独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター
「人・農地プラン」等の策定に活用できる「地域農業情報」
■ ポイント
・地域農業の現状や特徴を把握できる「地域農業情報」を、農林業センサス個票の組替集計等により作成し、Webで公開します。
・「地域農業情報」では、公表値では把握できない、担い手経営 1) の特徴や2020年までの販売農家数、離農に伴う供給農地面積の予測値等を旧市町村(2000年2月1日現在の市町村) 2) などの単位で示しています。
・この「地域農業情報」は、「人・農地プラン」等、地域農業の将来ビジョン策定の際などに活用できます。
■ 概要
農研機構 中央農業総合研究センターは、「人・農地プラン」等の策定の際などに活用できる「地域農業情報」を作成し、平成25年7月10日 12時00分に公開します。
どに活用できる「地域農業情報」を作成し、公開しました。 この「地域農業情報」では、都道府県、市町村及び旧市町村(2000年2月1日現在の市町村)単位で、農業経営体数や農地利用の現状等に加え、農業就業人口・販売農家数・離農に伴う供給農地面積の将来予測値を示すとともに、地域農業の担い手となる経営体の特徴と動向を組織形態 3) や営農類型 4) 等により明らかにしています。この「地域農業情報」を「人・農地プラン」等の地域農業の将来ビジョン策定に向けた合意形成等に活用することができます。
この地域農業情報は、webサイト( (リンク ») )からダウンロードして利用できます。
予算:運営費交付金
■ 背景
わが国の農業を支えてきた昭和一桁世代が後期高齢者となり、近い将来、農業労働力と農家数の激減、離農に伴う供給農地の増加が予想されます。この様な状況の中、担い手経営への農地集積による農業構造改革が求められています。
このため、農林水産省では、集落・地域における徹底した話し合いを通じて地域農業の将来ビジョンを描く「人・農地プラン」の策定を推進しています。
また、「攻めの農林水産業」の展開を図るためには、担い手経営を中心に規模拡大によるコスト低減や営農部門の多角化による農作物販売額増加等の経営展開が必要です。
そのためには、担い手経営に期待される経営規模や営農類型等を明らかにし、経営展開に必要な技術開発や方策等を検討する必要があります。
■ 研究の経緯
そこで、都道府県、市町村及び旧市町村単位で、地域農業の現状と将来動向の予測とともに、担い手経営の特徴を明らかにしました。
将来動向の予測は、農林業センサス個票の組替集計を行い、近年の農業構造変化の要因を分析し、それを基に2020年までの離農に伴う供給農地面積等の推計を行いました。
また、担い手経営の特徴を把握するため、組織形態・営農類型・経営規模等の観点から担い手経営の集計を行いました。営農類型は、「稲作と麦作の複合経営」のように、経営実態を具体的にイメージできる営農類型を設けて集計し、主要な営農類型の経営体数、経営規模等についても明らかにしました。
■ 研究の内容・意義
1. この「地域農業情報」では、農林業センサス個票の組替集計により、公表値では把握できない、担い手経営の営農類型(例;稲作と麦作の複合経営)の特徴や、担い手経営への農地集積状況等を旧市町村などの単位で、明らかにしています。また、あわせて、農業就業人口・販売農家数・離農に伴う供給農地面積の予測値を示しています。
2. 農政担当者は、この「地域農業情報」に示された、離農に伴う供給農地面積の予測値・担い手経営の営農類型・各類型の経営体数・経営規模等の情報を活用して「人・農地プラン」等の地域農業の将来ビジョン策定に向けた合意形成を促すことに活用できます(図1)。「地域農業情報」は、Web上で該当地域を選択することによりダウンロードできます(図2)。
3. この「地域農業情報」では、地域農業の現状と将来動向の予測のほか、地域農業の担い手経営の特徴を、組織形態・雇用の有無・営農類型別に提示しており、農地面積の増加している営農類型やその経営規模等を把握できます。
「地域農業情報」及び活用の具体例については、別紙1、2をご参照下さい。
■ 今後の予定・期待
市町村等においては、販売農家数や供給農地面積の予測値等を用いることにより、「人・農地プラン」等の地域農業の将来ビジョンの策定やブラッシュアップを図ることが期待されます。
研究面では、「地域農業情報」で明らかにされた、各地域の主要な担い手経営の収益構造や技術構造等を分析し、経営展開のネックとなっている課題を摘出し、課題解決を可能にする技術開発課題や方策等の検討・提案を行う予定です。
■ 用語の解説
1)担い手経営
この「地域農業情報」では、(1)農地面積4ha以上の販売農家(家族による経営体)、または、(2)法人化している組織経営体(家族によらない経営体)を、地域農業の担い手経営としています。
2)旧市町村
旧市町村とは、2000年センサス実施時点(2000年2月1日現在)の市町村を指します。2000年前後の平成の大合併により、広域な合併も進んだことから、より小さな地域レベルでも「人・農地プラン」等の策定に活用できるように、この「地域農業情報」では旧市町村単位でも集計値を示しています。
3)組織形態
構成員から見た農業経営体の分類です。この「地域農業情報」では、農業経営体として販売農家と法人化している組織経営体を取り上げていますが、前者をさらに経営発展の観点から常時雇用ありと常時雇用なしに分けて集計しています。
4)営農類型
作目の組み合わせから見た農業経営体の分類です。この「地域農業情報」では、農産物販売金額の上位3作目の組み合わせで類型化しています。担い手経営を営農類型視点から捉えることにより、具体的な営農支援方策を検討することができます。
【参考】
1. 将来動向の予測方法
予測値は、農業就業人口などの直近の動向解析に基づいて推測した値であり、今後の社会情勢の変化等により現実には乖離することもあります。
農業就業人口の予測は、コーホート法により年齢階層別の農家人口を予測し、2010年の各年齢階層の就農率(農業就業人口/農家人口)を乗じて算出しています。
販売農家数の予測は、農業地域ごとに、経営規模階層・経営主年齢・農業就業人口を適宜組み合わせて2000年から2005年の販売農家の動態表を作成した上で、2010年の販売農家数の予測を行い、当該予測値と実数値とを比べて最も適合する組み合わせを確認します。その組み合わせを用いて2005年から2010年の動態表を作成して2015年、2020年の予測を行っています。
離農による供給農地面積は、経営規模階層別の販売農家数の離農予測値に、2010年の各階層の平均農地面積を乗じて推計しています。
2. 東日本大震災の被災地域の情報
東日本大震災の被災地域では、農業生産基盤等への被害が甚大なことから、「地域農業情報」では2010年時点の情報提示にとどめ、予測値の提示は行っていません。
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