重要データのクラウド利用で高まる「ソブリンクラウド」の必要性
国内のクラウドサービス市場が大きく拡大している。その背景には企業のDXへの取り組みや2025年の崖問題、政府のクラウド・バイ・デフォルト原則などがあり、企業、中央省庁、自治体問わず、クラウドの利用はさらに加速していくと考えられる。
クラウドサービスの利用拡大と並行して、取り扱うデータ量も増加している。テキストだけでなく、画像、動画が大量に扱われるようになり、デバイス数の増大とデバイスの高度化が進み、さらに、今後はAIでデータによってデータが生み出される状況になっていくだろう。その結果、データを置く場所も必ずしも1カ所に集約することが最適ではなくなっており、マルチクラウドで複数のクラウドを組み合わせて利用し、使い分けるユーザーが増えている。
実際に商談を分析すると、機密情報や個人情報など重要なデータを扱うことが多い公共分野ではデータセンターとの併用、VPNやお客様の専用線・閉域網などネットワークサービスの使い方に関する要望が多くなっている。「クラウド・バイ・デフォルトを実践しようとする時に、重要なデータを置く場所について、従来のオンプレミスと同等の運用や情報セキュリティポリシーが適用されます。そのため、どのクラウドに移行するのか、どの部分をオンプレに残すのかを適切に判断し、最適化することが重要になっています」と富士通株式会社 サービスインフラ事業本部 クラウドビジネス事業部ビジネス企画戦略部 マネージャー(クラウドサービス企画担当) 佐藤 哲也氏は語る。さらに、サイバー攻撃が高度化する中で、マルチクラウドを利用する際のセキュリティの確保やリスク管理も重要になっている。
このように、重要なデータのクラウド利用における課題は、①取り扱いデータ量の増加、②マルチクラウド環境を意識した構成、③サイバー攻撃の高度化に伴うセキュリティ確保の3つにどう対応するのかに集約することができる。
こうした中、重要なデータを守るために、情報セキュリティやコンプライアンスに加えて、単一の国・地域内だけに限定したサービスの提供で他の国の法令の直接の影響を排除し、データやシステムの主権を担保する「ソブリンクラウド」の考え方に大きな注目が集まっている。これに対して、クラウドサービス事業を展開している富士通はどう考えているのだろうか。