総務部がオラクルでDX?
--IT専門職ではない社員による“データドリブン・マーケティング”は
いかに成功したか?~シネマコンプレックスにおけるデータ活用事例

 シネマコンプレックスを運営するティ・ジョイは、「すべてのお客さまへ驚きと感動を」を方針に、全国22カ所・218スクリーンの複合エンターテインメント施設を展開している。エンターテインメント業界では「T-LEX」「IMAX」「Dolby Cinema」などのシステムを日本に初導入しているなど、幅広く知られる存在である。

 こうした新たな体験やプロモーション施策によって驚きと感動を生み、新たなお客様の発掘につなげたい。そこで同社は、PCやスマートフォンから事前に映画チケットを予約、購入ができるオンラインチケット予約サービス「KINEZO(キネゾー)」で発生するデータをうまく活用し、現場の感覚を生かしたデータドリブン・マーケティングへと変革することにした。そこで試用から本格導入に至ったのが「Oracle Analytics Cloud」だ。

 そして、その推進の立役者は、意外とも言える総務部だった。データ分析の基盤もIT専門人材も特にいないという状況からのアプローチだ。データドリブン・マーケティングの仕組みの構築に成功した要因は何だったのか。ティ・ジョイと、「Oracle Analytics Cloud」の導入を支援した日本オラクルが語り合った。

なぜ総務部が顧客データを分析するのか

 ティ・ジョイには、経営企画部門がなく、総務部がデータ分析を行うなど、その役割を担っていたという。田村氏は、「総務部に異動した際、総務部の『総』は『創』であるという考え方があると聞き、それが気に入っていました」と話す。総務部に対する一般的なイメージとは異なり、同社の中で総務部が最もクリエイティブな部門であるそうだ。

 すべてのお客様のご満足の向上に向け、以前からデータ活用の必要性が認識されていた。5~6年ほど前に、親会社の経営戦略部門からデータ分析ツールを紹介されたこともあった。その頃に、日本オラクルとの連携が始まったという。

 この当時、同社では劇場の業務にデータを活用する潜在ニーズがあった。「『KINEZO』のデータをもっと活用すべきだと認識していました。例えば、販促チラシを配布するにもまず予算ありきで範囲を決めていたのです。しかしデータに基づいたターゲットの絞り込みが求められていました」と田村氏は当時を振り返る。データを活用すべきという問題意識があったわけだ。

 これに、日本オラクルの井上氏も「データからより戦略的にターゲティングを決め、マーケティング活動を実施する。つまり、従来の経験や勘に、データによるエビデンスを加えるということですね」と応じた。

 田村氏によると、マネージャーの会議で、総務部のデータ活用の取り組みを紹介しているうちに、次第に他部門からも「自分でデータを確認したい」との要望が寄せられるようになっていったそうだ。もともと、劇場の管理者は課題意識が高く、すぐ簡単に始められる印象を持ったようだ。

 この変化に井上氏は、「現場のマネージャーの方々の意識が高められ、主体性を持つようになり、データ活用に対する社内モチベーションが上がっていったという良い流れが形成された」と加えた。

日本オラクルが考える「企業のデータ活用」

 日本オラクルの中山氏は、「現在はセルフサービスでのデータの活用が話題の中心となり、大きく事情が変化しました」と解説する。「かつてはデータ基盤構築に大きな投資と時間が必要でした。しかし今はクラウドサービスで手軽に始めることができます。お客様のニーズに沿ったサービス提供がより強く求められる中で、簡単に利用できる基盤を利用して、現場の業務担当者ひとりひとりが自分で日々データを確認し考え、サービス向上に向けすばやく対応することが求められています。実際に、ティ・ジョイ様がお取組を実践されていらっしゃることを知り、感動しました」という。

 井上氏は、「さまざまな企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の実践を見てきていますが、テクノロジーそのものではなく、データをいかに有効活用していくかがポイントになるケースが多いですね」と話す。

「Oracle Analytics Cloud」をどう応用するか

 ティ・ジョイの田村氏によれば、データ活用の取り組みでは、KINEZOのデータ(会員と映画チケットの予約・購入データ)を利用して、特定の作品から分析を始めた。ただ、スプレッドシートを使って売り上げを集計し、「『何千人動員しました』で終わっていたのでは、データ活用のイメージがつきません」(田村氏)という点が課題だった。

 同社には、公開を手掛けた全ての作品について年齢別、男女別、劇場別などのデータがあり、さまざまなデータを紐付け、相関関係を確認している。例えば、ある作品を見た会員顧客がほかにどんな作品を見ているのかといった傾向が確認できる。そこから得た知見を他の拠点にも知らせ、お客様にご満足いただける取り組みを拡げる、というわけだ。実際に販促チラシを効果的に配布するエリアを決めたり、近隣に競合の劇場が進出した際には商圏での影響を分析したりすることに「Oracle Analytics Cloud」を活用したという。

 さらに、インターンシップの学生にも調査やデータ分析に参加してもらい、新たな発見や改善の提案ができる人材の育成にも用途を広げていった。田村氏は、「Oracle Analytics Cloudは、データから相関関係の確認を進めるのに、だれもが素早く簡単にトライ&エラーを繰り返すことができると感じています。つまり、試行錯誤を繰り返すことができるので、新たな発見がしやすい点でユニークです」と述べる。

 同社にとって「Oracle Analytics Cloud」は現在、劇場の支配人などミドルマネジメント層が使うデータ分析ツールになっているとのこと。今後は部長職以上と経営層が、社内に埋もれているデータを経営の意思決定に使えるようにしていく構想だ。

 「映画をご覧になったお客さまがどのような感情を抱いたのかといった『生の情報』は映画館ならではのデータです。そのようなデータは、コンテンツを制作、提供する側の配給会社や製作委員会が求めているものであり、そのデータを当社は持っています。このデータを新しいビジネスにも活用していけると考えています」(田代氏)

 例えば、日々の購買などのトランザクションデータ、作品ごとの来場者会員の属性といったデータは既に蓄積していたが、用途については定まっていなかった。一方で、映画館に限らず、折り込みチラシをまく際などには、場所などを考慮せずに「ただまいている」ような状況になっていたという。

 そこで、現場の経験や勘に加えて、地域情報や予算制約などを加味しながら、客観的なデータの裏付けを持って業務を進めていくことで、自社の業績向上と、引いては映画業界の活性化につなげていく狙いがある

日本オラクルが勧める用途

 日本オラクルの井上氏は、企業側の課題感について、データを所有しつつも、それらのデータをどのように分析すればいいか、また、分析したとしても、どのような傾向やパターンが隠れているかなどインサイト(洞察)を発見するのに苦労していると指摘する。そして、「日本オラクルでは、ユーザーに素早くデータを活用、分析してもらうことに焦点を当てています。Oracle Analytics Cloudの一例では、システム組み込み型のAI/機械学習テクノロジーを活用し、ユーザーに代わって予測分析などを提供することによりお客さまの手を煩わせないようにしています」と同社の取り組みを紹介する。

 また中山氏は、「データの活用に挑戦する気持ちが大事です」と述べる。従来は、データの分析結果を得るだけでも、企業はかなりの投資や労力をかけていた。だが現在は、さまざまなデータの相関関係を人工知能(AI)が素早く見つけてくれる時代になってきているという。もはや、データ活用に時間やコストの壁がなくなってきているわけだ。

 ティ・ジョイの田村氏も、「まるで移動手段が自動車から新幹線に変わったと思うくらいに、“スピードの次元”が変わったと感じます。産業革命のようですね」との感想である。

トップマネジメントの活用事例

 日本オラクルの中山氏は、香港のマクドナルドにおける「Oracle Autonomous Database」(ADB)の事例も紹介してくれた。同社では、お客様のご満足向上に向けた活動の1つとして電子クーポンを発行している。お客様が認知していないサービスを知ってもらい、商品を追加的に購入していただく狙いだ。しかし、単なる値引きとなり売上が押し下げられかねない。 ちなみに、このクーポンの問題は、多くの消費財の商品販促部隊が抱える悩みです。シャンプーやせっけんなどのおまけプロモーションが、本当に売上向上に役立っているのか、と。

 「香港は食生活が豊かで、来店してもらうための工夫が求められるのだそうです」と中山氏。クーポン発行も、従来は担当者がスプレッドシートと経験に基づいて実施していたが、ADB上に蓄積したデータと機械学習機能を利用して、クーポンを好んで使用するお客様の特徴を割り出し、サービスを認知していないお客様向けに新たなプロモーションを展開できるようにしたそうだ。さらに、そうした施策が売上高をどのくらい押し上げるかもシミュレーションが可能となり、マーケティング部門だけでなく、財務部長も含めて作戦会議ができるようになったそうだ。

 「機械学習は過去のデータを利用し、“相関関係のお化け”を自動的で見つけ出します」と中山氏は話す。地域、曜日、時間、年齢、好みといった様々な特徴からチャンスを発掘するので、担当者が新たなチャンスや確度をデジタルに知ることができる。プロモーションによる購入客の増加や、売り上げのアップという値引き分以上の金額的な効果が可視化されることで、プロモーションの“原資”を所管する財務部長と部門間連携できるようになったのが印象的だという。

 同様にティ・ジョイの田代氏も、「データ活用の応用として、映画のクーポンも最適なタイミングを踏まえて配信したい」とする。また、何億円もかかる映画制作のような規模の大きな投資を意思決定する際に、データ分析の結果を裏付けにしながら、方向の修正、場合によっては追加投資の決断ができる。次に、どのような映画を制作するといいかなども見えてくる。

これからデータを活用したいという人々へ

 改めて田村氏は、「データからさまざまな事柄が分かり、ビジネスの可能性が広がるのは、とても楽しいことです。Oracle Analytics Cloudは、データ分析の試行錯誤を楽しみながら、お客様にご満足いただける機会を拡げ、企業を発展させていけると感じます」と話す。また、「自社に専門のアナリストがいなくてもデータを分析できます。当社は、データの民主化という意味で、限られた人ではなく業務現場の近くで広く活用できているのが良いですね」とも語った。

 日本オラクルの井上氏は、「楽しくデータを分析して気づきを得るのがポイント」、中山氏は「答えのない時代のなかで最初に答えを発見する快感が体験できるようになってきました」と話し、多くの企業に、“気づいていなかった答え”が発見できる機会を獲得できるように支援していくと話している。

提供:日本オラクル株式会社
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