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ミトコンドリアのクリステを作る仕組みの一端を解明 -- 京都産業大学

京都産業大学

From: Digital PR Platform

2019-01-31 14:05




山形大学の田村康准教授、米国ジョンズホプキンス大学の瀬崎博美教授、京都産業大学の遠藤斗志也教授らの研究グループは、出芽酵母をモデル生物として用いた遺伝学や生化学的研究手法を駆使して、ミトコンドリアの外膜,内膜間における脂質輸送が、チューブ状のクリステ構造の形成に重要な役割を果たすことを世界で初めて示した。
また、ミトコンドリアのクリステ構造が作れなくなると、ミトコンドリアに特異的に存在するリン脂質、カルジオリピンが著しく減少することも明らかにした。
今後、ミトコンドリアの機能低下や、カルジオリピンの減少によって引き起こされる疾患の治療法開発への応用が期待される。




 ミトコンドリアの内膜は高度に発達しており、クリステと呼ばれる特徴的な構造を取ることが古くから知られていた(図1)。最近の研究によって、クリステには層状とチューブ状の2種類が存在し、層状クリステの形成には、ミトコンドリアの内膜融合が重要な役割を果たすことが報告されていた。しかし、チューブ状クリステ形成がどのような仕組みで形成されるかについては、ほとんどわかっていなかった。

 山形大学の田村康准教授、米国ジョンズホプキンス大学の瀬崎博美教授、京都産業大学の遠藤斗志也教授らの研究グループはこれまでに、ミトコンドリアの外膜、内膜間で脂質を輸送するタンパク質複合体(Ups1-Mdm35、 Ups2-Mdm35と命名)を世界に先駆けて発見し、ミトコンドリア内での脂質輸送が、ミトコンドリアの機能維持に重要であることを明らかにしてきた(図1)。Ups1-Mdm35はミトコンドリア特異的リン脂質であるカルジオリピンの原料となる脂質、ホスファチジン酸(PA)の輸送タンパク質であるため、Ups1を欠損させた細胞では、カルジオリピン合成に阻害が生じ、細胞の増殖が悪化する。一方Ups2-Mdm35はホスファチジルエタノールアミン(PE)の原料であるホスファチジルセリン(PS)の輸送タンパク質であるため、Ups2が欠損した細胞ではPE合成が阻害される。しかし、Mdm35を欠損させてUps1-Mdm35、 Ups2-Mdm35の両方を同時に機能できなくすると、逆にカルジオリピンの量が回復し、出芽酵母細胞の増殖も野生型と同程度まで回復してしまうことがわかっていた。
 これらの結果は、Ups1、 Ups2の両方が機能できない場合では、細胞が未知の脂質輸送経路もしくは脂質合成経路(バックアップ経路と呼ぶ)を活性化させていることを示唆する(図2)。そこで、Ups1、Ups2の両方が機能できない細胞(Mdm35欠損細胞)の増殖に必須となるような遺伝子を探索することで、このバックアップ経路に関与する候補因子の探索を行い、その結果同定されたのが、Mgm1と呼ばれる因子であった。Mgm1はミトコンドリアの内膜の融合に関与することがわかっている因子である。そこで同じくミトコンドリアの外膜融合に関与する因子Fzo1(図3)もMdm35欠損細胞の増殖に重要となるか調べた。Fzo1を欠損させればミトコンドリアの融合自体が起こらなくなるため、外膜融合に続いて起こるMgm1によるミトコンドリアの内膜融合も当然進行しないと考えられる。
 すなわちFzo1とMdm35の二重欠損株は強い増殖阻害を示すと考えられる。しかし予想に反して、Fzo1の欠損によってMdm35欠損株の増殖は大きく変化しなかった。この結果は、単純にミトコンドリア融合が、Mdm35欠損細胞の増殖に重要というわけではないことを示している。

 そこでミトコンドリア内のリン脂質輸送もクリステ構造に寄与するのではないかと仮説を立て、電子顕微鏡解析によりミトコンドリアの内膜構造を観察した。実験を行った結果、確かに、Mdm35を欠損した細胞ではクリステ構造の数が減少していた。さらにMdm35と同時にMgm1を欠損させた細胞ではクリステ構造が全く無い細胞が多く観察された。これらの結果は、ミトコンドリア内でのリン脂質輸送が、クリステ形成に関与すること示している。Mgm1による層状クリステ形成経路と、今回の研究によって明らかになったミトコンドリア内リン脂質輸送が関与するチューブ状クリステ形成経路の両方が阻害された場合、クリステ構造がほとんど形成されなくなったことを示しているのである(図4)。また、クリステ構造がほとんど形成されない状態では、ミトコンドリアの機能に重要なリン脂質であるカルジオリピンの量も激減することがわかった。

 本研究の成果は2019年1月15日付の米国科学誌Cell Reportsにオンライン掲載された。
 今後、今回得られた知見をもとに、未解明のリン脂質輸送や合成(バックアップ)経路の全容解明を目指していく。
 この知見を応用することで、クリステ構造を増加させ、ミトコンドリアの機能を向上させることが可能になるかもしれない。ミトコンドリアの機能低下によって引き起こされる、老化や、神経変性疾患、糖尿病、がんなど様々な疾患の治療法開発への応用が期待される。

むすんで、うみだす。  上賀茂・神山 京都産業大学

※用語解説 
1.ミトコンドリア:真核細胞内に発達した膜構造(細胞小器官(※4))の一つで、主に生命活動に必須のエネルギーを生産するほか、リン脂質、アミノ酸などの合成にも関与する。
2.クリステ:ミトコンドリアの内膜のうち、内側に陥入したチューブ状もしくは層状の膜構造。エネルギーを生産するためのタンパク質群が存在するため、表面積を増加させることでエネルギー生産の効率を上げている。
3.カルジオリピン:ミトコンドリアで合成され、主にミトコンドリア内膜に存在するリン脂質。他のリン脂質とは異なり二量体の構造を持ち、ミトコンドリアのエネルギー生産に必須の役割を持つ。
4.細胞小器官:核、小胞体、ミトコンドリア、液胞、葉緑体などに代表される真核細胞内に発達した膜構造の総称でオルガネラとも呼ばれる。エネルギー生産や、タンパク質合成、タンパク質分解、光合成などを行うオルガネラが存在する。


【関連リンク】
・ミトコンドリアのクリステを作る仕組みの一端を解明~クリステ形成におけるリン脂質輸送の重要性を発見~
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・オルガネラ(細胞小器官)間相互作用の可視化に成功~細胞内構造のこれまでの概念を一新~
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・京都産業大学研究ブランディングサイト「生命とタンパク質の世界」
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▼本件に関する問い合わせ先
京都産業大学 広報部
住所:〒603-8555 京都市北区上賀茂本山
TEL:075-705-1411
FAX:075-705-1987
メール:kouhou-bu@star.kyoto-su.ac.jp


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