◎GARFIELDが心房細動に抗凝血療法を有効利用していないとの研究データ発表

Thrombosis Research Institute

From: 共同通信PRワイヤー

2013-09-04 10:20

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◎GARFIELDが心房細動に抗凝血療法を有効利用していないとの研究データ発表

AsiaNet 54075
共同JBN 0980 (2013.9.4)

【アムステルダム2013年9月3日PRN=共同JBN】
 *世界医療現場抗凝血(抗凝固)治療法レジストリー(Global GARFIELD Registry)は2013年欧州心臓学会会議(ESC CONGRESS 2013)の講演で、危機的状況の心房細動(AF)患者人口に施した実際の治療パターンに関する転帰データが公表された。

革新的な学術研究イニシアチブで心房細動患者国際観察研究である世界医療現場抗凝血治療法レジストリー(GARFIELD)の初の患者集団で実施した1年間の転帰データが、下位集団の心房細動(AF)患者に脳卒中にかかるリスクが高まるとの考察を示した。ESC Congress 2013で今週発表された8つの研究論文の所見はすべて、AF患者が脳卒中にかかるリスクを著しく下げることで知られる抗凝血療法が、これら危険にさらされているAF患者に間で一貫して余り利用されていないことを示している。

GARFIELDはロンドンの血栓症研究所(TRI)が後援すする国際運営委員会が主導している。それは心臓の2つの上部室(左心房、右心房)が規則正しく鼓動するというより震えて、脳卒中を含む命を脅かす合併症になりうる共通の症状であるAFの世界的な負担を理解することを目指す国際的観察によるマルチセンターでの将来的研究である。患者集団の最高2%がAF患者である(1)。AFが関係する脳卒中は、極めて効果的な予防治療法があるにもかかわらず、依然として主要かつ社会的にますます大きな負担になっている。

ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン(University College London)の外科教授で、ロンドンの血栓症研究所(TRI)所長であるロード・アジェイ・カッカー教授は「GARFIELDによるこれら1年間の研究データは、必ずしも日常の臨床行為(治療)でフォローされていない。新しい所見を総合すれば、AF患者の脳卒中リスクに関する臨床試験で観察された内容を新たに強調するものである。研究は高リスクのAF患者の脳卒中を防ぐより一貫した最善策と最善の選択肢の採用を通じて、患者の転帰を高める機会になるとことを示唆している」と語った。

ESC Congress 2013で発表されたデータは、5つのGARFIELD集団の最初のものである。最初となる集団は、19カ国の無作為に選定された540の場所から応募され、研究者が認定する脳卒中にかかる新たなリスク要因が少なくとも一つある、総数1万614人の弁膜症以外のAF(NVAF)患者が含まれる。これら患者のうち5089人は過去にさかのぼって妥当性を検証する患者集団として募集され、5525人は今後を予測して募集されたもので、これら研究論文の中の研究対象集団を構成している。AF管理に関するESCガイドラインは、脳卒中にかかる高リスク患者が、禁忌薬にならない限りビタミンK拮抗薬(VKA)による抗凝血療法を処方することを推奨している。高リスクの脳卒中は、CHA2DS2-VAScリスクスコアで>/=2として定義される。これまでに報告されたベースラインデータは、集団1(Cohort 1)では患者の82.6%がCHA2DS2-VAScリスクスコアで>/=2だが、これら患者の62%が抗凝血療法を受けていただけであることを示した。

ESC Congress 2013で発表された高リスク層研究データは、2009年12月から2011年10月の間に今後を予測して募集された5523人の患者について得られた。

この1年研究データは予備的段階なもので、慎重な扱いで解釈されるべきであり、一つの口述発表と7つのポスター発表が含まれる。口述発表は最先端技術:急性冠動脈症候群-現行ガイドラインおよび将来展望と題して、このトピックで最高評価されている4つの論文に焦点を当てたセッションだった。

データのハイライトは、関連する交絡因子に向けて調整されたもので、以下を含む。

口述発表
 *急性冠動脈症候群(ACS)を持つかACSにかかっていない(それぞれAF患者48.9% vs. 51.7%)AF患者では、あらゆる病因による死亡、脳卒中/全身性塞栓症(SE)、大量出血、1年後の反復性(再発性)ACSなど同等のリスクのあるなしにかかわらず、ビタミンK拮抗薬(VKA)の利用が目立って減少。
  -患者の10.1%(n=559)はACS病歴を持ち、その患者のうち44.0%(n=246)がステント手術の履歴があった。

ポスター発表
 *これまでに脳卒中もしくは一過性脳虚血発作(TIA)にかかったAF患者では、よりリスクプロファイルが高く、高血栓薬の利用頻度が大きくなる。
  -脳卒中/TIAの前歴のあるAF患者は、死亡リスクが44%高まり(HR1.44, p=0.037, HRは*参照)、これまでに脳卒中/TIAを患ったことのない患者と比較して、診断後1年以内に脳卒中/TIAにかかりやすくなる(HR 2.27, p=0.004)。
  -脳卒中/TIA歴のあるAF患者はそのような病歴のない患者よりビタミンK拮抗薬(VKA)を投与される量が多くなった(58.1% vs. 50.5%)。しかし、これら抗拮抗薬は両グループについて利用度は目立って低かった。

 *リズムコントロールを受けた(正常な心拍リズム回復のための医薬品投与)AF患者は、レートコントロールを受けた(心拍数を正常近くに低めるための医薬品投与)AF患者より死亡リスクは低くなった。
  -治験された患者の中で、38.1%(n=2,107)はリズムコントロールを受け、49.8%(n=2,754)はレートコントロール治療を受けた。
  -リズムコントロール治療を受けたAF患者は、レートコントロール治療を受けた患者と比較して、死亡リスクが28%低くなった(HR 0.72, p=0.041)。
  -リズムコントロールを受けた患者はより若年層で、低い脳卒中リスクスコアだった。
  -2つのグループは多くの側面で異なり、所見に影響を与えるいくつか残存する交絡変数がありうる。

 *冠動脈疾患(CAD)のあるAF患者はより高いリスクプロファイルがある。
  -治験患者の19.3%(n=1,066)はCADにかかり、これら患者はCADにかかっていない患者と比較して、より高齢で、男性の方が多く、抗血小板療法(AP)との組み合わせによるビタミンK拮抗薬(VKA)投与を受けることが多い。
  -CADにかかったAF患者は、非CAD患者より急性冠動脈症候群(ACS)にかかるリスクが倍増した(HR 2.49, p=0.016)が、死亡、脳梗塞/SEおよび大量出血と同等のリスクもあった。

 *永続性心房細動と比較して発作性心房細動にかかった患者は、脳梗塞/SEリスクにかかるレベルは同等だが、VKA投与率はより低かった。
  -治験患者の24.4%(n=1,348)は発作性心房細動で、永続性心房細動の患者は14.2%(n=785)だった。
  -VKA単独あるいはAPとの組み合わせは、39.1%の発作性心房細動患者に、61.0%の永続性心房細動に用いられた。
  -死亡リスクは、永続性心房細動より発作性脂肪細動の患者で38%低かった(HR 0.62, p=0.057)。
  -脳卒中/ESリスクは双方の患者グループで同程度だった(HR=1.18, p=0.72)。

 *アジアからの新たに診断されたAF患者は欧州のそれと比較して、脳卒中リスクはより低減し、抗凝血薬を投与する頻度も低かった。
  -患者の28.7%(n=1,587)はアジアから登録され、欧州から登録されたのは58.6%(n=3,237)だった。
  -アジアの患者は平均して、男性で若年層が多く、肥満度指数も低く、欧州の患者と比較して共存症も少なかった。
  -VKA投与度はリスク水準にかかわらず、アジア(35.8%)と比較して欧州(61.4%)の方が目立って高く、利用可能な脳卒中防止療法の利用でかなりの差異が目立った。

 *2つのグループの間で死亡率と脳卒中に関して同様の率であったが、新たなAF患者は永続性AF患者よりVKAの投与頻度は低かった。
  -患者の44.8%(n=2,477)は新たなAF患者で、永続性AF患者は14.2%(n=785)だった。
  -VKA単独もしくはAPとの組み合わせの利用は、永続性AF患者(61.0%)と比較して、新たなAF患者(52.1%)では低かった。
  -脳卒中/SEリスクは、その差異(HR 1.47, p=0.36)は統計的に重要なものではないが、新たなAF患者と比較して永続性AF患者では47%高かった。
  -新たなAF患者は年齢がやや若年だった。

 *脳卒中防止目的での利用を推奨するガイドラインがあるにもかかわらず、心臓を正常洞調律にする技術である直流コンバージョン(DCC+)技術を受けた圧倒的数のAF患者の間では抗凝血薬の利用が少ない。
  -新たにAFと診断されたにしても、診断から4カ月以内にDCCを受けることを登録された患者は、11.1%(n=614)というわずかな数の患者にとどまった。
  -DCCを受けた患者はそのような手続きを受けない患者と比較して、VKA療法をより受ける機会が多くあった。しかし、DCC+患者の6.9%は、抗血栓症療法は一切受けず、APのみの患者が12.5%だった。
  -1年ですべての病因による死亡、脳卒中/SEあるいは大量出血の結果は、グループ間で差異はなかった。

▽GARFIELDについて
GARFIELDレジストリーは新たにAFと診断され、一つ以上の追加的な脳卒中のリスク要因がある男女を観察するマルチセンターの国際的なプロスペクティブ研究である。米州、東西欧州、アジア、アフリカ、オーストラリアの50カ国にある最低1000カ所のセンターからの5万人の新たに診断されたAF患者をプロスペクティブにフォローする。

GARFIELDは脳卒中のリスクのあるAF患者の最大のプロスペクティブ・レジストリーである。この病気の現実生活での負担を明らかにし、この患者グループでみられる血栓塞栓性、出血性の合併症の影響について知見を提供する。代表的で多様な患者グループ、示唆的な小グループの間で抗血栓治療のパターン、ケアと臨床結果を改善する可能性のある機会についての理解を高める。これは医師と健康管理システムが患者とグループに最善の結果を保証するための技術革新を適切に採用するのを助ける。

レジストリーは2009年12月に開始された。GARFIELDのプロトコルの4つの重要な設計部分はAFについて包括的で代表的な説明をしている。

 -プロスペクティブで新たに診断された患者の5つのシークエンシャルなグループで個別の期間の比較を容易にし、治療と結果の変化を説明する。

 -研究施設は慎重に割り当てられた国立のAFケア状況から無作為で選択され、募集した患者グループが代表的であるようにする。

 -選択の偏りを排除するために治療法に関わらず継続的に参加できる患者を募集する。

 -フォローアップ・データは毎日の診断行為における治療決定、結果の包括的なデータベースをつくるため、診断後最短2年、最長8年間収集する。

研究に含まれる患者は過去6週間以内に非弁膜性AFと診断され、少なくとも一つの追加的な脳卒中のリスク要因がある患者で、脳卒中につながる可能性のある血塊を予防するための抗凝固療法の候補になれる患者である。患者の脳卒中リスク要因を特定するのは研究者の臨床判断に任される。患者は抗凝固療法を受けるかどうかに関わりなく受け入れられ、現在、将来の治療戦略と失敗は患者のリスク特性と共存症との関係で適切に理解される。

データは最長8年間の延長フォローアップ期間にわたって収集され、以下の結果が含まれる。

血栓塞栓性脳卒中、TIA(ミニ脳卒中)、MI/ACS、身体のほかの領域に影響する血塊、出血事象、療法の持続、不継続率、医療コンサルテーションと入院、緊急および非緊急処置の必要、心臓血管病の罹患率、すべての原因による死亡率

ビタミンK抗凝固剤の治療を受ける患者では追加の結果データに、安全で治療的に効果のある抗凝固レベルを維持するのに必要なモニターの頻度とタイミング、抗凝固療法による合併症の管理に必要な処置が含まれる。

GARFIELDレジストリーはバイエル・ファーマAGからの無制限の研究資金援助で可能になっている。

▽AFの負担

世界人口の最大2%がAFにかかっている。約600万人の欧州人がこの不整脈にかかっており、人口の老齢化にしたがって2050年までに患者は少なくとも倍増すると推定されている。欧州連合の約450万人、米国の260万人がAFにかかっており、推定によれば2014年までにアジア・太平洋地域の1200万人以上がAFにかかることが示唆されている(1,2,3,4)。AFは脳卒中のリスクを5倍に増加させ、脳卒中全体の5分の1はこの不整脈が原因とされている。AFに伴う虚血性脳卒中は死に至ることが多く、生き延びた患者はより重症の障害が残ることがより多くなり、ほかの原因による脳卒中患者より再発する可能性が高い。その結果、AF関連の脳卒中の死のリスクは倍増し、ケアのコストは50%増加する(5)。この症状は心房の一部が調整されていない電気信号を発して心室に早すぎる不規則な拍出を起こさせ、血液が完全に送り出せない時に起こる(6)。その結果、血液が貯留して固まり、先進国でも発展途上世界でもナンバーワンの死因である血栓を起こす。

血塊が左心房を離れると、身体のほかの部分、特に脳の動脈にとどまる可能性がある。脳の血管内の血塊は脳卒中を起こす。致命的な脳卒中の92%は血栓によって起こる(7)。AFのある人は心不全、慢性疲労などの心拍問題のリスクも高い(8、9)。脳卒中は世界の長期傷害の主な原因である-脳卒中にかかった人のうち毎年500万人が終生障害者となる(10)。

▽血栓研究所(Thrombosis Research Institute、TRI)について
TRIは慈善財団であり、血栓と関連の障害の研究に専心している多診療科目研究所である。TRIの使命は血栓研究、教育に優秀性を提供し、血栓の予防、治療のための新戦略を開発し、それによってケアの質を向上させ、臨床結果を前進させ、健康管理コストを減らすことである。TRIはユニバーシティー・カレッジ・ロンドン・パートナーズ学術健康科学システムズのメンバーである。

詳しい情報は (リンク ») へ。

*  HR = ハザード比。あるグループとほかのグループである事象(例えば死亡)がどの程度の頻度で起こるかを示す数値。

(参照)
     (1) Jamil-Copley S, Kanagaratnam P.  Stroke in atrial
fibrillation-hope on the horizon? J R SOC INTERFACE. 8/16/13.
Available at: (リンク »)

    (2)The Lancet Neurology. Stroke prevention: getting to the heart of the matter.8/16/13. Available at:
(リンク »)

     (3) Thrombosis Advisor. Thrombosis Facts. 8/16/13.
Available at: (リンク »)

    (4) Chinese Medical Journal 2004; 117 (12): 1763-176.
Available at:
(リンク »)

     (5) European Society of Cardiology. Guidelines for the Management
of Atrial Fibrillation. 8/16/13.
(リンク »)

     (6) National Heart Lung and Blood Institute. What is Atrial
Fibrillation. 8/16/13. Available at:
(リンク »)
     
     (7) Thrombosis Research Institute. About Thrombosis. 8/16/13.
Available at: (リンク »)

     (8) Rockson SG, Albers GW. Comparing the guidelines: anticoagulation
therapy to optimize stroke prevention in patients with atrial fibrillation. J
Am Coll Cardiol 2004; 43(6):929-35.
     (9) American Heart Association. Why is AF a problem?. 8/16/13.
Available at:
(リンク »)

     (10) World Heart Foundation. The Global Burden of Stroke. 8/16/13.
Available at:
(リンク »)

ソース:Thrombosis Research Institute

▽問い合わせ先
     Lauren Brunt, Ogilvy Public Relations,
     Tel: +1-646-201-6742

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