今日のPCサーバーはコモディティか?ユーザーのニーズに合わせて細分化、最適化された製品を供給するSupermicroのエンジニアリング力とは

世界トップクラスの生産台数を誇る大手サーバーメーカー、Super Micro Computer, Inc.(以下Supermicro)。コモディティ商品として見られがちなサーバー市場の中で、高いエンジニアリング力を武器に、独特のスタンスを貫き続けているメーカーだ。同社の強みや製品について話を聞いた。

自社開発のコンポーネントを組み合わせ
細分化されたニーズに応える製品とテクノロジーをいち早く提供

 「Supermicro(スーパーマイクロ)」というメーカーをご存じだろうか。米国カリフォルニア州サンノゼで1993年に創業し、現在でも本社および同社最大の製造拠点を同地に構える、大手サーバーメーカーだ。生産台数は年間1,200万台を超え、米国ハードウェアベンダー世界第3位につけている。

スーパーマイクロ カントリーマネージャー ジェームス シェー氏
スーパーマイクロ
カントリーマネージャー
ジェームス シェー氏

 「PCの自作を経験した方は、マザーボード等のコンポーネントのメーカーとして当社を認知しているかもしれません。確かに、今でもそういったコンポーネント製品の製造、販売を続けていますが、現在の主力は完成品のサーバー、さらにデータセンター向けのトータルソリューションへと取り扱い製品を拡充しています」と話すのは、日本法人のカントリーマネージャーを務めるジェームス シェー氏だ。

 Supermicroの強みは、全世界で3,000名を超える従業員のうちの約半数がエンジニアという、そのエンジニアリング力にある。マザーボードや電源ユニット、シャーシ、さらには拡張カードなど各種モジュールまで、全てを自社で設計、開発しており、それぞれの世代あたり数百種類のデザインを持っている。これらのコンポーネントを共通ビルディング・ブロックとして無数の組み合わせが可能になり、非常に多彩なニーズに応えることができるわけだ。

 「汎用品としてではなく、ユーザーのニーズに合わせた最適解を提供することが可能になるのです。例えばAI分野の中でも、ディープラーニングならディープラーニング用に、機械学習なら機械学習用に、それぞれ最適化したシステム環境をご用意できます。また当社では“Time to Market”も強く意識しており、例えばインテルが新しいプロセッサーをリリースすると、それを用いた製品をほぼ同時に市場投入することが可能です」(シェー氏)

 また、シニアディレクターの佐野晶氏は、「近年ではハードウェアに加え、管理ソフトウェアなども強化しているほか、グローバルな物流および保守サービス体制も整備し、サーバーに関するトータルソリューションを提供しています」と、その総合力をアピールする。

図:クラウド&エッジ基盤向けビルディング・ブロック 図:クラウド&エッジ基盤向けビルディング・ブロック
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高密度オールフラッシュや、多数I/Oなど様々な方向性をカバー
HPCやAI、エッジなどの領域にも“最適解”を提供

 主要コンポーネントだけで数百種ものデザインを持つだけに、Supermicroのサーバー完成品ラインアップは膨大だ。その中から同社の特徴的なモデルをいくつか紹介していこう。

◎分割型(ディスアグリゲート)基板で柔軟な構成を実現する「SuperBlade®」シリーズ

 「SuperBlade」シリーズは、多数のサーバーノードを省スペースに実装するブレードサーバ型の製品。その大きな特徴は、『リソース・セービング・アーキテクチャ』と呼ぶ、新たなコンセプトを取り入れた点にある。

図:リソース・セービング・アーキテクチャ 図:リソース・セービング・アーキテクチャ
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 「各ノードのプロセッサー基板とストレージ基板が分割構成になっており、必要なリソースの組み合わせで構成可能です。また、世代交代が早いCPU周辺だけを入れ替えることにより、追加投資を抑え、かつ環境に優しい形でアップグレードできます。電源部などは最長12年の設計寿命となっているため、コンポーネントを交換しつつもシステム全体としては長く使うことが可能です」(佐野氏)

◎拡張性に特化した「Max IO」シリーズ

 「Max IO」シリーズは、単一サーバーで高い性能を求める用途に向けたものだ。本シリーズの最大の特徴は、多彩な拡張カードを最大11枚も搭載できること。用途に合わせた拡張カードを組み込むことで、様々なニーズに対応できる。

 「例えば多数のGPUやFPGAを搭載すれば、動画配信のエンコードや、ディープラーニングなどの処理に効果的です。もちろんNVMeストレージを搭載することも可能で、その場合には高速ストレージサーバーとして役立ちます。このような、I/O特化型サーバーは、なかなか他にありません」(佐野氏)

図:「Max IO」シリーズ 図:「Max IO」シリーズ
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◎高密度ストレージ搭載サーバー

 Max IOシリーズでも大容量ストレージを実現することは可能だが、ストレージサーバーが目的ならば、より高密度な実装が可能な選択肢もある。Supermicroでは以前から高密度ストレージを実装できるサーバーを提供しており、HDDについてもシャーシを含め様々な工夫で省スペースに大量のディスクを搭載できるようにしていた。そしてサーバー用SSDに関しては近年、インテルなどが新たなフォームファクタを提唱しており、その規格を一早く取り入れている。

 「例えば、『EDSFF(Enterprise & Datacenter Storage Form Factor)』をベースとするインテル®データセンターSSDでは、E1.LとE1.Sの2種類を用意し、細長いE1.LのEDSFFは1本で最大32TBに達します。当社ではこれを32本搭載できる1Uサーバーを用意しました。1Uで最大1PBの大容量、かつ非常に高速なオールフラッシュストレージを実現できます」(佐野氏)

◎多数ノードを高密度に搭載可能な人気モデル「Twin」シリーズ

 HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)や仮想化基盤など、多数のサーバーノードを必要とするニーズに対応したシリーズには、「Twin」シリーズが人気だ。

 「Twinシリーズは、当社が業界に先駆けて投入した高密度シリーズです。専用に開発した省スペース型電源ユニットなどを駆使しており、『TwinPro』『BigTwin』シリーズなら2Uで4ノードの高密度サーバー搭載を実現する、人気モデルとなりました。EDSFF対応モデルはノードあたり10本搭載可能で、ストレージも高密度となっています」(佐野氏)

◎細かなニーズに対応するAI&ディープラーニング対応モデル

 シェー氏の言葉にもあったように、AIやディープラーニングなどの領域では、サーバーにもそれぞれ異なる最適解が存在している。Supermicroのラインアップには、そうした細かなニーズの違いに対応した製品もある。

 「AIなどの領域では、GPUやFPGAなどCPU以外のコプロセッサーが多用される上に、アプリケーションにより最適なトポロジも異なります。そこに対応すべくラインアップを拡充し続けているのです。また、新たなプロセッサーテクノロジーが登場すれば順次対応しており、例えばインテルが近くリリースするAIプロセッサーについても社内でプロジェクトが進行中です」(佐野氏)

図:AI&ディープラーニング専用モデルの例 図:AI&ディープラーニング専用モデルの例
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◎エッジコンピューティングも注力分野

 AIや5Gと対になって語られることの多いIoTでは、より現場に近い場所である程度の処理を行うエッジコンピューティングの流れが加速している。このエッジでの処理を担うエッジサーバーには、これまた今までにない要件が求められており、そこにもSupermicroは対応している。

 「データセンターでなく現場に設置するサーバーなので、ファンレスモデルや屋外用ケーシングオプションなど、設置環境を選ばず使えるラインアップを用意しています。最近ではエッジでの処理がリッチ化する傾向があり、GPU搭載など処理性能を高めたモデルも投入しました」(佐野氏)

図:Supermicroのエッジサーバー製品の例 図:Supermicroのエッジサーバー製品の例
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コンピューティングの将来を見据え
コモディティの中での「差別化」を進める

スーパーマイクロ シニアディレクター ソリューション・オプティマイゼーション エンジニアリング 佐野晶氏
スーパーマイクロ
シニアディレクター
ソリューション・オプティマイゼーション
エンジニアリング 佐野 晶氏

 新たなテクノロジー、新たな領域のアプリケーションに次々と対応しているSupermicroだが、今後も引き続き、新たなサーバーソリューションの開発を進めていく方針だ。

 「これからのITを考えると、5Gモバイル通信の商用サービスなどにより、モビリティ領域やスマート医療、クラウドゲーミングといったニーズが拡大していくことでしょう。それらに対しても、私たちは最良の選択肢をご用意していきます。また、環境に優しく、コストも節約できるよう、引き続き最先端の設計に努めていきます」と佐野氏は語る。

 環境面での取り組みは同社のミッションの一つにもなっており、例えばラインアップの中には通常より高温環境下での動作に対応したサーバーもある。高温でのサーバー稼働を可能にすれば、データセンターでは冷却を控え目にでき、電力コスト削減、さらにはCO2排出低減につながる。

 PCサーバーといえば、コモディティとして扱われる商品だというイメージがある。しかし、その中でもユーザーにとって性能面、アプリケーション最適化、TCOなど、様々な差別化が可能なのだ。

 「ニーズに合うものがラインアップになければ、カスタム品として製造できることがSupermicroの強みです。産業用などの組込コンピューター、ストレージなどのアプライアンス用ハードウェアも、ODMとして数多く提供しており、ニーズに合わせた対応は得意とするところです。コンポーネントまで自社開発しているので、カスタム品のサーバーでもサポートまで安心してご利用いただけます」(シェー氏)

 真にユーザーが必要としているものを作りながら、コスト面でも地球環境の面でも貢献するというのが、Supermicroのコンセプトなのだ。

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提供:スーパーマイクロ株式会社
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