・2016年の全世界のディール情報リーク率は8.6%、これは2015年と同水準で、これまでの6年間で最低だった2014年の6%を上回る
・2016年の日本のディール情報リーク率は12%と前年より大幅に上昇。M&Aディール件数の多い10か国・地域では下位3位に
【東京、2017年7月25日】本日、イントラリンクス合同会社(東京都千代田区、代表:村岡聡)は、Synchronoss Technologies, Inc. (シンクロノス・テクノロジーズ、NASDAQ: SNCR) の子会社であるイントラリンクスとシティ大学ロンドン・カスビジネススクール(City University: Cass)による新しい共同研究を「イントラリンクスM&A情報リークスレポート 2017」として発表しました。そのレポートによると、2016年に発表されたM&A(吸収・合併)ディールのうち、発表前に情報がリーク(漏えい)したディールの割合は8.6%を占め、リークのあったディールの平均価値は、リークがなかったディールに比べ、2,100万米ドル高かったことが判明しました。
全世界のM&Aディール情報リーク率は8.6%で前年(2015年)から変わっておらず、この6年間で最低水準を記録した2014年の6%を上回りました。2014年まで全世界のディール情報リーク率は6年連続で下降傾向にありました。2015年と2016年のリーク率上昇は、ここ数年、全世界の金融規制機関がディール情報のリークを抑制するための新しい規制の実施に取り組み、市場における不正行為とインサイダー取引に対する強制措置や罰金が強化されているのとは矛盾した結果となっています。
■ディール件数上位10カ国・地域のリーク率
M&A活動が最も活発な10カ国・地域のうち、2016年にディール情報のリークが多い上位3カ国はインド(16.7%)、韓国(16.1%)、日本(12%)でした。 逆に、2016年にディール情報のリークが少ない下位3カ国はカナダ(4.3%)、フランス(4.3%)、イギリス(7%)でした。日本、韓国、ドイツ、オーストラリア、イギリス、フランスでは、2016年にディール情報のリーク率が前年に比べて上昇した一方、インド、香港、アメリカ、カナダでは減少しました。
買収ターゲットの 2016年(順位) 2015年(順位) 2009-2016年(順位)
上場場所
インド 16.7% (1) 20.0% (1) 15.8% (1)
韓国 16.1% (2) 5.3% (6) 10.2% (4)
日本 12.0% (3) 3.1% (7) 5.1% (9)
香港 10.0% (4) 12.9% (2) 14.6% (2)
アメリカ 9.8% (5) 12.6% (3) 7.6% (6)
ドイツ 9.1% (6) 0.0% (10) 9.3% (5)
オーストラリア 7.5% (7) 3.0% (8) 4.0% (10)
イギリス 7.0% (8) 6.7% (5) 12.5% (3)
フランス 4.3% (9) 0.0% (9) 5.4% (8)
カナダ 4.3% (10) 12.5% (4) 5.9% (7)
■M&Aディール情報がリークする理由
M&Aディール情報をリークすることには明確な利点があります。情報がリークしたディールでは、ターゲット企業の買収をもくろむ企業間で競争が高まり、ターゲット企業の買収プレミアムが高騰し、さらには評価額が高騰します。この事実は、本レポートが分析した8年間すべての年で見られます。2009~2016年のターゲット企業の買収プレミアム中央値は、情報のリークがあった場合が47%であったのに対し、リークがない場合は27%で、その差は20%でした。これを金額で見ると、2016年のターゲット企業の買収プレミアム中央値は、ディール情報がリークした場合とリークしなかった場合を比較すると、2,100万米ドルの差がありました。つまり、情報がリークしたディールでは、ターゲット企業の株主に平均2,100万米ドルの利益が与えられたことになります。
情報がリークしたディールでは、リークがなかった場合に比べ、ターゲット企業に対する競合入札率が高くなる傾向もあります。2009~2016年に1件以上の競合入札を得た割合は、情報がリークしたディールが6.5%であったのに対し、情報リークがなかった場合は5.8%でした。
さらに、情報がリークしたディールの方が、成立確率が高くなったという証拠もあります。過去3年間(2014~2016年)の全世界の平均では、情報がリークしたディールの成立確率は、情報がリークしなかった場合を、ほぼ5%上回っていました。
このような分析結果は、ディール情報のリークに、もう1つ明らかな利点がある可能性を示しています。売り手と買い手の間のマッチングが適切に行われる可能性です。ディール情報のリークは、「最適な」買い手、すなわちターゲット企業との最も大きな相乗効果を持つ買い手(そうした買い手は最高値を付けられるため、情報がリークしたディールのターゲット買収プレミアムも高騰する)、および、ディール成立のための最大のインセンティブを持つ買い手を引き出す可能性があります。
イントラリンクスのストラテジー/プロダクトマーケティング担当バイスプレジデントのフィリップ・ウィチェロは、次のように述べています。「イギリスなどの10年前にディール情報のリークが猛威を振るった市場では、リーク率が著しく減少しました。これは、市場における不正行為に対し新しい規制が適用され、規制施行が厳格化されたことを反映しています。インドや香港など、ディール情報のリーク率が比較的高い水準の国・地域でも、市場における不正行為およびインサイダー取引への取り組みが活発化しています。全体として、ディール情報のリークにおいては、明らかなメリットだけでなくリスクも考慮する必要があり、2016年には利点が減少したようです」
カスビジネススクールM&Aリサーチセンター ディレクター スコット・ムーラー教授は、次のように述べています。 「ターゲット企業がディール情報をリークするのはなぜかと言えば、それには常に複数の理由があると言えるでしょう。そのため、ディール情報のリーク率が0%またはその近似値になる可能性は低いと考えられます。しかし、情報がリークされたディールの割合は概ね横ばいを維持し、10年前の水準を下回ることは楽観視してよいでしょう」
■レポートの入手方法
本研究の結果に関する詳細は、こちら からレポートをダウンロードしてご覧ください。
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■カスビジネススクールについて
カスビジネススクール(City University: Cass)は、ワールドクラスの知識、イノベーティブな教育、活発なコミュニティを特徴とする、シティ大学ロンドンが誇る世界有数のビジネススクールです。カスビジネススクールは世界最高峰の金融街の中心に位置し、シティ・オブ・ロンドンと起業家が集うテック・シティに強力なパイプを有しています。AACSB(Association to Advance Collegiate Schools of Business)、AMBA(Association of MBAs)、EQUIS(European Quality Improvement System)からトリプルクラウン認定を受けたグローバルエリート・ビジネススクールに数えられています。
詳細は、www.cass.city.ac.uk にアクセスするか、Twitterで@cassbusinessをフォローしてください。
■イントラリンクスについて
イントラリンクスは Synchronoss Technologies, Inc. (NASDAQ: SNCR) の子会社です。1996年に設立され、SaaS(Software-as-a-Service)ソリューションをビジネスコラボレーションに活用するパイオニアとして、債券市場およびM&Aコミュニティをはじめとした企業の業務を変革しました。現在、イントラリンクスは、情報への管理を損なわないコンテンツ共有やビジネスパートナーとのコラボレーションの実現を通じて、グローバル企業をサポートしています。 各企業やサードパーティは、イントラリンクスのプラットフォームを利用して最重要機密文書を安全に共有し、それに基づいて協働すると共に、企業や規制のリスクを軽減するポリシーへのコンプライアンスを維持することが可能です。
イントラリンクスはあらゆる業種で取引やビジネスコラボレーションの促進をサポートしてきた20年間の実績を持ち、その価値は31兆3,000億米ドルを超えています。Fortune 1000企業、投資銀行、法律事務所、プライベートエクイティ会社の99%で、410万人を超えるM&A、法務、経営企画、プライベートエクイティのプロフェッショナルがイントラリンクスを利用しています。
詳細は、www.intralinks.com/jp にアクセスするか、Twitterで@Intralinksをフォローしてください。
■将来性の見通しに関する記述
本プレスリリースに記載される「将来予想に関する記述」は、1995年私募証券訴訟改革法に準拠します。将来予想に関する記述には、計画、目的、期待、意図に関する記述、本プレスリリースに記載される履歴情報に基づかないその他の記述、「期待する」、「予想する」、「意図する」、「計画する」、「信じる」、「探し求める」、「見積もる」、「見通す」またはこれらに類する語句で表される記述が含まれます。当該記述は弊社の現在の信条または期待に基づくものであり、Synchronossがアメリカ証券取引委員会に提出した2016年12月31日付のForm 10-K(年次報告書)およびその他の書類に大文字で「Risk Factors(リスク要因)」と記された項目を含む、さまざまなリスクや不確定要素の影響を本質的に受けます。世界の政治、経済、事業、競争、市場、規制などの要因によって、実際の結果が将来予想に関する記述における予測とは著しく異なる可能性があります。 Synchronossは、新情報、将来のイベントまたはその他の事象の結果、本プレスリリースに記載される将来予想に関する記述を更新する義務を一切負いません。
■商標および著作権について
「Intralinks」およびIntralinksロゴマークは、Intralinks, Inc.の登録商標です。(C) 2017 Intralinks, Inc.
[ご参考資料]
本調査の分析手法について
本調査では、2009年1月1日から2016年12月31日までに公表されたディールのM&A取引データ、株価、インデックス価格情報は、トムソン・ロイター社から取得しました。サンプルに含める基準としては、買収ターゲットが上場企業であること、取引に買収ターゲットの過半数の支配権取得が含まれること、買収ターゲットの株式にリターンが計上された実績が十分にあることを必須としました。 最終的に、2009-2016年のディールサンプル数は総計5,997件に上りました。ディール公表前の40~1日前を対象期間とし、買収ターゲットの累積日次リターンをその予想リターンと比較するイベント分析法を用いて、公表前のディールに情報リークが関与するかどうかを識別しました。買収ターゲットの予想リターンの計算には、市場リターンに対する「通常」取引期間の買収ターゲットのリターンの線形回帰モデルを使用しました。ディール公表前の40~1日前の買収ターゲットの累積日次リターンについて、標準分布の信頼区間95%(つまり、買収ターゲットに観察されたリターンとその予想リターンを比べた場合、データがランダム分布になる確率がわずか5%しかない=単なる偶然に等しい、状態)で、その予想リターンと比べ統計的に有意な差が見られた場合、そのディールにはリークが関与するものと識別しました。別段の記載がない限り、買収ターゲットの地域または国に関するすべての参考情報は、そのターゲットの主たる上場場所を表します。全対象期間を通して、情報がリークしたディールの総数は、全ディール総数5,997件のうち462件でした。
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