企業にはいま大量のPCが導入されている。Windowsの更新に合わせて高性能な新規PCを配し、手元でできることを拡大する時代が続いた。しかしクラウドの時代が始まり、できることはクラウドで、手元はスリムが普通になりつつある。こうした時代において、新たなハードに投資せずとも、セキュアかつ最新のコンピューティング環境が手に入る創造的なソリューションを紹介する。
老朽・休眠PCを最新のセキュア・コンピューティング環境に変身させる
「ChromeOS Flex」
ChromeOS Flexは、老朽化したPCを最新のセキュア・コンピューティング環境として再生できる、クラウド時代ならではのソリューションだ。使いこなして、いささか疲れが見えるWindows 8、Mac book Air、Linuxマシンなどに最新の ChromeOS をインストールし、スマートに業務をこなせるマシンに変身できる。また ChromeOS は、ウイルス対策ソフトが不要とセキュリティ能力が高く、既存ネットワークのままでも最新のセキュア環境を利用できるようになる。
ChromeOS Flex の必要スペックは、以下の通りだ。
デバイスの最小要件
アーキテクチャ | IntelもしくはAMD x86の64 ビット互換デバイス |
RAM | 4 GB |
内部ストレージ | 16 GB |
必要仕様 | USBドライブからの起動をサポート |
これなら疲れが見えるマシンでも十分活用できる。「2011年のノートPC(Intel Core i7と16GBのRAM)に入れて快適に動いている」という報告もあった(https://japan.zdnet.com/article/35191418/p/2/)。
インストールも簡単だ。USBメモリを用意して、その後Googleの「ChromeOS Flex インストール ガイド」を参考にすれば、10〜20分程度で実行できるという。自分のマシンで利用できるか気になる方は、ChromeOS Flex「認定モデルリスト」が公開されており、現在400機種近くがリストに掲載されている(https://support.google.com/chromeosflex/answer/11513094)。
また、ChromeOS Flex は無料で利用でき、マシンが ChromeOS になることでウイルス対策ソフトが不要になりセキュアな環境に変身できる点も留意したい。昨今、IT環境で重要な点は、性能よりセキュリティという声も聞かれる。クラウド利用が増えたため、手元の機器の性能はあまり重要ではなくなった。それよりランサムウェアの被害が増え情報漏洩も後を絶たない。企業はこれ以上悩みを増やしたくないと情報システムに強固なセキュリティを求めている。
そのため多様な手法が登場しているが、ChromeOS はセキュリティ重視の時代に誕生しただけに、脆弱性を放置しない、本体のデータは標準で暗号化、ログアウト後に保存したデータや設定を全て消去可能など、OSそのものがセキュリティをしっかり確保しているので不安は少ない。
図:ChromeOSなら強固なセキュリティでビジネスを守れる
こうしたネイティブなセキュア機能を自分のマシンで構築できるなら、それだけでも ChromeOS Flexを利用する価値はある。実際、こうしたセキュリティ面から自社のWindowsマシンに ChromeOS Flex を対応した事例もある。
企業資産をChromeOS Flexで刷新するなら
「Chrome Enterprise」で効率的に
ChromeOS Flex で企業のIT環境をリフレッシュし最新セキュア環境に変身させたいなら、Chrome Enterprise の利用は必須と言えるだろう。Chrome Enterprise は、多数の ChromeOS デバイスを一括で管理できるライセンスで、Google の年中無休24時間のサポート、ログインするだけで必要な設定が一気に行われる「ゼロタッチ登録」、管理画面から個別のデバイスをコントロール可能、デバイスを落としたといったときは管理画面からデータの削除・無効化ができるといった、企業活用に不可欠であり管理の大幅な効率化が可能な機能が数多く用意されている。
特に企業のIT利用では、OS更新によるマシンの更新は必須と考えられている。新しいOSがよりリッチな性能を要求するからだ。しかしクラウド時代において、処理はクラウドで行い、結果のみを手元で確認するのであれば、高い性能の必要性は従来よりも低い。それに加えて、多額の費用と手間をかけてセキュリティを確保する必要があるなら、クラウド利用をコアにして、セキュリティ確保はOSに期待するという利用法も賢い選択肢の一つと言えるだろう。
「Windowsでしか動かないアプリケーションを利用している」といった場合でも、同等の機能を有するSaaSの利用を検討する、クラウド上でアプリケーションを実行し、結果をDaaS(Desktop as a Service)で利用する手法も存在する。このあたりは、さまざまな解決法が考えられるため、パートナーやディストリビューターなどに相談するとよいだろう。
市場では、このような ChromeOS のメリットに着目して、自社のIT基盤を ChromeOS で構築したり、既存のWindows環境をChromeOS Flex で刷新して、ランサムウェアから迅速に復旧した事例もでてきている。
日本郵便:リモートワーク環境に Chromebook を。
保管しているノートPCも ChromeOS Flexで再生
2021年、日本郵便は本社勤務の社員約2,000人のリモートワーク環境に Chromebook を採用した。Chromebook の採用は、より高いセキュリティを実現しつつ、今まで以上にシームレスにデータを共有したいという現場の希望によるものだ。
今後は本社に限らず Chromebook の拡大を進めていくという日本郵便だが、使わずに保管されているノートPCの活用も検討している。ChromeOS Flex を用いて旧端末を再利用し、既存資産の復活を目指しているわけだ。
Nordic Choice Hotels:ランサムウェアの被害を受けたWindowsマシンを
ChromeOS Flex で刷新し、短期間で復旧
Nordic Choice Hotelsは、220ある同社ホテルのうち90%がランサムウェア攻撃を受け5,000台のWindows PCに影響が出た。ホテルを数週間閉鎖することも想定される中、Windowsの代わりにセキュアな環境を構築できる ChromeOS Flex のインストールで復旧を目指すことになった。
従業員に ChromeOS Flex が入ったUSBと1ページのガイドを渡しただけで、最初の48時間で200店、2,000台のPCが ChromeOS に移行でき、ランサムウェア攻撃から復旧できた。Windowsシステムとネットワークをクリーンアップする場合従業員の多大な負担がかかるところが、ChromeOS Flex によってわずか1週間、で苦境から脱出できた。Google 管理コンソールで一元管理と保守が容易になることは、ITチームにとって大きなメリットになるはずだ。
図:ChromeOS Flexなら、古いPCを再利用できる
このように ChromeOS Flex を活用することで、休眠PCや疲れが見えるPCでも、最新のセキュア環境を実現した上で現場の業務に利用できる。キーボードショートカットが違うなど操作の違和感を唱える声も聞くが、そのために既存システムをそのまま上位移行して、かつセキュア環境を強化するためのコストや工数を考えると、「ChromeOS Flex + Chrome Enterprise」の組み合わせで、既存設備をベースに刷新を目指すほうが日本郵便の事例を見てもメリットは高いと言える。
Google ビジネスを展開したい販売店を
強力にサポートする、TD SYNNEX
これまで紹介してきたように ChromeOS に関するビジネスは、顧客にIT活用を提案する販売店にとって、いま大きなチャンスと言えよう。だが、それを自社のみで行っていくのが難しいと考えるなら、Google ディストリビューターの支援を活用すればよい。
TD SYNNEXは、Chromebook 含め ChromeOS が日本に上陸してから、ディストリビューターとして各社のビジネスを前進させているパイオニアだ。他にもディストリビューターは存在するが、ChromeOS が日本上陸してから、ずっと並走してきたことがTD SYNNEXの強みとなっている。ChromeOS に関わる多様なサポートが可能で、Google が提供するワークショップやトレーニングもTD SYNNEX経由で参加でき、多様なSaaSやDaaSサービスなど ChromeOS 環境に有用なサービスをワンストップで対応できる。
ChromeOS の企業利用の勢いを考えると、一括管理できる Chrome Enterprise は成長市場と言える。Windows に加え、ChromeOS も扱えることは、販売店にとって大きなアドバンテージになるだろう。TD SYNNEXでは、現在 Chrome Enterprise のパートナーを募集しているので、興味があれば相談してみてはいかがだろうか。