慢性的な人材不足を背景に活況を呈している人材サービス業界。多くの競合企業がしのぎを削るなか、事業対応にもスピード感が求められる。こうした変化に主体的かつ迅速に取り組むため、これまで外注に依存していたシステム企画やシステム開発の内製化が必要になっている。
その先駆けとも言えるのが、転職支援・人材紹介サービスなどを手がけるパーソルキャリア株式会社である。「はたらいて、笑おう。」というグループビジョンを掲げており、転職サービス「doda」で知っている人も多いだろう。
2019年、パーソルキャリアは、より多くの働く人に寄り添ったサービスを提供していくため、『人々に「はたらく」を自分のものにする力を』というミッションを新しく掲げて、従来の転職サービスはもちろんのこと、今までにない新しい価値を提供する新規サービス開発を進めてきた。そのために「テクノロジー本部」を新設し、社内ITコンサルタントや開発エンジニアなどの組織強化を行い、システム内製化を進めているのだ。
主力事業であるdodaエージェントサービスは、全国で約3,000人の法人営業やキャリアアドバイザーが日々、転職支援業務を行っている。個々人の小さな工夫はもちろんのこと、全体のビジネスプロセス最適化やシステム化が極めて重要かつ不可欠になってくる。
一方で事業システムの内製化と聞くと、「社内請負業になってしまわないか」「ITコンサルタント・エンジニアとしてのキャリアに限界があるのではないか」といった印象を持つ人もいるかもしれない。
そこで今回、dodaエージェントサービスをIT/テクノロジーから支えるメンバー3人に話を伺った。事業会社のなかで、ITコンサルタント・マネジャーとして、事業に直接貢献するため、どのようにITの活用を進めているのか、その醍醐味を聞かせてもらった。
事業の成長を牽引する難易度の高いプロジェクトを推進する人材
どのような業務を担当しているのか、自己紹介をお願いします。
伊藤:BITA統括部で、プラス プロセス&システムデザイン部のマネジャーをしています。
BITA(ビータ)とは「Business IT Architect」の略称です。ITを使って業務を変革し事業貢献することを目的としています。BITA統括部では各事業に主務として入り込むことで事業のニーズにクイックに応えて、事業成長を支えるという体制を取っています。
当社の人材紹介サービスであるdodaエージェントサービスを支えるのは「エージェント プロセス&システムデザイン部」(エージェントPSD部)、そしてdodaエージェントサービスの一つである母集団形成やマッチングを強化するdodaプラスサービスを支えるのは「プラス プロセス&システムデザイン部」(プラスPSD部)です。
私たちはITを通じて業務課題の解決やプロセスの変革を担っています。
マネジャーとして組織開発という形で、グループの活性化や組織力強化も進めています。
プラス事業部 企画統括部 プラスプロセス&システムデザイン部
プラスカスタマープロセスデザイングループ マネジャー
兼 テクノロジー本部 BITA統括部 プラスプロセス&システムデザイン部
プラスカスタマープロセスデザイングループ マネジャー
伊藤 竜将 氏
中村:BITA統括部のプロジェクトBITA部で、エージェント事業の基幹システムを中心に、シニアコンサルタントとしてシステムの開発・導入や保守・運用などに携わっています。あとは事業部の要求に対して、プロジェクト立ち上げつつ推進するといったことも担っています。
テクノロジー本部 BITA統括部 プロジェクトBITA部
システムPMグループ シニアコンサルタント
兼 エージェント事業部 エージェント企画統括部
エージェントプロセス&システムデザイン部
中村 正幸 氏
古野:同じくプロジェクトBITA部所属でポジションはシニアコンサルタントです。エージェントPSD部を担当しており、キャリアアドバイザー領域を中心に、事業横断的に基幹システム開発のプロジェクトマネジメントをしています。自身の担当チームとしては12人程のメンバーと一緒に日々業務に取り組んでいます。
テクノロジー本部 BITA統括部 プロジェクトBITA部
システムPMグループ シニアコンサルタント
兼 エージェント事業部 エージェント企画統括部
エージェントプロセス&システムデザイン部
古野 順一 氏
パーソルキャリアでシニアコンサルタントは、会社の中でどのような役割、立ち位置なんでしょうか?
伊藤:シニアコンサルタントも含む当社のITコンサルタントは、事業課題の解決や各種サービスにおいて、ITの観点からソリューションを提案し、その実行に向けたプロジェクトを企画、推進する役割です。
私たちのようなITコンサルタント、エンジニア、UXデザイナーなど専門性を発揮する職種については、総合職の人事制度とは異なり、プロダクト・エンジニア人事制度が適用されています。
中村:私の場合だと、規模が大きい複雑なプロジェクトの企画・推進・マネジメントに特化した、専門性を持った役割ですね。
伊藤:中でもシニアエンジニアは事業を横断し、難易度/プライオリティーの高い、重要なプロジェクトを推進する役割を担うエキスパートという位置づけです。
事業の中核となる基幹システムを事業と共に進化させていく
企業の採用と個人の転職を支援しているエージェント事業の基幹システムはどのようなものなのでしょうか?
古野:当社のエージェント事業では、リクルーティングアドバイザーが企業から求人をお預かりして、転職希望者を担当するキャリアアドバイザーが適した求人をご紹介します。その人たちが使うARCS(アークス)と呼ぶ基幹システムやサブシステムをエージェントPSD部で担当しています。
我々はメインの基幹業務と周辺サブシステムを含めた業務プロセスを担当しています。業務の範囲が広いので、チームを分割して担当を付けている感じですね。転職希望者が実際に使うマイページなどは、別の事業部が担当していて、我々の担当するシステムはキャリアアドバイザーやリクルーティングアドバイザーが日々利用するシステムがメインとなります。
全国のリクルーティングアドバイザーとキャリアアドバイザーが利用するので、約3,000人のユーザーがいます。
かなり大規模なシステムなんですね。そういったシステムに関してどのように仕事を進めていくのですか?
伊藤:実際にシステムを利用するのは事業部に所属する社員ですが、事業や社員の先には必ず企業や転職希望者がいらっしゃるので、顧客に価値を提供することが一番重要です。顧客に向けて何ができるか、という点を最も考えなければいけないですよね。そのために、事業の企画の人たちと十分なコミュニケーションを取ってプロジェクト化し、使いやすく安定したシステムを提供することで、事業に貢献していくところに大きな役割があると思っています。
古野:開発体制としては、内製のエンジニアチームや外部のパートナー企業と連携しながらプロジェクトを推進していきます。
プロジェクトの基本的な進め方というか、ルールはあるのですが、プロジェクトマネージャの役割も果たす私たちITコンサルタントが裁量をもっていて常に最適解を模索しながらプロジェクトを組み立てていきます。企画から参画してプロジェクトを立ち上げるところから、予算管理・ソリューション選定なども行い一気通貫で施策を推進していくことから、裁量・やりがいはかなりあると思います。
基幹システム自体は、C#をバックエンドにして、APIを整備してマイクロサービス化してあるので、サービス拡張性を重視したアーキテクチャになっています。フロントエンドはSPA(Single Page Application)になっていてバックエンドとは独立して拡張できるようになっています。
内製のエンジニアチームもかなり拡大していて、業務やシステム構成・仕様に詳しい人も増えてきました。技術的なところをエンジニアメンバーと議論しながら、企画に関わるところは事業部のメンバーと相談しながら、トライアングルでやっていけるところが面白いと思います。
中村:ひと昔前の基幹システムの取り組みは、事業部からのオーダーに対応していくことが多くて、アーキテクチャをどう進化させるまでなかなか取り組めていませんでした。
現在は、そこの優先順位がかなり上がっていて、基幹システムのモダナイズ化を計画的に推進できるようになってきています。実際にマイクロサービス化に向けたアーキテクチャの改善や、クラウドリフトも推進中です。
また、APM(Application Performance Management:アプリケーションパフォーマンス管理)を導入してシステムの健康診断や処方ができるようなり、次なる活用として、ユーザーの行動をAPMで把握できるようにして、業務の効率化に役立てようとしています。直接的な業績貢献には繋がらないが、効果ある取り組みのROIにも活用できないかと考えています。
ITコンサルタント・プロジェクトマネージャとして
事業と開発をつなぐ
PSD部を象徴するような具体的な取り組みと、皆さんのそこでの役割を教えてください。
古野:少し前になりますが、わかりやすい取り組みですと、コロナ禍に対応したオンラインカウンセリングの導入ですね。
これまではキャリアカウンセリングを対面で実施することが多かったのですが、コロナ禍の影響により対面でのカウンセリングが難しくなってしまいました。そこで急遽オンラインでカウンセリングできる仕組みをつくりました。
カウンセリングはサービスにおけるメイン業務となり、3,000人規模のメンバーが利用するので、通常の作業導線ですぐに使えるようにする必要がありました。
キャリアアドバイザーごとにカウンセリング用URLが異なるため、基幹システムにから、それを自動的に転職希望者にメール送信するという仕組みです。
コロナ渦において早期にサービスを継続させる必要があったため、課題に対しスピードと利便性のバランスを取りながら推進し、早期にオンラインカウンセリングの仕組みを導入できた良いプロジェクトだったと思います。
私たちの仕事は、効果を予測し、そのためにどれだけの投資が必要で、ROIがどうなるのか、といったところまで詰めていきます。
もちろん、工数削減したら終わりではなく、削減したら何が生まれるかといったところまで考えていく必要があると思っています。削減をした分だけメンバーがもっとクリエイティブな仕事ができるとか、お客様に向き合う時間がより取れるようになるとか、そういったところまで企画の人たちと一緒に考えていくことが重要だと思っています。
中村:私は、機械学習を使ったレコメンドシステムのプロジェクトに取り組んでいました。キャリアアドバイザーが転職希望者に求人を紹介するにあたって、十数万件以上ある求人にすべて目を通すのは難しいことから、機械学習をつかって、より良い求人の紹介につなげる、というものですね。
内製のエンジニアチームが取り組んでくれたのですが、プロジェクトマネージャの役割を担う私たちとして重要なのは、事業部とエンジニア側の橋渡しだと考えています。
事業部とエンジニアの間にボールが落ちた時、それを拾って、必要な条件を揃えてカウンターパートの誰かに渡して後押しする――走れないんだったら、どうやったら走れるのか聞いて、事業部の判断が必要だったら、どうやったら承認してもらえるのか情報を整理する――事業会社のITコンサルタントの役割として、全体を俯瞰しながら計画を立てて、プロジェクトとして推進しきることが大切です。それぞれのカウンターパートとコミュニケーションを取るために、技術用語を事業部が理解できる言葉に置きなおしたり、判断軸や条件を揃えて伝えて判断できる状態にしたり、そういうことをやりきるのも重要と考えています。
伊藤:2つのエピソードにも共通していますが、プロセスの全体最適化をどう実現していくかが重要だと考えています。
私たちの事業の業務プロセスは、かなり広く長いものです。たとえば、転職希望者に会員登録して頂き、企業からは採用要件を含む求人情報をお預かりします。社内の法人営業がお預かりした求人情報を原稿化したり、キャリアアドバイザーがカウンセリングを行う、そして求人応募後は、日程調整して面接して採用・転職につなげるといった具合です。
この長いプロセスを業務ごとに分割して、サービスマネージャを置き、各担当領域の業務改善に日々取り組んでいます。
領域ごとの業務改善において、業務効率化していくのか、新しい技術を取り入れて発展させていくのかを検討し、安定して品質よく、すばやくサービスを提供するためプロジェクトを推進しています。事業部やエンジニアチーム・外部のパートナー企業ともしっかりとコミュニケーションをとりながら、事業貢献できるよう取りまとめています。
組織の風通しを良くする仕掛けを充実させる
皆さん、とてもアクティブに仕事に取り組んでいる雰囲気が伝わってきます。所属されている組織文化や雰囲気について伺いたいのですが、主観で構わないので教えていただけますか。
伊藤:会社全体に言えると思いますが、何よりも人がいいですよね。
相手の困りごとにしっかりと向き合える人、寄り添って会話ができる人、そういう人が多いと思います。
それはチームに対しても事業側に対しても、話の聞く姿勢としっかり協力し合える文化が醸成されているので、そこは素晴らしいと思っています。
古野:組織の雰囲気でいうと、年齢層も幅広く、女性も活躍している人が多いです。あと、キャリアアドバイザーや法人営業から異動するケースもあり、多様なバックグラウンドを持つメンバーで構成されていますね。
総合職の人事制度とは異なるとプロダクト・エンジニア人事制度があるということでしたが、ほかにもキャリア支援面で何か具体的な取り組みはあるでしょうか。
伊藤:人材サービスの会社なので、社員のキャリア支援も充実しています。たとえばキャリアチャレンジ制度では、公開されている募集ポジションに自ら異動希望を出すことができます。パーソルキャリア内はもちろん、パーソルグループ内企業への異動・転籍ができるようになっています。
だから、いま自分が担当する業務のなかで成長していくのもいいし、別の部署や業務に応募してチャレンジすることもできる。そういう柔軟な選択肢があるんですね。
中村:あと組織に対するサーベイもあります。パーソルキャリアのValue「外向き」「自分ゴト化」「成長マインド」をもとに、所属する組織のコンディションを各メンバーが回答し、全員で振り返りフィードバックしあうという取り組みを行っています。
こういった組織に対するフィードバックはおざなりになりがちだと思うんですが、そうじゃないんですよ。
事業に対してアカウンタビリティを発揮するには、自分と組織の行動を振り返り、自分の意見を言う文化があるので、この辺りは優れているなと思います。そのおかげもあるのか、声が通りやすい組織になっていると思います。
事業で成果をあげることをサポートする社内の仕組みや制度、施策は整っていると感じます。
事業会社の効果を実感した瞬間
事業会社にいてその効果をダイレクトに感じられるところが、事業会社で働くITコンサルタントの醍醐味のひとつかなと思います。事業会社にいて、その効果をダイレクトに感じた瞬間があったら教えてください。
古野:業績が直接見えるのはダイレクトで分かりやすいですよね。あと、振り返りを必ずやる文化があるんですよ。ROIがあるんだったら、必ず振り返りを実施して、ちゃんと定量と定性で評価する。
事業側からフィードバックをもらうと、お客様の声を直接聞けたりするので、それを関係者に共有するようにしています。社内の基幹システムやサブシステムに新しい機能を追加して「すごく業務がはかどりました」とか「もうこれがないと生きていけません(笑)」みたいなコメントを頂いたら嬉しいですし、エンジニアチームとも共有して自分たちの取り組みがどんな影響があったのかわかるようにしています。
伊藤:私たちプロセス&システムデザイン部の仕事って、言われた仕事だけをしようと思えばできてしまう。
だけど、「自分ゴト化」という言葉のとおり、当事者意識を持って企画と一緒に検討して、開発者と一緒に作り上げていく。そしてその効果が達成感ややりがいにつながると感じています。また、一緒にプロジェクトを推進したパートナー会社の方とも共有することで、ともに喜ぶことができるんだと思います。
中村:そこ大事ですよね。私は、効果が出なかったことも共有するようにしています。悔しいけど、次は頑張ろうねみたいな。たとえば、バッググラウンドのパフォーマンス改善系って、めっちゃ数字には出てるんですけど現場はなかなか感じてくれないことがあるんですね。それでも積み重ねがDB負荷を全体的に減らしているわけで、いつか現場からも早いよねと言わせようぜ、と意気込んでチームワークをアップさせることはあります。
それを隠さなくてもいい雰囲気があって、そういうフィードバックを次に活かせる文化があるということですね。
テクノロジー人材を募集中
素晴らしいエピソードをたくさん伺ったので、パーソルキャリアに興味を持つ人と出てくると思います。パーソルキャリアでは、エンジニア・ITコンサルタントやマネジャーの募集もおこなっているそうですが、そういった方々にコメントをお願いします。
古野:当社には、さまざまな事業や部署があり、それぞれ雰囲気は異なるのですが、共通しているのは顧客第一指向ということだと思います。
ですので、顧客に価値を提供したい、そのために事業貢献したいという想いがある人には向いていると思います。規模も大きいし、内製のエンジニアや企画、事業責任者、外部のパートナー企業など、さまざまなカウンターパートとの仕事を通じて、多様な考え方などを学べますので、キャリアや経験につながるはずです。
言われたことをただやるのではなく、自分の経験やスキル使って解決していきたいという考え方がある人は、活躍できると思います。
中村:そうですね。さまざまなプロジェクトマネジメントを経験していきたい、大きな規模の案件がやりたいっていう人は、ぜひ!だと思います。チャレンジできるし、失敗しても受け止めてくれる文化があって、次に活かしていこうという風土です。本当に醍醐味のあるお仕事がいっぱい待っているので、ぜひ一度カジュアルに話を聞きに来てほしいですね。
伊藤:ITを活用したサービス提供で事業に貢献したい。自分の裁量のなかでしっかり事業貢献とした達成感を得たい。そのために、自分の動き方や人とコミュニケーションを取ってというところに面白味があります。
あと、IT統制をかけられる権限を持っているところもポイントです。どのようなサービスでどのようなソリューションを提供するのかってところに関しても決定権を持っていますので、しっかり事業側に対するITガバナンスをかけるっていう点についても、コミットメントができるっていう。幅広く事業に関わっていける裁量を持っています。
お待ちしています。
本日は、ありがとうございました。