コロナ禍の2年間で日本人の働き方が変わった。リモートワークの導入に伴うICT活用が加速する中で、特に重視されるのがネットワークだ。リモートワークが広がり初めた当初は、ネットワーク帯域やVPN同時接続のリソース不足、リモートワーク環境におけるセキュリティ対策などが大きな課題になったことは、まだ記憶に新しい。
そのような背景からいま注目すべきが、ネットワークに強い企業だ。リモートワークではクラウドサービスの利用も多くネットワークが必須。クラウドを扱うICTベンダーは多いが、ネットワークに強く、基盤として持つICTベンダーは貴重だ。その1つがソニービズネットワークスである。同社は、高速インターネット接続サービス「NURO(ニューロ)アクセス」を軸に、SaaSやセキュリティ対策をワンストップで提供する「NURO Biz(ニューロ・ビズ)」を展開し、特にデジタル人材が不足する中小企業のビジネス変革を支える存在として。その評価を高めている。
前編に引き続き同社のキーパーソンである執行役員の柏原秀行氏、開発本部 本部長の平山智史氏と、デジタルトランスフォーメーション(DX)をリードしてきた青山学院大学 地球社会共生学部 教授の松永エリック・匡史氏(以下、エリック氏)に、DXパートナーとしての同社が強みや具体的なDXの実現イメージなどをうかがった。
NURO BizからAWS、勤怠管理、AI活用まで幅広いラインアップ
まずは、ソニービズネットワークスがDXパートナーとして強みとするソリューションを見てみよう。
昨今のビジネス環境に求められるネットワークからアプリケーション、マネージドサービスまでを一気通貫で提供する次世代ICTソリューション「NURO Biz」では、単体の高速インターネット接続サービス「NUROアクセス」、閉域網サービスの「NUROリンク」の単体ネットワークサービスと、ネットワークセキュリティ機器をレンタルするフルマネージド型の「NUROセキュリティ」、SaaS型の業務アプリケーションと統合ID管理や多要素認証などのセキュリティサービスを組み合わせた「NUROクラウド」など、回線+αのメニューをラインアップしている。ネットワーク以外にも今後自社開発のラインアップも拡充していくという。
執行役員 柏原秀行氏
SaaS以外にも、ネットワークインテグレーション(NI)+クラウドサービスとして、AWSの初期導入、運用自動化ツール、AWS環境までのセキュアなネットワークを一括で提供する「マネージドクラウド with AWS」も提供している。同サービスでは、ユーザーポータル機能をセットにして、中小企業の“専任担当がいない情シス”環境でも簡単にクラウドを自分で運用ができるようにしている。この他にも、ユーザーの困りごとを解消するためのオプションメニューをそろえている。「中小企業に向けてネットワークとAWS・クラウドの両方を設計・提案できるICTベンダーは希少」(柏原氏)で、ここも同社の強みだ。
これらに加えて、自社開発のSaaSも用意している。ここでは、昨今の働き方改革を支援するソリューションとして、自社実践でのノウハウを生かしたリモートワーク対応の勤怠管理システム「AKASHI(アカシ)」、リモートワークでの社員の健康管理を支援する「somu-lier tool(ソムリエツール)」を提供している。
さらに、ソニーが開発した人工知能(AI)技術を用いるビジネスの現場向け予測分析ツール「Prediction One Biz(プレディクションワン・ビズ)」や、AWS上のオプションメニューであるAI画像判別ソリューション「ELFE on AWS 導入支援サービス」を提供している。
「ソニーの研究所が開発したAI技術を活用し、当社が中小企業のお客さまの悩みを解決するためのサービスを提供しています。Prediction One Bizは、Excelを使うように、技術者以外の方でもトレーニングを通じて活用できる使い勝手を目指して開発しました。今後はAI領域を当社の強みにしていきます」(柏原氏)
UI/UXにこだわり、顧客の声から継続的に改善する
ソニービズネットワークスが提供するこれらのソリューションは、「IT人材がいない」「何をしたらいいか分からない」「DXのための予算がない」などの企業が抱える課題を踏まえて、いかに簡単に利用できるかを意識して開発し、いかに使ってもらえるかを考えて提供しているという。
「アプリケーション開発では、UI/UX(ユーザーインターフェース・エクスペリエンス=体験)にこだわっています。リリース前にはUI/UXを検証し、お客さまが求めているモノとなっているかテストしています。ただし、リリースする時点で100%完成させるというより、スピードを重視したリリースを実施し、継続的にお客さまの声を反映して改善することで本当の意味での完成を目指していくスタイルです。また当社のサービスは、より多くのお客さまに体験していただきながらフィードバックを通じて継続的に改善するため、提供価格にも拘りがあり、NURO BizもPrediction One Bizもリーズナブルに提供しています。」(平山氏)
顧客の声を反映するというソニービズネットワークスのサービス提供形態について、エリック氏は、「少ない機能でスタートし、利用者に新しい機能や機能の改善につながるアイデアを出してもらいながらサービスをトランスフォーメーションしていくのがDX時代の手法です。DXの成功モデルはパーペチュアルβ、つまりクイックにサービスを提供しクライアントと共にサービスを創り上げていくモデル。ソニービズネットワークスさんのビジネスモデルは、まさにその実例と言えるでしょう」と評価する。
エリック氏は、ソニーの“DNA”にも注目している。それは、「使いやすくする、使ってもらうために工夫をするということに、ソニーグループとして意識しているところです」(柏原氏)という、ユーザーを楽しませる“体験”を大切にしている点だ。
「DXで重要なのはUXであり、UXをより良いものへ変えていくことです。ソニーは、エンターテインメントをはじめコンシューマーのUXを最先端で変え続けてきた企業ですから、その感性で法人のお客さまとビジネスをしているところは、従来のICT企業とは全く違うでしょう。UXの発想でサービスを提供していくことで、可能性が無限に広がります。UXの1番のポイントは、クライアントをワクワクさせること。ソニーのDNAはまさにクライアントの期待を超えワクワクさせることなのですから。」
ワークマンが導入した現場で使うAI
開発本部 本部長
平山智史氏
ソニービズネットワークスが重視する使いやすさといったUX重視のサービスを活用してDXの取り組みを進めているのが、Prediction One Bizを導入している株式会社ワークマンである。
「ワークマン様は経営者主導でDXを推進し、Excelツールを現場でも活用する『エクセル経営』を実践しています。現場の視点とデータ活用を組み合わせ、自らビジネスを判断・行動する自走型社員を育成する“草の根のDX”を実現されているといえるでしょう。元々AIの利用を予定していなかったのですが、一部の需要予測に『AIを使えそうだ』と、現場から声があり、Prediction One Bizを導入されました。実際にPrediction One Bizで分析をしたところ、人では分からない予測分析や要素がデータとして出てきました。当社の提供する製品でワークマン様の現場がデータ分析から新たな気付きを得られたそうで、当社としてもうれしい事例です」(平山氏)
ネットワークの“ラストワンマイル”にも注目すべし
多くのICTベンダーがうたうDXの支援とは、システムインテグレーション(SI)サービスが一般的だろう。しかし、働き方改革やビジネスの変革として考えると、システム領域の話だけでは不十分だ。エリック氏は、DXにおいてネットワークイングレーション(NI)に注目すべきだと指摘する。例えば、在宅での学習あるいは業務を行う上で、オフィスや学校と家庭の間における通信の品質が非常に重要であるのは、言うまでもないだろう。通信の品質がユーザーの体験を大きく左右する“ラストワンマイル”は、NIの力が欠かせない。
「デジタルによる働き方がオフィスの外に広がる中で、企業や学校の内部ネットワークだけを増強しても、そこに接続するための自宅のネットワークが弱いと、仕事や学習に支障をきたします。実際に、会社が従業員の自宅の通信回線費用まで手当するケースも出てきています。仕事や学習、プライベート専用に通信回線を用意するのは現実的ではありませんから、ラストワンマイルまで一括管理してほしいというニーズは多いでしょう」(エリック氏)
こうした点においてもソニーグループのようなネットワークのインフラがあり、システムも含めてサービスをインテグレーションできるICTベンダーが頼もしい存在になる。
「リモートワークを取り入れている企業が従業員に、『家のことは勝手にやってください』という訳にはいきません。リモートワークのインフラとセキュリティ対策にしっかり取り組み、働きがいを高めて従業員の生産性を向上させていく方が、企業にとって重要でしょう。ご参考までNURO 光は、「会社主導」で従業員の自宅に高速回線を提供することができる「NURO 光 テレワーク支援サービス」を開始しており高評価をいただいています」(柏原氏)
重要領域のサービスを提供するソニービズネットワークス
ソニービズネットワークスは、これからのビジネスをどう考えるのか。柏原氏は、「サービスのラインアップを増やし、ソニーグループと連携しながら人や技術、サービス、経験値のリソースを生かしてお客さまの経営課題を解決するために活動していきたい」と語る。
青山学院大学 地球社会共生学部 教授
松永エリック・匡史氏
エリック氏は、ソニービズネットワークスが企業のDX推進において大事な役割を担っており、その重みが増していくと見る。
「コロナ禍において急激に広まったデジタルワークプレイスの働き方を起点に、たくさんの新しいニーズが生まれています。今、誰もが経験したことのない新しい世界になっています。これからのイノベーションは、お客さま企業と向き合うことの中にヒントがあり、多様な視点でお客さまと一体にとなり議論し掘り下げていくことで生まれます。また、Prediction One Bizのような精度が高く迅速な意思決定を可能にするAIを実現するには、NUROのような強固なネットワークが大事です。ほとんどのITベンダーは、ネットワーク上で利用するアプリケーションばかり注目しますが、実はネットワークがDXを支えるインフラであり、軽視できないポイントなのです」
エリック氏が述べるように、ソニービズネットワークスは、顧客企業のビジネスを断片的に支えるというより、ネットワークを含めた総合力で伴走しながらビジネスを変革し、成長させていく存在である。
「当社はお客さまに育てていただきました。お客さまの成長なくして当社の成長もありません。時に厳しいお言葉もいただきながら、さまざまな体験をお客さまに提供し、お客さまと成功していきたいですね」と柏原氏。平山氏も「さまざまなお客さまと、いろいろなアイデアを当社がソリューションとして形にするような関係でつながっていきたいですね」と語る。
「顧客体験」「ネットワーク」「共創」――DX時代に不可欠なキーワードが、ソニービズネットワークスにそろっている。