームのキモの部分だと考えます。デバイスをどうアップデートしていくかについては、以前からあるアップデートの仕組みをIoTプラットフォームのデバイス管理機能の一部として取り入れるアプローチが進んでいます。
IoTデザインセンターでも、セキュリティを考慮した設計や、その後の運用を考えたシステム開発を進めています。
ニフティ クラウド事業部
事業部長代理 兼 クラウドインテグレーション部長
実宝康人氏
実宝氏:実際に、機能の実装部分と運用部分を分けていこうという考えがあるようですね。
河野氏:はい。実装部分をセーフティ、運用部分をセキュリティとして分けて考えようとしています。たとえば、ブレーキがきちんと付いているかどうかを管理するのがセーフティ、ブレーキがきちんと効くかどうかを確認するのがセキュリティです。アンチウイルスソフトで言えば、ソフトがインストールされているかを確認するのがセーフティ、ソフトがきちんと動作しているかどうかを確認するのがセキュリティです。
実宝氏:実装されていても、運用がおろそかになっているケースは多い。IoTデバイスを安全に開発しても、それが設置された段階で改竄されたり、別のデバイスに置き換えられたりする危険はありますね。セーフティとセキュリティをわけることは、そうしたリスクに対抗する意識づけにもなるというわけですね。
河野氏:おっしゃるとおりです。そういう意味で、IoT時代のセキュリティは、デザインが本質的に重要な要素になると思います。