公益財団法人鉄道総合技術研究所(理事長:熊谷則道 以下、鉄道総研)、株式会社大林組(社長:白石 達)、新日鐵住金株式会社(社長:進藤孝生)は、共同開発したシートパイル補強工法について設計・施工マニュアルを改訂し、講習会を開催しましたのでお知らせします。
シートパイル補強工法は、鉄道総研、株式会社大林組、新日鐵住金株式会社の3社が共同開発した既設構造物基礎の耐震補強工法です。本工法は、用地や桁長さなどの制限がある場合に有効な耐震補強工法であり、経済性に加えて施工性にも優れています。これまでに50基以上の施工実績があり、今後の基礎の主要な耐震補強工法の一つになると考えます。
【設計・施工マニュアルの改訂】
シートパイル補強工法については、2011年に「シートパイルを用いた既設鉄道構造物基礎の耐震補強設計マニュアル(案)(第2版)」を作成していますが、このたび「鋼矢板を用いた既設鉄道構造物基礎の耐震補強工法(シートパイル補強工法)設計・施工マニュアル(案)(第3版)」(以下、新マニュアル)とタイトルを改めるとともに、以下のとおり内容を改訂しました。
(1)鉄道標準の性能照査型設計法への改訂に対応
2012年に「鉄道構造物等設計標準・同解説(基礎構造物)」が性能照査型に改訂され、17章に「シートパイル基礎工法」が導入されています。新マニュアルでは、この改訂に完全対応するとともに、より実務者向けに、具体的な設計・施工の取り扱いを取りまとめました。
(2)液状化地盤への適用拡大
構造解析モデルの地盤反力係数および上限値に、液状化の程度に応じた低減係数を乗じることで「鉄道構造物等設計標準・同解説(耐震設計)」に準拠した設計応答値の算定法が適用できます。
(3)先端加工鋼矢板の適用
先端部に閉塞(へいそく)断面を設けた「先端加工鋼矢板」によって、鋼矢板の鉛直支持力が向上します。「先端加工鋼矢板」は、N値20~30程度の中間層(非液状化層)においても、地盤強度に応じた一定の支持力があるため、新マニュアルでは中間層の打ち止めにも適用できます。
なお、新設構造物については、2014年に「鉄道構造物に適用するシートパイル基礎の設計・施工マニュアル(案)(第3版)」を作成しています。
【「鋼矢板を用いた既設鉄道構造物基礎の耐震補強工法(シートパイル補強工法)設計・施工マニュアル講習会」の開催】
鉄道関連工事に従事する事業者、コンサルタント、建設会社を主な対象として、新マニュアルに基づいた「鋼矢板を用いた既設鉄道構造物基礎の耐震補強工法(シートパイル補強工法)設計・施工マニュアル講習会」を開催しました(場所:新日鐵住金本社、開催日:11月16日)。
講習会には、約200人の方にご出席いただき、新マニュアルをベースとして、シートパイル補強工法の概要説明、設計法、試設計事例、施工手順などを紹介しました。質疑応答の時間には液状化地盤への技術展開に関する議論が交わされました。
【特許の取り扱いについて】
本工法に関しては、6件の特許を取得しています。また、これらの特許の実施許諾に際しては「許諾対象となるシートパイル補強基礎の設計が特許の効果を適切に発揮できる諸元となっていること」を確認させていただいております。つまり、特許の効果が発揮される諸元とするためには、既設基礎と鋼矢板とが組み合わされた複合基礎としての挙動を適切に評価して計画・設計を行う必要があります。シートパイル補強基礎の確実な運用に向けてサポートいたしますので、計画段階から新マニュアルに記載の連絡先にご相談ください。なお、条件によっては計画・設計段階で別途検討費用が必要となる場合があることをご承知おきください。
新マニュアルがシートパイル補強工法による既設鉄道構造物基礎の耐震補強設計・施工の一助となるとともに、鉄道の安全・安心に寄与すれば幸いです。
(お問い合わせ先)
公益財団法人鉄道総合技術研究所 総務部広報 TEL:042-573-7219
株式会社大林組 CSR室広報部広報第一課 TEL:03-5769-1014
新日鐵住金株式会社 総務部広報センター TEL:03-6867-3419
お問い合わせにつきましては発表元企業までお願いいたします。