近畿大学大学院総合理工学研究科 機能光回路研究室(代表:教授 吉田 実)は、株式会社オプトクエストが令和3年(2021年)8月23日より発売する「近赤外スーパーコンティニューム(SC)光源FLA-SC2100」の開発に協力しています。
本機は、光ファイバ通信や光計測で重要な近赤外の波長域※1 を1台でカバーする超広帯域光源です。高度化する光通信用光学部品・光デバイスの製造検査、先端光計測(光断層診断、表面形状測定など)やガス分光分析などで幅広い応用を持ち、主に研究機関や光学部品・機器メーカー、検査機器メーカーへの販売を予定しております。
光を閉じ込めて伝送する機能を持つ光ファイバを利用した、安定性の高いファイバ型パルスレーザ光源(光パルスの時間幅は10億分の1秒程度)と、波長幅の広い光(スーパーコンティニューム※2 光)を発生させる技術を組み合わせ、通常であれば波長幅の狭さが特徴の一つであるレーザ光において、波長幅を効率よく安定に広げる技術を実現し、高い出力を実現しました。操作も簡単で、ボタン一つで安定な広帯域光がコンパクトな筐体から得られます。
本機のキー技術は、近畿大学大学院総合理工学研究科 機能光回路研究室(代表:教授 吉田 実)と株式会社オプトクエスト(代表:東 伸)との共同研究開発で生まれた光ファイバレーザにあります。近畿大学の基礎研究で生まれた新しいレーザ構成に、オプトクエストの光実装技術を加えることにより、卓越した性能を実現することが可能となりました。現在、光通信分野で検査用に使われている白熱電球や蛍光を利用した光源は、何れも輝度(明るさ)が不足することが問題となっていますが、本機から出力される光源は、白熱電球と比較して輝度が100倍以上であり、光ファイバから発生する増幅された蛍光(ASE光)と比較しても25倍以上の広い波長幅を発生します。また、従来技術で作られたスーパーコンティニューム光源と比較して10倍以上の安定な波長特性を得ることに成功するなど、圧倒的なパフォーマンスを実現しております。(共同研究の成果の一部は、電子情報通信学会光ファイバ応用技術研究会の招待講演にて発表を予定しております。※3)
本機に搭載している光ファイバレーザは、SESAMなどの消耗部品を使わない新しいパルス発生機構を搭載しており、内部に可動部分や調整機構がありません。そのため、基本的に安定で壊れにくいという特徴を併せ持ちます。今後、大学・研究所向けの先端研究開発はもちろん、連続動作が求められる産業用途にも応用を拡大していく予定です。
【特徴:高いスペクトル安定性、スペクトル密度を実現】
<従来のランプ光源に匹敵する安定性・スペクトル平坦性+レーザに匹敵する高輝度を達成>
波長1200~2100nmをカバー
<光学素子評価・分光・先端計測を高精度化、作業効率向上>
ターンキー動作
ファイバ出力なのでシステム構築が容易
【応用例】
検査用光源、各種計測・研究用途
これまで利用されてきた白色光源ならびに従来技術のスーパーコンティニューム光源と比較して、高速、高安定かつ高精度な測定が可能
【補足】
※1 近赤外波長域 人間の目に見える光よりも波長が少し長い領域。一般的には、赤色に近い800nm(nm:ナノメートル。10億分の1メートル)から2400nm付近を指す。高速光ファイバ通信で用いられる1260~1625nm(Oバンド~Lバンド)はこの近赤外に含まれる。ちなみに、本光源は、近赤外波長域の大半である1200~2100nm近辺までを1台でカバーする。
※2 スーパーコンティニューム 高強度の光を非線形光学媒質に入れると、媒質中の非線形光学効果によりスペクトルが広帯域化(白色化)する現象。
※3 「光ファイバを利用した光パルスの発生とその応用」 電子情報通信学会光ファイバ応用技術研究会、OFT2021-13、2021年8月26日、オンライン開催
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【関連リンク】
理工学部 電気電子工学科 教授 吉田 実(ヨシダ ミノル)
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総合理工学研究科
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