近年では、基幹系システムにおいてもオンプレミスからクラウドへの移行や、複数のクラウドをまたいだマルチクラウドを活用する企業が増えている。その際の大きなテーマになるのが、クラウド上で複雑に連携する業務の自動化やシステムを止めないための可用性の確保である。クラウド上でも基幹系システムを安定稼働させる方策について、日立製作所とサイオステクノロジーのエキスパートに聞いた。
進化する統合システム運用管理「JP1」でクラウド移行・連携を支援
クラウドの普及に伴いオンプレミスとクラウドを連携したハイブリッド環境やマルチクラウドでの運用など、企業のITシステムの運用は複雑化している。運用には環境に応じたスキルや経験が求められ、運用管理者の負担が大きくなりつつある。複雑化するITシステムの運用を柔軟かつ効率化させることが課題となっている。
日立製作所が提供する統合システム運用管理「JP1」は、1994年の販売開始以来、Windows、Linux、UNIXなどの各種プラットフォームから、仮想化プラットフォーム、クラウドサービスなど、幅広い環境に対応してきた。JP1シリーズのなかでも複数のクラウドサービスやオンプレミスで行う業務の実行を制御し、業務全体の自動化による効率化を支援するのが「JP1/Automatic Job Management System 3(JP1/AJS3)」だ。
株式会社日立製作所
ソリューション事業推進部
山原氏
JP1の製品担当者である株式会社日立製作所 ソリューション事業推進部の山原 滉太氏は、「クラウドの利用が増えている一つの要因は、初期投資や運用の負担を抑えることが可能になるからです。さらに、クラウドでは俊敏かつ柔軟にシステム変更ができるため、収益性や生産性の向上といった効果が得られるのも大きなメリットとなります。それを享受するためにオンプレミスからクラウドへの移行を求める企業様が多くなっています。ジョブ管理ツールであるJP1/AJS3は、 AWS, Azure, OCI, GCP※などのクラウドプラットフォームに対応しているため、移行後もオンプレミスと変わらない運用やクラウドサービスとの業務連携により効率的な運用を可能にします。」と話す。
※ WS: Amazon Web Services, Azure: Microsoft Azure, OCI: Oracle Cloud Infrastructure, GCP: Google Cloud Platform
JP1/AJS3の大きな特徴は、クラウド上においても、ジョブの実行順序制御・スケジュール設定・実行状況の可視化ができる点である。特に、クラウドサービスのみでは難しい、企業独自の業務カレンダーに合わせてきめ細やかなジョブを自動実行できる点やジョブ実行の問題発生時に柔軟な対処ができる点が強みだ。
JP1/AJS3の最新バージョン12.6では「クラウドサービス連携ジョブ」機能が強化された。バージョン12.5ではAWS Step FunctionsなどAWSのサービスとの連携に対応していた。最新バージョンではAzure Logic AppsなどのAzureのサービスとの連携に対応している。この機能によって、クラウド側で提供されるストレージサービスやワークフローサービスとの連携が容易に実現できる。
「例えば、商品販売における将来の販売データを予測する業務では、オンプレミスにある販売データをクラウド上のストレージに格納し、クラウド側で機械学習を行い、翌月の売上を予測します。その予測データを使って発注や清算処理を行う一連の業務をJP1/AJS3で制御できます。」(山原氏)
図:ジョブ管理ツール JP1/AJS3の概要