Zscaler Digital Experienceとは?
「Zscaler Digital Experience」(以下、ZDX)は、Zscaler社が開発・提供しているクラウド型の監視プラットフォームです。このプラットフォームを使うことで、組織内のエンドユーザー(端末)やアプリケーションの通信状態を可視化し、通信上のボトルネックやトラブル原因を早期に突き止めることが可能になります。これによって、エンドユーザーによる快適な端末利用──すなわち、良好な「Digital Experience(=デジタル体験)」を維持するためのユーザーの手間、あるいはネットワーク管理者の工数を大幅に減らしていくことができます。
SaaS、インターネットサービスの通信状況を可視化
ZDXは、Zscaler社のクラウド型Webプロキシ製品「Zscalerインターネットアクセス」(以下、ZIA) に付随する製品です(図1)。

図1:Zscaler Digital Experienceの概要
ZIAは、「Webプロキシ」「URLフィルタ」「アンチウイルス」「サンドボックス」などのWebセキュリティ対策を単一のプラットフォームで提供し、組織内外のさまざまな場所からのインターネットアクセスを保護するサービスです(図2)。国内外の多くの企業に導入され、活用されています。
また、ZIAの設備が置かれるデータセンターは、日本国内を含む世界100を超えるカ所ロケーションに展開されており、どのデータセンター上の設備にアクセスしても同一ポリシーの適用が可能な構成になっています。利用中の設備で障害が発生した場合も、接続先のノードの自動的な切替えが行われるので業務への影響を抑えることが可能です。

図2:Zscalerインターネットアクセスの利用イメージ
ZDXの監視プロセスは、そのZIAと共通の専用エージェント「Zscaler Client Connector」(以下、ZCC)に統合化され、ZCCのコアプロセスから独立したスタンドアロンの軽量モジュールとして動作します。
そのため、ネットワークへの負荷をかけずに「Microsoft Teams」や「Zoom」「Box」といったSaaS アプリケーションやインターネットサービスに対する監視を実現し、ぞれぞれのパフォーマンスに関する詳細な情報を可視化することができます。
ZDXで何が見えるのか?何を変えられるのか?
では具体的に、ZDXの活用によって何を可視化することができるのでしょうか。 ZDXで可視化できる主な項目は次の通りです。
- 独自スコアによるエンドユーザー体験の評価
- 通信先の SaaS/Webサイトの状態
- 自宅回線・社用携帯・特定ネットワークなど、多様なエンドユーザー環境の状態
- エンドユーザーが経由しているインターネットサービスプロバイダー(ISP)の詳細情報
- デバイスのヘルス情報(CPU使用率、メモリ使用量、ネットワーク IO 、ディスク IO 、 Wi Fi 信号強度、など)
例えば、ZDXのダッシュボード画面(画面1)では、組織内の部署や地域(ロケーション)、さらには単位時間ごとに、使用しているSaaSアプリケーション/Webサイトの状態やエンドユーザー体験のスコアを俯瞰的にとらえることができます。

画面1:ZDXのダッシュボード画面例
また、ZDXの「クラウドパス」画面では、エンドユーザーが使用しているアプリケーションまでの通信経路と区間ごとの応答時間がグラフィカルに可視化されます(画面2)。

画面2:ZDXの「クラウドパス」画面(ホップビュー)
さらにクラウドパス画面の表示を「コマンドラインビュー」に切り替えることで、エンドユーザーが経由した全てのプロバイダーの詳細な情報(AS番号、地域など)を一覧形式で表示させることが可能です(画面3)。

画面3:ZDXの「クラウドパス」画面(コマンドラインビュー)
可視化によって可能になること
DXによる可視化によって企業のネットワーク管理者は、通信における問題の所在がローカルネットワークにあるのか、エンドユーザーが使用しているデバイスにあるのか、それともISPにあるのかを速やかに特定することができるようになります。それによってネットワーク管理者が手にできる効果をまとめると次のようになります。
- 通信問題の発生時における原因究明と意思決定、対処のスピードアップ
- 通信品質向上に向けたエンドユーザーへのアドバイスの適正化
- クラウドサービス障害の早期発見とエンドユーザーへの速やかな通知
ユースケースで確認!ZDXのビジネス効果
ZDXによる可視化の効果は、上述したような通信のトラブルシューティングに関わるネットワーク管理者、あるいは情報システム部門の業務を効率化、スピードアップするだけにとどまりません。ZDXは、導入企業にさまざまなビジネスメリットをもたらします。そのことを示す、A社のユースケースを紹介しましょう。
A社が直面していた課題
国内外に複数の拠点を展開するA社では、新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに従業員の働き方をリモートワーク中心型へとシフトさせ、今日ではオフィスワークとリモートワークのどちらでも従業員が任意に選べるハイブリッドワークを推進しています。
そうした働き方改革の流れに合わせて、A社では業務アプリケーションやコミュニケーション基盤のクラウド化を推し進め、結果としてA社のネットワークは、オンプレミスの環境や複数のクラウドサービスに対し、社内外の各所に点在する数千人に及ぶ従業員が多様な端末を通じてアクセスするという、管理の難しい複雑な構造へと変化していきました。
その中で社内において増え始めたのが通信系のトラブルです。例えば、自宅でのリモートワーク中にWeb会議システムなどのクラウドサービスの性能が大きく低下する、あるいは十分なレスポンス性能が確保されず、会議や業務の遂行に支障をきたすといったケースが増えてきました。
こうしたトラブルが発生するたびに従業員やマネジメント層から速やかな対処・改善を求める声が情報システム部門に寄せられましたが、ネットワーク構造が複雑化していたゆえに情報システム部門も問題原因がつかめず、問題解決・改善の一手が打てずにいました。結果として、会社の上層部からもクラウドサービス、ひいてはリモートワークへの憤懣(ふんまん)や疑念が噴出し、旧態依然としたオフィスワークやシステムへの逆戻りが起こりうる状況に至っていました。
ZDX導入がもたらしたもの
上記の課題を抜本的に解決すべく、A社の情報システム部門が選んだのがZDXの活用です。インターネットアクセスの保護を目的にZIAをすでに導入していたA社の情報システム部門にはZscalerソリューションに対する信頼と、ZDXが提供する可視化機能によって通信のトラブルシューティングがスピードアップできるという確信があったためです。
この情報システム部門の判断により、結果としてA社では次のようなビジネスメリットを手にすることができています。
- 情報システム部門の要員を増やすことなく通信トラブルへの対応力を強化:ZDXを使うことで、例えば、Web会議の通信にトラブルが発生した際に、その原因がクラウドサービスの障害にあるのか、それとも従業員の自宅にあるルータにあるのかを容易に、かつ即座に突き止めることが可能になります(図3)。これにより、A社では情報システム部門の要員を増やすことなく通信トラブルへの対応力を強化することに成功しています。
- 通信トラブルへのプロアクティブな対応と業務への影響の最小化:ZDXによって従業員が使うクラウドサービスの障害をスピーディに察知することが可能になりました。A社ではそのインシデントを即座に全社に周知し、情報システム部門への問い合わせ集中を回避しています。
- 通信品質の安定化による業務のスムーズな遂行:A社ではZDXの導入以降、通信トラブルによって業務が滞る頻度が減り、リモートワーク、クラウドの効率性・メリットを最大限に活かせるようになっています。

図3:ZDXによるトラブル原因究明のイメージ
「ZDX × ソフトバンク」の価値
ソフトバンクはZscaler社の最上位パートナーとして、数多くの企業に対してZIAの導入・運用の支援を提供しています。ZDXについても、ソフトバンクによる24時間365日の有人サポートを受けることも可能です。また、ネットワークサービスやWeb会議システムなどのクラウドサービスまでをワンストップでご提供し、高品質なデジタル体験の実現を支援します。