指定国立大学法人東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センター(CIES)の遠藤哲郎センター長のグループは、従来技術による磁気トンネル接合(MTJ)における動作温度125℃でのデータ保持時間と比較して、自動車や社会インフラ等のより高い耐環境性が求められるアプリケーションで必要となる150℃の耐環境下においてもデータ保持時間を100万倍に延ばせる1Xnm世代向けの高信頼MTJの開発に成功しました。
磁石の性質を利用した不揮発性メモリである磁気ランダムアクセスメモリ(STT-MRAM)は、低消費電力エレクトロニクスを実現するための基盤技術です。このため、これまで学術界・産業界が挙って研究開発を進め、昨年からメガファブを有する大手ファウンドリー企業がその量産を開始しました。
しかしながら、現行の技術では、一般電子機器仕様の85℃までしか十分なデータ保持時間が得られていなかったために、一般民生機器分野への応用に限られていました。そのため、自動車や社会インフラ等の過酷な環境への応用展開を実現するために、より高い動作温度でも十分なデータ保持時間を確保できるMTJ技術の開発が望まれていました。
今回、研究グループは、上記社会的要請を受けて、データ保持時間を大幅に延ばせる1Xnm世代向けの高信頼MTJの開発に成功しました。具体的には、データ保持時間を延ばすために必要な界面磁気異方性を増加させる4重界面積層技術を適用した新しいMTJを提案し、現行のMTJ技術で125℃の動作温度においてデータを保持できる時間と比較し、自動車や社会インフラで必要とされる150℃での耐環境下においてもデータ保持時間を100万倍に延ばすことを可能としました。これにより、これまで一般民生機器に限られていたSTT-MRAMのアプリケーション分野を自動車や社会インフラ等の過酷な環境における分野にまで拡げることが期待されます。
以上の成果は、2019年6月9日~14日の間、京都で開催される半導体超大規模
集積回路に関する国際会議である「2019 VLSI シンポジウム (リンク ») (2019 Symposia on VLSI Technology and Circuits)」で発表されます。
また、本研究開発の一部は、CIES コンソーシアム産学共同プロジェクト「不揮発性ワーキングメモリを目指した STT-MRAM とその製造技術の研究開発」プログラム、科学技術振興機構 産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(領域統括:遠藤哲郎)の支援の下、行われました。
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