本学生命科学部・理工学研究科・マイクロナノテクノロジー研究センターの山本兼由教授、三宅裕可里大学院生(理工学研究科生命機能学専攻)は、ゲノム上の複数遺伝子の改変を迅速に操作する新しいゲノム編集技術HoSeI(Homologous Sequence Integration)法を開発し、環境に応答した細菌の増殖(適応増殖)がゲノム上の複数遺伝子が関与するエピスタシス現象であることを、大腸菌をモデルに実証しました。開発したHoSeI法は、抗生物質耐性遺伝子など他の生物由来の遺伝子マーカーを利用しない高い安全性、ゲノム上のDNA配列において一塩基レベルでの改変、繰り返し行うことでゲノム上に複数の改変導入の3つの特徴をもちます。HoSeI法は、細菌や古細菌の基礎学術研究だけではなく、合成生物学のような応用研究で活用することも可能です。
生物の親から子へと遺伝する性質情報である遺伝子はDNAの塩基配列としてコードされ、その総体はゲノムとよばれます。大腸菌ゲノムには約5千個の遺伝子が推定され、大腸菌が示す生命現象の多くが複数遺伝子の相互作用によるエピスタシス現象と予想されています。しかし、遺伝子マーカーを用いる既存のゲノム編集技術ではゲノム上に導入する変異数に限界があり、それらの分子遺伝学的解析が困難でした。
本研究では、CRISPR-Cas9システムと相同配列DNA組み換えシステムを用い、他の生物から由来する遺伝子マーカーを導入することなく、大腸菌ゲノム上の目的DNA配列に数塩基変異を導入する新しいゲノム編集技術HoSeI法を開発しました。これを繰り返し行うことにより、ほとんどの細菌ゲノムで共通に存在する大腸菌ゲノム上の14種類の環境応答システム遺伝子を対象として、大腸菌ゲノム上の複数箇所に変異導入させ複数の遺伝子機能を欠失させた株も含めた30以上の変異株を取得しました。さらに一細胞分析から、大腸菌が外環境の変化を感知し、応答し、そして環境に適応することで発揮する「適応増殖」でompR、phoB、phoP遺伝子のうち任意の2つの組み合わせが重要な役割を示すユニークなエピスタシス現象を発見しました。
地球上には生存するにも関わらず培養できない未知の細菌が極めて多く存在します。本成果はこれら難培養細菌の増殖能の理解に役立つと考えています。
【発表雑誌】
■雑誌名: Scientific Reports(オンライン版:2020年2月27日[英国時間])
■論文タイトル: Epistatic Effect of Regulators to the Adaptive Growth of Escherichia coli
■著者: Yukari Miyake & Kaneyoshi Yamamoto
■DOI番号: (リンク »)
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