
株式会社OSBS 代表取締役 社長
眞鍋 謹志氏
従業員の思いを形にするためにデジタルを有効活用
OSBSはアウトソーシンググループ傘下の特例子会社で、従業員数は約500人、全国32か所に拠点を構えてグループ内のシェアードサービスを中心に事業を営んでいる。同社の事業スタイルとして特徴的なのが、法律に基づいて障がい者に対して安定した労働環境を確保するだけではなく、「企業は従業員自らの力で成長させていくもの」という企業理念のもとで、従業員の自主性や新たなチャレンジを後押しする経営を実践していることである。
「障がいをもつ従業員は、身体や精神に“ハンディキャップがある”ということを理由に会社で重要な仕事を任せてもらえないのでは?どうすれば、会社に必要とされているという実感を掴めば良いか、わからず困り果てています。そこで当社では従業員に何をしたいのかを聞き、それを自社の仕事にしていく事を自社の役割としています。仕事は“やらせるもの”という考え方では、既に限界がある事を承知しているようです。従業員の“やりたいこと”をいかに形にできるかが会社の使命であるとの思いで、新規事業や社会貢献にも積極的に挑戦しています」と、同社 代表取締役 社長 眞鍋謹志氏は語る。
同社では、円滑な事業運営ならびに従業員の新しいチャレンジを後押しするエンジンとしてデジタルツールを積極的に活用しており、開発基盤としてOCIを採用し、内製でデジタル化を進めている。もともと眞鍋氏は、アウトソーシング社にて日本オラクルの高性能垂直統合型システム基盤「SPARC SuperCluster」を国内で初めて導入するなど、最新IT活用に関する理解度ならびにオラクル製品に対する信頼度は高く、OSBSでも自らがリードする形でOCIを基盤としてデジタル活用を進めている。OCIを採用した経緯について眞鍋氏は、「オラクルは業務領域では昔から確かな実績と信頼があるので、クラウドについてもオラクル製品を使いたいと考えていました。OCIはパブリッククラウドとしては後発ではありますが、登場後の進化のスピードには驚いています」と明かす。
同社のデジタル化推進体制は、眞鍋氏が全体の事業戦略ビジョンやデジタル活用、アプリ開発の方向性を示し、「やりたい」と手を挙げた社員がローコード開発手法を学んで開発を担当、それらの活動を日本オラクルのコンサルティングチームが技術的に支える形となっている。そしてIT基盤としてOCIがあり、“やりたいこと”を具現化する高速な顧客開発体制を実現している。
メンタル不調の兆候を検知する“AI課長”「DEBORA」を自社開発
その枠組みの中で誕生したのが、従業員のメンタル不調の兆候を検知する“AI課長”「DEBORA」である。コロナ禍に突入してからコミュニケーション不足も相まって、休職者・離職者の増加を多くの企業が実感していることだろう。OSBSでも、メンタル不調に伴う休職者が毎月2~3人ほど出ていたという。従業員や部下の体調管理は上司が感覚的に察知して行うのが常であろうが、コロナ禍で直接顔を合わせられなかったことに加え、同社では上司も障がいを抱えているためにそもそも一般的な手法での管理が難しい。そこで、機械学習やAIを活用して問題改善を図ることとした。
その際に眞鍋氏がこだわったのが、「すべての判断をAIに任せない」ということであった。同社でのAIは、あくまで「人間が判断するための正しい情報を与える存在」という位置付けである。さらに、ユニークなのはDEBORAに「課長」という役職を与えて従業員と対等の立場とし、職務管理規程にも課長としての仕事内容や権限を明記し、職務に就かせていることだ。
「AIを活用するにあたり、機械が言うことを無条件で信じる仕組みにしたくありませんでした。新しい知恵を出したり想像したりするクリエイティブな作業は、やはり人間が判断し実行すべきなのです。メンタル不調に陥る前には、メンタルや外見の変化など何らかな兆候が見られます。DEBORAはちょっとした変化に気付いてあげて指示を出す役割を担い、最終的に上司や医療福祉資格を持つ社内の支援者が、本人の尊厳を傷つけないタイミングでフォローすることで問題解決を図りました」(眞鍋氏)